画像電子学会誌
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40 巻, 5 号
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情報の直感的な理解に寄与する画像電子関連技術論文特集
論文
  • 中川 真志, 向井 信彦, 立福 祥寛, 仁木 清美, 高梨 秀一郎
    2011 年 40 巻 5 号 p. 761-767
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    粒子法を用いて血流を考慮した大動脈の変形および出血のシミュレーションを行った.本手法では非圧縮性の血液を取り扱えるMPS法を用い,血流だけでなく大動脈の血管壁も粒子として統一的に変形計算を行った.更に,連続体の構成方程式を近傍粒子間ではなく2粒子間の関係式として扱うことで,複雑な支配方程式を用いることなく構成方程式と運動方程式による高速解法が可能となった.Core2Quad Q9550 CPU,GeForce9800GT GPUのPCを用いて約15,000の粒子から構成される大動脈と約7,000の粒子から構成される血液のモデルに対して大動脈の変形シミュレーションを行ったところ,1ステップ当たり約200msで実行できた.
  • 森脇 和也, 小俣 昌樹, 嘉糠 大輔, 茅 暁陽, 今宮 淳美
    2011 年 40 巻 5 号 p. 768-777
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,感情を画像生成する技術における新たなコンセプトとして,情動レンダリングシステムを提案する.このシステムは,情動センシング,情動アナリシス,情動適応型イメージシンセシスで構成される.これらによって,画像観察者の生体信号から感情の程度(感情価と覚せい度)を推定して,その程度に合わせてその観察者の感情へ影響を与える画像を生成して表示することを繰り返し処理できるようになる.本稿では,この中の覚せい度へ影響を与える視覚的効果アニメーションを作成し,生体信号へ影響を与えることを示す.また,覚せい度に合わせてこのアニメーションを提示する情動レンダリングシステムを開発し,覚せい度を助長したり抑制したりできることを示す.
  • 佐藤 公則, 篠原 耕成, 鹿嶋 雅之, 渡邊 睦
    2011 年 40 巻 5 号 p. 778-784
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    現在物理的な入室管理法として多く使用されているのが,鍵やパスカードなどである.これらは盗難や紛失といったリスクがあるが,簡易であるため広く用いられている.また近年バイオメトリクス認証も注目を集めている.バイオメトリクス認証は人間の行動的,身体的特徴を用いた個人認証システムである.この手法は偽造しにくいという利点があり,指紋認証や光彩認証などが普及し実際に使用されている.しかし,これらの手法には鍵を差し込む,パスワードを入力する,専用機器に指を触れさせる,目をかざすといった認証のための特別な動作が必要となる.本研究ではドアノブを握るという日常の動作の中に認証システムを組み込み,ユーザに認証動作を意識させないシームレスな個人認証システムの構築を目指す.本稿では,カメラを内蔵したインテリジェントドアノブ型装置の製作と掌紋の取得およびその認証について述べる.
  • 山崎 恭, 大木 哲史, 小松 尚久
    2011 年 40 巻 5 号 p. 785-791
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    従来のテンプレート保護型バイオメトリック認証では,テンプレートに個人の生体情報を登録するため,テンプレートの漏えい時に個人の生体情報が漏えいする可能性がある.そこで,本稿では,テンプレートに個人の生体情報を登録する代わりに,システムを利用するすべてのユーザが共通して利用可能なテンプレート(以下,共通テンプレート)を用意し,共通テンプレートを使用してあらかじめ設定した秘密情報の登録と復元を行い本人を特定する新たなバイオメトリック暗号の一手法を提案する.また,本稿では,生体情報として指紋を使用した場合の適用例について述べるとともに,実際の指紋データを使用したシミュレーション実験により,提案手法の基本性能を評価した結果について示す.提案手法により,共通テンプレートを用いることで,認証システムの実現と運用管理が容易になるとともに,生体情報の漏えいに対する安全性の高いバイオメトリック暗号の実現が期待される.
