画像電子学会誌
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39 巻, 4 号
Special Issue on Visual Computing
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
ビジュアルコンピューティング論文特集号
論文
  • 真塩 海里, 吉田 謙一, 高橋 成雄, 岡田 真人
    2010 年 39 巻 4 号 p. 359-368
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2011/08/25
    ジャーナル フリー
    我々が描く絵は,通常の透視投影とは異なる投影法を用いて描かれている.すなわち,局所的には全体を投影する視点と異なる視点からの透視投影として描かれており,それらが絵画全体として統一感を損なわないように統合された非透視投影となっている.本研究ではこのような絵画に見られるデフォルメの性質に注目し,三次元シーンから自動的に絵画的な非透視投影図の生成を行う.本手法ではまず視点エントロピーを指標として三次元シーンの個々のオブジェクトの最適視点を計算する.更にこれら個々の視点を表すパラメータをそれぞれのオブジェクトの周囲に場として与える.パラメータの場として表されたシーンの中で,オブジェクトが近接する場所ではパラメータが急激に変化する.このようなパラメータ場の急激な変化を滑らかにし,三次元シーンの投影を行うことで,全体としての統一感を損なわない非透視投影図を生成する.
  • 柿本 正憲, 西田 友是, 苗村 健, 原島 博
    2010 年 39 巻 4 号 p. 369-375
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2011/08/25
    ジャーナル フリー
    グレア効果はゲームやエンタテインメントにおけるCG特殊効果技術として広く使われている.本稿では,実世界で起こるグレア現象をより忠実に再現するレンダリングを行い,グレア効果のランプ設計分野への応用を提案する.人間の眼で起こる回折現象をシミュレートし,光源の波長特性(分光分布特性)を反映したグレアのパターンをテンプレート画像として前計算する.レンダリング時には,光源の配光特性のシミュレーションまたは計測結果を元に見る角度に応じたHDR画像を生成しトーンマッピングを施し合成する.車のヘッドランプのような高輝度光源を人が見たときの実際の見え方を模擬し,グレアの影響評価に応用できる良好な結果を得た.
  • 田邊 勝義, 壷内 鉄郎, 内山 俊郎, 米村 俊一, 奥 雅博, 鈴木 章, 中西 徳昌
    2010 年 39 巻 4 号 p. 376-385
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2011/08/25
    ジャーナル フリー
    眼底は人の体を傷つけることなく,血管の状態を唯一無侵襲に観察できる場所である.眼底検査では,45度程度に* 撮影範囲が限定された眼底画像を複数枚用いて,全体を概観できるパノラマ眼底画像が作成される.本稿では,パノラマ眼底画像作成の際に,つながっていない 血管の周辺領域を 微小変形させることで,画像の合成境界において血管連結を行う方法を提案する.本手法と 対応する点同士を重ね合わせて 重畳合成する方法との比較実験を1,177本の血管に対して実施したところ,重畳合成ではつながっていなかった307本(26%)の血管を連結することに成功し,その有効性を確認した.
  • 鈴木 章, 嶌田 聡, 米村 俊一, 安藤 慎吾
    2010 年 39 巻 4 号 p. 386-398
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2011/08/25
    ジャーナル フリー
    看板などの文字列が写った景観画像に認識辞書を走査させて抽出した候補文字集合 を対象として,単語辞書と照合して空間的配置に規則性を持ったキーワードを抽 出して画像に付与し,画像検索を行う技術を提案する.この技術は個人ユーザ が保管する画像データの検索を主な用途と想定する.提案技術には,一般的な景 観中文字認識によるキーワード抽出では困難な,シェーディングを伴う文字,立 体文字,複雑背景上の文字,傾斜文字,などで構成される文字列も扱えるという 特長がある.文字の背景から多くの偽の候補文字が出現するため,対策として候 補文字の変形角度を該当領域の勾配ベクトルの角度分布から推定し,単語辞書と の照合アルゴリズムにおける文字列の配置の制約条件に加えることで誤ったキー ワード抽出の抑制を図った.看板などの画像を対象としてキーワード抽出と検索の 実験を行った結果,想定用途として実用的な性能が得られることと,候補文字の 変形角度推定の利用が誤ったキーワード抽出の抑制に有効であることが示された.
