富士川文庫は富士川游博士が大正6年に寄贈されたものである。富士川博士が資料を蒐集される過程には多くの困難性がともなっていた。辛苦の末蒐集された資料は,「日本医学史」が大成されるための前提条件であった。
先生は図書館に関しても深い関心を持たれ,「図書館雑誌」に論文を掲載されたり図書館の建設にも尽力されている。
文庫の特色は (1) 明治以前の和漢の医書, (2) 江戸中期以降の主として幕末期西洋医学の翻訳書, (3) わが国に関するものとしては平安朝より明治期までの医書である。文庫中のいくつかを挙げると,「続添鴻宝秘要抄」「家伝通外方」「延寿撮要」「頓医書」「啓迪集」「和蘭全躯内外分合図」「蘭学階梯」「重訂解体新書」などがある。
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