  • 饗庭 絵里子, 沼田 晃佑, 藤澤 隆史, 長田 典子
    2011 年 40 巻 5 号 p. 792-800
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,ヒトの高次感性を含む主観的画質評価が,画質に関連するどのような物理要因によって影響を受けるのかを明らかにすることである.近年,デジタルカメラの普及が目覚ましく進み,手頃な製品であったとしても,撮影シーンに応じて様々な処理を自動的に施すような製品が広く流通している.しかしながら,どのような物理要因の変化が,画質に対して「美しい」「好き」「よい」と感じるようなヒトの高次感性を含む主観的画質評価に影響を及ぼすのかについては,明らかになっていない.本研究においては,代表的かつ定量的に変化させることが可能な物理要因である「ノイズ」「明度」「彩度」「コントラスト」「シャープネス」を用い,それらがヒトの高次感性を含む主観的画質評価に及ぼす影響について検証した.その結果,本実験で用いられた物理要因のうち「ノイズ」「明度」「コントラスト」が高次感性を含む主観的画質評価を向上させるために重要な物理要因であることが示された.
  • 小濱 剛, 平田 喜寛
    2011 年 40 巻 5 号 p. 801-807
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,オートステレオグラムから視差を持った領域の抽出が可能な両眼立体視の神経系モデルの構築を目的とし,従来の両眼立体視モデルに対して,輻輳(ふくそう)・開散眼球運動を想定した融合点推定過程を導入した.オートステレオグラムにおいては,周期的な画像の配置が視差検出の手がかりとなることから,提案モデルでは,輻輳・開散眼球運動によって左右の網膜に投影される視覚パターンを左右に移動させ,このときの視差エネルギーが最大となる位置を最適な輻輳角として決定した.シミュレーションの結果,左右眼に同一のオートステレオグラムを入力した場合でも,特定の視差を持った領域の抽出が可能であることが示され,視差抽出過程において注視点決定プロセスが関与する可能性が示唆された.
  • 楠岡 真理子, 七夕 高也, 古谷 雅理, 斎藤 隆文
    2011 年 40 巻 5 号 p. 808-814
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    本稿では,植物の生長過程を固定カメラで撮影し得られた時系列画像から,植物の生長量を抽出する方法を提案する.時系列画像から時空間投影画像を作成することで生長量情報を生長先端曲線として視覚化し,動的計画法を用いて曲線を当てはめ,生長量を数値化する.曲線当てはめは始点・終点のみを手動で指定する半自動処理である.ノイズにより正確に曲線が当てはめられなかった場合は,生長先端曲線上の中間点の指定や,時系列画像上の特定のノイズの除去などを行うことで補正する.また,1本の試験管に2本の苗を植えた場合の画像について,双方の生長量を適切に抽出する手法を提案する.
  • 田中 賢一, 清水 裕太
    2011 年 40 巻 5 号 p. 815-822
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    キノフォームの再生像改善に関する報告は数多く見られるが,誤差拡散法に関するものは非常に少なく,拡散係数について議論した報告はなかった.本稿では,キノフォームに対する誤差拡散法について,拡散係数をGAによって最適化した.その結果,GAによって得られた拡散係数は,従来の誤差拡散法における拡散係数と比較して,再生像の画質という観点から優れていることが明らかとなった.
  • 椎名 雄飛, 池永 剛
    2011 年 40 巻 5 号 p. 823-832
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    パーティクルフィルタは多数の粒子を用いた予測に基づく手法であり,ロバストな物体追跡アルゴリズムとして様々な応用がなされている.しかし,一つの状態遷移モデルを用いて粒子の次状態を決めているため,不規則に運動する物体に対しては追跡精度が損なわれるという問題があった.そこで本稿では,不規則運動物体の追跡を対象として,二つの状態遷移モデルを用いた2重モデルに基づくパーティクルフィルタを提案する.本提案では,性質の異なる二つの状態遷移モデルを同時に用いることにより,物体の急な方向転換などに対して安定した追跡を可能にしている.本アルゴリズムをソフトウェア実装し,ボールが壁や床でバウンドするような不規則運動が発生するシーンに適用した結果,従来手法と比較して高精度な追跡が可能なことを確認した.