  • Zhuo YANG, Alireza AHRARY, Sei-ichiro KAMATA
    2010 年 39 巻 4 号 p. 399-408
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2011/08/25
    ジャーナル フリー
    Polar Harmonic Transform (PHT) is termed to represent a set of transforms those kernels are basic waves and harmonic in nature. PHTs consist of Polar Complex Exponential Transform (PCET), Polar Cosine Transform (PCT) and Polar Sine Transform (PST). They are proposed to represent invariant image patterns for two dimensional image retrieval and pattern recognition tasks. They are demonstrated to show superiorities comparing with other methods on describing rotation invariant patterns for images. Kernel computation of PHTs is also simple and has no numerical stability issue. However in order to increase the computation speed, fast computation method is needed especially for real world applications like limited computing environments, large image databases and realtime systems. This paper presents Fast Polar Harmonic Transforms (FPHTs) including Fast Polar Complex Exponential Transform (FPCET), Fast Polar Cosine Transform (FPCT) and Fast Polar Sine Transform (FPST) that are deduced based on mathematical properties of trigonometric functions and number theory. The proposed FPHTs are averagely over 10 times faster than PHTs that significantly boost computation process. The experimental results on both synthetic and real data are given to illustrate the effectiveness of the proposed fast transforms.
  • 丸田 英徳, 石井 雅博, 佐藤 誠
    2010 年 39 巻 4 号 p. 409-420
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2011/08/25
    ジャーナル フリー
    画像の誘目性を用いた画像処理は,画像圧縮,画質評価あるいは画像検索やロボットビジョンなどへの応用が期待できる.誘目領域の推定において,もっとも困難な課題は,画像中のどこに何が存在するかの事前知識なしに,いかに推定するかということである.このとき,どのような画像特徴を用いて,誘目性を定義するのかが重要となる.本稿では,カラー自然画像の極値情報に基づく誘目領域の推定手法を提案する.カラー情報を輝度および2種類のカラーチャンネルに分解し,それぞれの尺度空間におけるぼけの変化に対する極値点の安定性を誘目性の基準とし,安定な極値ほど誘目性が高いとする.様々なぼけに対応した極値点の情報を統合し,誘目領域を推定する二次元マップ(地図)を生成する.極値の安定性に基づき算出された誘目領域と,視覚心理実験により取得した視線計測情報に基づく画像の誘目領域を比較し,本提案の有効性を示す.
  • 久保田 彰, 児玉 和也, 羽鳥 好律
    2010 年 39 巻 4 号 p. 421-432
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2011/08/25
    ジャーナル フリー
    多視点画像を用いて自由焦点画像を生成するディジタル・リフォーカス法として合成開口法がある.合成開口法は,多視点画像をシフトさせた後,重み平均することによって容易に自由焦点画像を生成することができるが,多視点画像の視点間隔が大きくなると焦点ぼけ領域にゴースト劣化が生じる.本稿では,視点間隔が要求される間隔よりも大きい場合であっても,シーンに依存した処理を行うことなく,ゴースト劣化を抑制した自由焦点画像を生成する手法を提案する.提案手法では,合成開口法を用いて合焦距離の異なる自由焦点画像を連続的に生成し,得られた三次元画像に対して空間不変フィルタを施すことによってゴースト劣化を修復する.合成画像および実写画像を用いた実験の結果,焦点ぼけが最も大きくなる領域においては,視点間隔が要求される間隔の10倍程度の範囲でゴースト劣化を抑制できることが示された.
  • 山口 祐一郎, 坂東 洋介, 陳 炳宇, 西田 友是
    2010 年 39 巻 4 号 p. 433-441
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2011/08/25
    ジャーナル フリー
    ある画像(ソース画像と呼ぶ)中の物体(ソース物体)を切り出し,別の画像(ターゲット画像)の上に貼りつけるという従来の画像合成手法では,ユーザがソース物体を別の物体(ターゲット物体)の後ろにあるかのように合成しようと思った場合,あらかじめターゲット物体を画像から切り出しておく,ソース物体の一部を消去する,などの前処理が必要である.一般的な画像処理ソフトウェアでは物体領域を画像から抽出する処理などを容易に行うことができるが,ユーザがソース物体を画像中のどこに合成するかを模索する場合,逐一ターゲット物体を分割するという手間がかかる.我々はユーザがソース物体をドラッグし,ターゲット物体の後ろに滑り込ませることのできる手法を提案する.これによってユーザはあらかじめ画像からの物体の抽出処理を行うことなく自由にソース物体を別の物体の前後にドラッグすることが可能になる.
  • 米村 俊一, Chen Li Jen, 大谷 淳, 徳永 幸生, 嶌田 聡
    2010 年 39 巻 4 号 p. 442-450
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2011/08/25
    ジャーナル フリー
    本稿では,互いに遠隔地にいる人同士のインフォーマルコミュニケーションを支援することを目的として,テキストベースのCMC (Computer Mediated Communication)における「おしゃべり」を,黒丸画像によって 触発する“●”メディアを提案する.“●”メディアでは,創造的活動の認知プロセスに関する研究であるジェネプロワモデルに基づいて,話題の発想および話題の転換を触発する基本機能をデザインした.また,“●”メディアのコンセプトに基づくプロトタイプシステムを構築しコミュニケーション実験を行った結果,背景画像として提示した黒丸は,CMC上でのテキストによるおしゃべりの中で被験者の話題作りに関する発想を触発する と共に,触発される話題は話者相互の状況や心境までも含めた知識の共有につながるものも多く,ユーザ同志の相互理解を深める上で効果的なメディアであることが明らかとなった.
