情報通信技術(IT)の進歩と普及により,医療保健福祉領域においてさまざまなITの応用が試みられている。ITを利用した患者。一般大衆・医療提供者間のコミュニケーションはインタラクティブ・ヘルスコミュニケーション(IHC)と呼ばれているが,本研究は,わが国のIHCの現状を把握し,その適切な普及に寄与することを目的として,(1)東京都内の診療所開業医500名を対象にしたIHCに関する意識調査, (2) 126件の医療機関のホームページ(HP) における情報提供の実態調査を行った。
開業医のIHCに関する意識調査では,有効回答の126名の中で,大半がインターネットや電子メールを利用しており,26名がHP開設の経験があった。医療機関のHPに記載すべき内容として,診療科目などの一般的情報に加えて,検査案内や医師の情報などについての必要性を高く感じていた。医療機関のHP開設に伴う利点として,「患者の施設や医師選択の助け」や「施設間の連携」を挙げるものが多かった。一方,医療機関のHP開設に伴う不利益として,「誤った情報や偏った情報の流布」,「商品等の販売に利用される」,「ネット上の嫌がらせ」,「ネット上の健康相談等にかかる時間や人手」などが挙げられた。
医療機関のHPにおける情報提供の実態調査では,HPを開設している診療科としては,美容外科が最も多く,内科,皮膚科,産婦人科と続いていた。所在地や診療科などの基本的情報はほとんどのHPが掲載していた。その他,さまざまな健康情報も発信しており,メールでの健康相談やメールを使った診療予約などを行っているHPもみられた。
インターネットなどの新しいITを用いた情報提供や双方向性のコミュニケーションは,医療保健福祉領域で多くの可能性を持っている。今後,より適切なIHCの促進のため,IHCに関する学術的な取り組み,とくにその有効性に対する評価を行うことが望ましいと考える。
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