  • 荒木 良介, 池永 剛
    2011 年 40 巻 5 号 p. 833-841
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    タッチパッドなどを用い,ジェスチャによる直観的な操作が可能なマンマシンインタフェースが普及しつつある.今後,より幅広い情報処理機器や利用シーンに展開していくためには,機器に搭載されるカメラからの映像入力を用いたジェスチャ認識の重要性が増していくと考えられる.しかし従来の研究は,複数のカメラや距離センサなどのデバイスを併用した複雑な構成のものが多く,アルゴリズムも単色背景を前提としたものや,多くの演算量を必要とするものなど,実用性に問題があった.本稿は,単眼カメラから撮影された入力に対し,複雑な背景下で両手領域の追跡を高精度かつ実時間で処理可能な物体追跡アルゴリズムを提案する.オプティカルフローの一種であるKLT Trackerをベースとして,差分・色情報の利用,特徴点集合の決定などを加えることで,演算量や動きベクトルの誤検出を削減し,高精度化と低演算化の両立を可能にしている.提案アルゴリズムをPC上にソフトウェア実装し,両手の移動・学習データでは対応できない形状変化を行うなどのテスト動画を用いて評価した結果,従来例の問題点を解消した両手領域の追跡が可能なことを実証した.また,処理可能なフレーム数は1秒間に13~16フレームで,標準的な両手動作を実時間で追跡・認識可能なことを確認した.
  • 福元 伸也, Anis Ur REHMAN, 森東 淳, 大塚 作一, 三部 靖夫, 田中 宏征, 武田 光平, 野村 雄司
    2011 年 40 巻 5 号 p. 842-850
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    広告の意匠性と2次元デジタルコード(以下,コードと略す)を用いた情報伝達の容易性とを両立させることを目的として,コード撮影のために行う利用者の接近行動を距離センサにより検出することにより,コードを適応的に拡大表示する手法を提案する.まず,基礎実験として,実験1では,コードの拡大率とズーム時間の変化に対する利用者の印象変化を調査した.その結果,利用者が移動中の状態から一辺20cm程度の取得容易なコードサイズにズームアップした状態で停止する場合を想定すると,ズーム時間を1秒前後に設定すればよいことが明らかとなった.次に,実験2では,距離センサによるフィードバックを行ったプロトタイプを使用し,QRコード利用の未経験者4名を含む被験者14名による評価実験を行った.従来手法と提案手法との比較を行った結果,(1) 提案手法では平均情報取得時間が約1.8秒短縮される,(2) 提案手法では約1.5倍遠い位置での取得が可能となる,(3) 全被験者の86%(QRコード利用の経験者では100%)が提案手法を好む,という結果が得られ,本手法の有効性が確認された.
資料論文
  • 宮田 公佳
    2011 年 40 巻 5 号 p. 851-859
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    博物館展示では,様々な制約の下,有形無形の文化財を可視化し歴史あるいは文化の表象を行っている.近年の情報化社会においては,情報についても可視化対象となっており,その手段として,画像機器および情報機器等を用いた展示ガイドシステムを活用することが期待されている.本研究では,Augmented Reality技術とプロジェクタ・カメラシステムを用いた展示ガイドシステムについて検討し,古銭資料を対象としたプロトタイプの試作を通して,提案システムの有用性,今後の検討課題について議論する.博物館展示では,展示スペースや照明条件などの物理的な制約だけでなく,資料に内包される情報を伝達する難しさ,資料間あるいは資料背景の叙述方法,展示意図と利用者のニーズとの間の多様性,更には詳細情報の提示と情報過多の調和等の検討課題がある.本プロトタイプを活用することで,利用者に対するメリットを提供するための方向性について考察する.
論文
  • 亀田 昌志, 千葉 繁生
    2011 年 40 巻 5 号 p. 862-873
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    画像のベクトル量子化では,コードブックのサイズが大きくなると,符号量が増大してしまうことに加え,学習型のコードブックを用いる場合には,そこに冗長なコードベクトルを含むという問題がある.これらを解決する手法として,画像をエッジ領域とそれ以外の領域に分割し,各領域に対して用意した少数の人工的な形状パターン群に基づくベクトル量子化手法を提案する.エッジを除く領域は定常性を満足していることから,単調な輝度変化を有する基本的な形状パターン群である画像構成基本要素と呼ばれるコードブックを定義することで十分な精度での近似が可能である.本稿では,画像構成基本要素を用いたベクトル量子化を行うにあたって,符号化パラメータに対する最適な量子化ビット配分を明らかにする.更に,符号化パラメータの予測を行うことで,画質を劣化せず符号量を削減する手法を提案する.少数のコードベクトルで構成可能な提案手法の符号化性能は,従来のベクトル量子化方式と比較して,低ビットレートにおいて改善されることが明らかになった.
