医療と社会
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10 巻 , 4 号
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  • 鴇田 忠彦
    2001 年 10 巻 4 号 p. 1-11
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    現在の日本は、少子高齢社会に急速に向かっているが,持続可能な医療制度の改革は,年金と同様に遅々として進まない。小論では,日本の医療改革を患者・国民の視点から,4段階で考察する。まず医療改革はなぜ急務であるのかを,医療費の将来予測を通じて指摘する。ついでなぜ改革が進行しないのかを,過剰なまでの規制の存在と利益団体の行動に求める。改革の大まかな方向としては,情報技術を医療の分野に導入して,情報の非対称性を補正し,医療の世界でも消費者主権を回復させる。同時に規制緩和によって,競争的な資源配分を実現させる。具体的な改革案では,カルテのデジタル化などにより,保険者が十分に医療機関の情報を所有してその機能を拡充させ,医療機関との交渉力によって医療の質の向上と効率化を実現させる。懸案の高齢者医療では,世代内の相互扶助の仕組みの導入とともに,ターミナルケアの合意形成を急ぐことが提案される。
  • 尾形 裕也
    2001 年 10 巻 4 号 p. 13-24
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    医療政策の追求すべき基本的な政策目標を,OECD(1999)の提示する4つの指標(Equity,Efficiency,EffectivenessおよびEmpowerment)に基づいて考えてみると,わが国の医療については,特に負担の公平性,ミクロ経済的な効率性,エンパワーメントといった面において問題があると考えられる。わが国の医療の現状は,いわば「口を出さない代わりに,カネも出したくない」という状況に陥っているようにみえる。
    そうした中で,近年,医療保険における「保険者機能」を強化することを通じて,こうした閉塞状況にあるわが国の医療を改革していこうという考え方が各方面から出され,論議されるようになってきている。しかし,こうした「保険者機能」強化論の多くは,日本的な規制緩和論に傾斜しすぎているきらいがあり,むしろ欧州諸国の90年代の医療改革における「擬似的市場メカニズム」論あるいは「命令・管理モデル」から「契約モデル」への転換という,より広い観点からの位置づけをしていく必要がある。そういった意味からは,「保険者機能」論から「保険者当事者」論へと視点を転換していく必要があろう。
    本稿においては,こうした「保険者当事者」論に立って,(1)専門的情報機関としての保険者,および(2)医療投資支援機関としての保険者という2つの具体的改革のアイディアを提示している。
  • 高木 安雄
    2001 年 10 巻 4 号 p. 25-40
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    高齢者医療制度の創設を患者の立場から考えるひとつの論点として,高齢者のターミナルケアについてこれまでの取り組みと医療費に及ぼす影響などを考察した。日本で報990年代以降,終末期ケアでのホスピスなどが導入されつつあるが,国民の間に定着したものとはいいがたく,緩和ケア=ホスピスを選択する一般国民の意識は医師・看護職より低い。そして,診療報酬による「緩和ケア病棟入院料」「在宅末期総合診療料」などの経済的誘導も,がん患者や在宅高齢者の増加に対して大きな影響をもつものとはなっていないことも指摘した。
    また,医療費に占める終末期医療の比重は,それほど大きなものではないことを強調して,高齢者のQOLの向上とそのための適正な資源配分が重要であることを明らかにしている。そして,今後の課題について,(1)高齢者のターミナルケアは,現実の混迷と高齢者の意思がなかなか確認できないこともあって,極端な議論に走りやすく慎重な議論が必要である。(2)ターミナルケアよりも社会的入院を含んだ高齢者の長期療養による医療費増加が問題なのであり,長期療養における高齢者ケアのあり方,そして資源配分=診療報酬支払い方法の見直しが優先されるべきであり,夕一ミナルケアの議論はその次になされるべき課題である。(3)高齢者医療制度は長い人生を生きた高齢者の多様な健康感・死生観にどう答えていくのかという課題を抱えており,画一的・平等というこれまでの制度構築の発想では対応できず,困難な課題解決を迫られている。
  • 黒川 清
    2001 年 10 巻 4 号 p. 41-50
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    21世紀を迎え「日本」のあり方は大きな変換を求められている。それはなぜか。特に国際的に共通の価値をつくり出す分野である高等教育,医学教育と研修,医療,研究,金融,企業等では「国際的」標準での内容と実力がない限り,世界の主流から取り残されていくであろう。交通と情報の国際化の時代にあって,世界の人々がそれらの国の医療,研究,高等教育等の分野での世界標準を知るようになれば当然それらを求めるようになる。従来の「日本」を支えたシステムはこれからの国際時代の要請にあうのか。この10年の日本をかこむ状況は,「お上たのみ」「護送船団」「終身雇用」「年功序列」の限界を示し,「Japan Inc」がもはや機能しないことを示している。このような時にあって,医学教育も医師の研修も同じ問題を抱えている。その背景には日本に特徴的で根本的な問題があるのだが,残念ながら,多くの日本の「リーダー」にはそれが理解できない。その理由はなにか。日本を囲むアジアの状況と近代日本の歴史の背景を考察しながら,21世紀に日本がめざす医学教育と医師研修のあり方を探る。
  • 飯田 修平
    2001 年 10 巻 4 号 p. 51-65
    発行日: 2001/03/31
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    医療改革といいながら,医療経済すなわち医療保険財政優先の議論に終始している.医療制度すなわち良質の医療を提供するための,ありたい姿の議論が必要である、改革とは根本的に仕組みや考え方を変えることである。自分の意識改革であり,価値観の転換である。
    医療改革を考えるに当たり,医療の何に問題があるのか,何に関して,どの立場で議論しているのかを明らかにしなければならない。病院管理者の立場で,医療機関あるいは医療関係団体の医療改革への対応を,特に,情報技術と医療の質向上の切り口で報告する。
    望ましい医療のあり方は,(1)患者の要望に適合する(2)医療従事者の生き甲斐に合致する(3) 関係者が安心でき,信頼できることである。病院のあり方は,(1)組織として機能させる(2)患者・家族・地域・職員等すべての関係者との信頼関係に基づく(3)社会的存在であると認識することである。
    組織の有機的連携を図るには,情報技術の活用が必要である。情報技術活用の意義は,情報の共有と標準化である。個々の医療機関の努力だけでできるものではない。病院団体が,共通の目的・方法・基準で,データを収集する事が必要である。
    医療経営においては,データ(事実)に基づいた経営,現実をふまえた経営が必要である。これをEvidence Based Management(EBM)と呼ぶことを提唱したい。
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