医療と社会
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12 巻 , 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 鈴木 貞彦
    2002 年 12 巻 2 号 p. 1-19
    発行日: 2002/10/21
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    このペーパーは,日本の医薬品卸売会社のうち,株式を公開している会社13社について株主資本価値を検討したものである。株主資本価値としては,株式市場で成立している株式市場価値とエコノミック・プロフィットを基にして計算した株主資本価値とを用いている。分析の対象とした会社の過半数は,事業価値をほとんど創造していないか,あるいは事業価値を喪失している状況にある。その一方で,株主資本価値の過半数が金融資産の価値によって支えられていると解釈できる状況にある。これらのことは,日本の医薬品卸売会社が株主資本価値を創造するための柔軟な経営戦略を構築することの緊急性を示唆している。
  • 吉森 賢
    2002 年 12 巻 2 号 p. 21-48
    発行日: 2002/10/21
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本稿はまず第一次世界大戦以前のドイツ医薬品産業の劇的な発展と長期間にわたり世界の模範となった先駆的医療保障および社会保障制度を概観する。ドイツ医薬品産業の革新能力の中心的要因は化学の学問水準を高めた工科大学の創設と,染料の派生物質である薬剤開発において見られた企業と大学間の密接な研究協力関係にあった。
    第一次世界大戦後,ドイツ製薬産業は相対的に衰退する。その原因は大戦によりドイツ製薬企業の特許,バイエルのアスピリンなどの世界的商標やメルクなどの社名がすべての在米資産と共にアメリカ政府により没収されたからである。
    次いで産業構造,市場規模および構造,貿易,雇用,世界における地位,企業集中度,競争状況,価格構成,特許,医療機関などについて概観する。また最近における主要な医療制度改革について紹介する。
    最後にドイツの代表的製薬企業5社,アベンティス・ファーマ,バイエル,シェーリング,ベーリンガー・インゲルハイムを取り上げ,それぞれの概況,歴史,市場地位,所有構造,戦略および研究開発について比較考察した。結論として以上が日本の製薬産業へ与える示唆を提示した。
  • 姉川 知史
    2002 年 12 巻 2 号 p. 49-78
    発行日: 2002/10/21
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本稿では戦後の日本の医薬品産業について,その歴史,公共政策,産業の3者の関係について事例分析の手法によって概観した。日本における医薬品産業は1990年代の医薬品支出額,医薬品生産額,研究開発投資額がいずれも停滞し,市場,技術,規制の変化への対応が困難になっている。その原因の1つは,日本の公共政策の失敗であり,1970年代までに医薬品産業を保護育成することに成功した後に,より研究開発志向型の公共政策を導入することが遅れたことである。企業も研究指向の医薬品企業への転換が遅れた。現在,政府が強調している技術政策の効果は限定的であり,また企業のM&Aの可能性も小さい。医薬品産業が国際競争力を持つには薬価政策を見直して,画期的な医薬品に対する薬価の上昇を認め,さらに医薬品支出額の増加も許容するような大きな政策変更が必要になる。このとき,国民は医療費増大を認めるか,それをどのように負担するかという政治的選択を行う必要がある。
  • 尾形 裕也
    2002 年 12 巻 2 号 p. 79-106
    発行日: 2002/10/21
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    わが国の近年の医療制度改革の動向,さらには今後の方向性を考察するに当たって,OECD諸国の経験は参考になる点が多い。福祉国家の類型論としては,Esping-Andersenのそれが有名であるが,医療制度に関しては必ずしも説得的とは思われない。本稿においては,イギリスとアメリカを両極とする座標軸上に各国を位置付ける試みを行っている。各国の90年代以降の医療制度改革の方向としては,「擬似的市場メカニズム」導入論が主流であるが,これとは異なる競争抑制的な方向性をとっている国もある。前者の代表的な事例としては,オランダを,また,後者の事例としてはカナダをあげることができる。
    カナダについては,2002年2月に公表された検討委員会の中間報告が参考になる。カナダの医療制度に関する現行法上の5原則は,わが国とおおむね共通する考え方であると思われる。カナダ側にとっては,わが国の介護保険が参考になるのに対し,わが国にとっては,特に市町村国保制度のあり方を考えるに当たって,カナダの州単位の地域医療保険制度が参考になるものと考えられる。オランダについては,いわゆるデッカー改革の頓挫の後,2001年7月に政府から議会に提出された政策ペーパーが参考になる。