  • 小林 剛, 佐藤 誠
    2011 年 40 巻 5 号 p. 874-881
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    階層化watershed解析を用いた高速なオプティカルフロー推定法を提案する.Watershed法により領域分割を行い,領域ごとの疎なオプティカルフローからの補間を用いることで,画素ごとの密なオプティカルフロー推定の高速化を目指す.領域を空間的,階層的,時間的に関連づけるwatershed領域グラフを定義し,このグラフから疎なオプティカルフローの推定を行う.提案手法ではwatershed法による領域の持つ極点とそれに関連づけられた画素の集合という性質に注目するとともに,hill,daleという双対となる領域分割を用いる.定量的な評価実験により,高速に密なオプティカルフローの推定が可能であることを示す.
  • 粟野 直之, 西尾 孝治, 小堀 研一
    2011 年 40 巻 5 号 p. 882-890
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    CGやCADにおいて三次元形状を作成する際,従来はモデリングソフトウェアを用いていたが,近年では実物を計測するだけで三次元形状を作成することができる三次元スキャナが広く用いられている.しかし,三次元スキャナから得られるデータは点で形状を構成する点群データであり,計測対象の表面材質や計測漏れなどによって欠損を含むことが多い.そこで,不完全な箇所を検出することで再計測や補間を行えると考えられるため,計測した点群データの欠損を検出する手法を提案する.提案手法では,点群データを多視点から見た二次元画像上でエッジ検出を行い,二次元画像上での欠損を検出する.そして,その結果を点群データに反映させることで欠損を検出する.また,グラフィックボードを用いて実装することで高速に検出できるようにする.
  • 鈴木 章, 米村 俊一, 嶌田 聡, 森本 正志
    2011 年 40 巻 5 号 p. 891-899
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    遺伝的アルゴリズム(GA)を用いた特徴選択において,高い識別率と低い次元数の両方を実現させる方法について提案する.本手法では,最初に識別率を適応度とするGAによる探索を行い,その探索結果に基づいて次に識別率を保ったまま次元数の削減量を適応度とするGAによる探索を行う.後段の探索を高速化するために,次元数の削減量が理論的に最大となる,すべての特徴が選択されない状態を表す特別な染色体をGAの情報源として導入した.5種類の類似手書き漢字カテゴリー対を用いた識別実験において,提案法は全特徴を使用した場合に比べて識別率を向上させつつ特徴の次元数をオリジナルの6.2%に削減するという結果を得た.
  • 高野 邦彦, 八木 一夫, 若林 良二, 小野寺 聡之, 仲田 佳広, 高木 亮, 法橋 誠, 高橋 義典, 浅井 紀久夫, 武藤 憲司, ...
    2011 年 40 巻 5 号 p. 900-908
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    大規模災害が発生すると,地上の通信ネットワークの破綻,多数の死傷者の発生,電気・ガス・水道などのインフラ麻痺が起きることが指摘されている.このような場合は,地上の状態に左右されない衛星通信網を用いた遠隔医療支援システムの構築が必要になる.医療救援措置に関して,負傷者の外観情報を立体画像で伝送できれば,トリアージの効率化に大きく貢献できると考えられる.そこで,本稿では遠隔医療への立体画像適用の可能性を調べるため,ETS-VIIIを用いて音声を付加したステレオ動画像のストリーミング伝送実験を行った.その結果,本システムの適用限界と伝送帯域との関係が得られた.
  • Kaori KATAOKA, Shingo ANDO, Akira SUZUKI, Hideki KOIKE, Masashi MORIMO ...
    2011 年 40 巻 5 号 p. 909-915
    発行日: 2011/09/25
    公開日: 2012/03/01
    ジャーナル フリー
    Face hallucination produces high-resolution facial images from low-resolution inputs. In this paper, we propose a contour-based face hallucination method. Since our goal is face recognition rather than visual effects, the contour information of facial-parts (such as eyes) is important. We focus on the eye parts and reconstruct eye contours instead of dividing them into small blocks. We obtain the eye contours by using the Active Appearance Model (AAM), and transform training images based on contours. We confirm that the proposed method significantly enhances face recognition performance.
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