論文
  • 井澤 裕司
    2010 年 39 巻 4 号 p. 454-462
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2011/08/25
    ジャーナル フリー
    音声や画像の符号化には離散コサイン変換(DCT)やLOT (Lapped Orthogonal Transform)を代表とする直交変換が用いられている.LOTは,2n次元空間において互いに直交するn個の単位ベクトルを,原点を中心に回転させた幾何学モデルにより表現することができる.直線位相となるLOT基底のすべての状態が表現可能な最小限のパラメータ群と,符号化ゲインの値が最大となるパラメータについては既に報告されているが,本稿では,符号化ゲインの値をほとんど低下させずに,実質的なパラメータ数を更に削減する設計手法を提案する.はじめに,最適解の近傍において,符号化ゲインに対する各回転パラメータの依存性を定量的に評価する.次に,LOT基底の電力が中央から周辺に向かって段階的に拡散するような回転モデルを導入する.これにより,回転角が0に近いパラメータの出現頻度が高くなり,符号化ゲインに対する依存性が低い場合には,これを除去してもその低下を小さく抑えることが可能となる.更に4~10次元の直線位相LOTを実際に設計し,本手法によるパラメータの削減効果を定量的に評価する.
  • 吉田 大海, 田中 直樹
    2010 年 39 巻 4 号 p. 463-472
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2011/08/25
    ジャーナル フリー
    本稿では,情景画像を対象とする文字列抽出に適した大局的2値化方式を提案する.領域抽出を目的として2値化を行う場合,対象領域と背景とをできるだけ分離することが重要となる.しかしながら,情景画像のような画像ではテクスチャやベタ,文字などの多様な領域で構成されているため,従来の大局的2値化方式のように濃淡情報に基づくしきい値決定法では良質な2値化画像を得ることが困難である.本提案方式は,2値化画像の良さを評価することによって2値化しきい値を選択できる方式である.すなわち,ブランケット法を用いることにより2値化画像の領域の密集度・しきい値の変化に対する領域の安定性に関する評価を行っている.また,提案方式を用いた情景画像の2値化実験を行い,目視による2値化画像と比較してほぼ遜色のない2値化画像が得られることを示した.更に,従来の代表的な大局手法である判別分析法との比較でも本方式が文字領域の2値化に関して高性能であることを示している.
  • 山田 敬喜, 古木 一朗, 加瀬 隆明, 中谷 直司, 厚井 裕司
    2010 年 39 巻 4 号 p. 473-480
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2011/08/25
    ジャーナル フリー
    中間調記録可能なカードシステムやディジタルサイネージ(電子広告)などへの適用を考慮し,感度,耐環境性,繰り返し特性に優れた低分子/高分子マトリックス系リライタブル記録媒体について検討した.まず,中間調記録方式としてパルス数制御を検討しサーマルヘッドの熱応答特性を非定常熱伝導の拡張式で近似した.次に,リライタブル記録方式,感熱自己発色方式および感熱破壊方式の電気的中間調記録消去特性(基本濃度特性,ライン周期特性,熱応答特性など)を兼用化可能性も含めて総合的に明らかにした.また,熱制御やユニフォーミティ補正などにより蓄熱やデバイスによらず常に安定した中間調記録消去特性が実現できた.更に,低消費電力化,高画質化および経済化を実現するにはデータと手続きを持ったオブジェクトの集まりとするオブジェクト指向型プリントエンジンアーキテクチャが有効であった.
  • 米村 俊一, 徳永 幸生, 大谷 淳, 筒口 拳, 嶌田 聡, 鈴木 章
    2010 年 39 巻 4 号 p. 481-489
    発行日: 2010/07/25
    公開日: 2011/08/25
    ジャーナル フリー
    本稿では,映像通信を用いる初心者ユーザへの遠隔サポートにおいて,プライバシーの問題を解決し,なおかつ,映像を用いるメリットを損なわない,線画映像によるビジュアルサポートシステムを提案する.このシステムでは,入力された映像をモノクロの線画に変換することによって背景映像によるプライバシー問題を回避する.本方式を実現するプロトタイプシステムを開発し有効性評価を行った結果,線画映像を用いることによって,映像を用いる遠隔サポートで問題となるプライバシーやセキュリティに関するユーザの不安は大きく軽減されることが明らかとなった.更に,原映像を用いた場合と線画映像を用いた場合について,作業完了時間という観点でパフォーマンスを比較した結果,両者間に大きな差はなく,線画映像を用いる遠隔サポートは原映像を用いる場合と比べて大きく劣らない作業パフォーマンスを維持できることが判明した.
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