    オランダは,社会保険方式をとっている国の中では,最も民間保険のウェイトが高い国であるが,「擬似的市場メカニズム」のさらなる機能強化とともに,必須医療サービスに限定した国民皆保険体制の達成を目指そうとしていることが注目される。
  • 辻 正次, 鈴木 亘, 田岡 文夫, 手嶋 正章
    2002 年 12 巻 2 号 p. 107-119
    発行日: 2002/10/21
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本稿は,環境経済学等で最近,急速な発展を遂げているCVM(Contingent Valuation Method:仮想市場法)を,医療技術の経済評価に応用し,その手法の妥当性・適用可能性を考察した。具体的には,環境政策における先行研究でしばしば観察されているWTP(Willingness to pay)とWTA(Willingness to accept)の乖離に着目し,まず,乖離をMorrison(1997,1998),塚原・竹内( 2 0 0 0 ) が用いた手法を用いて所得効果と賦存効果に分離した。た手法により,賦存効果をさらに様々な要因に分解して詳細な検討を行った。その結果,(1)これまで賦存効果とみなされていた部分には,想定的バイアスや補助金バイアスなどが影響しており,賦存効果自体はそれほど大きくない,(2)WTPとWTAとも同程度の大きさのバイアスが存在している,(3)そのバイアスを取り除けば,WTPとWTAの乖離額は極めて小さくなることなどが示された。
    したがって,CVMを用いて医療技術の評価を行う際には,様々なバイアスの存在を前提に慎重な評価を行うべきであり,現段階では,WTPとWTAの両者を計測してそのレンジをみるのが安全であると思われる。また,この手法を医療経済分野に広範に実用化するには,「バイアスの除去方法の開発」が避けられない課題であろう。その際,本稿で考案した手法も一助になる可能性がある。
  • 細谷 圭, 林 行成, 今野 広紀, 鴇田 忠彦
    2002 年 12 巻 2 号 p. 121-137
    発行日: 2002/10/21
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本稿は,国民健康保険加入者の診療報酬明細書(レセプト)に基づく個票データを使用することにより,北海道・千葉・福岡の3道県における医療費の地域間格差および医療機関間格差の実態を要因分解的に明らかにする。レセプトデータを用いた分析に対して,しばしば指摘される重要な問題点は,レセプトに記載される疾病名と実際罹患している疾病との間に隔たりが存在するということである。本稿はこの点に鑑みて,レセプト記載疾病名と実際の疾病名との一致性を可能な限りみたすと考えられる腎不全患者のデータを使用して,地域間,医療機関間での医療費配分の実態を分析する。本稿での主要な結論は以下の通りである。(1)全データでの分析において,入院・外来を問わず地域間での医療費格差が確認された。特に北海道の高医療費特性と千葉の低医療費特性が明瞭に示された。また,福岡・外来で相対的に過剰とも思われる低医療費診療供給の存在が明らかになった。(2)レセプト上位医療機関に限定した分析でも,医療費格差の存在は顕著で,特に千葉では低医療費特性と同時に医療機関間の診療上の均一性を確認した。したがって,これらの間に何らかの因果関係が考えられよう。(3)慢性腎不全における透析患者の分析から,診療方法の標準化は医療費の平準化に有効性を発揮することが明らかになった。このことは,DRGs/PPSの有効性に関して1つの積極的根拠を与えるものである。
  • 真野 俊樹, 水野 智, 山内 一信
    2002 年 12 巻 2 号 p. 139-148
    発行日: 2002/10/21
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    近年,医療改革については,経済財政諮問会議,財務省,厚生労働省,日本医師会,健康保険組合連合会など多くのプレーヤーがそれぞれの立場から意見を主張しているが,まとまった方向性はでていない。しかしながら,消費者である患者に適切な医療情報が多く伝わることに異を唱える人はほとんどいない。今回,われわれは病院の医療情報開示に対する状況および病院の経営主体によって医療情報の開示に差があるかどうかを調査した。
    日本病院会会員病院(2,588施設)を対象に当該病院の事務長に回答を依頼する無記名式郵送質問紙調査を行った。有効回答は743通で回収率は27.8%であった。内訳は,国立病院:54,都道府県市町村立:173,日赤:23,済生会:24,厚生連:22,社会保険団体:23,公益法人:47,医療法人:238,学校法人:35,会社立:14,個人:27であった。
    「診療情報管理体制」は個人,医療法人立が積極性に乏しい。日本赤十字社が積極的であった。「診療情報提供」「セカンドオピニオン」については個人が積極的であった。
    「患者苦情収集」では投書箱はほとんどの病院に設置され,投書箱以外の苦情の収集については,学校法人,都道府県・市町村立,日赤があまり積極的でなかった。支払い明細の発行については,社会保険団体立があまり積極的ではなかった。患者からのレセプト開示では国立病院,日赤,済生会,公益法人,会社立病院が100%要求にこたえていたが,個人ではやや低かった。また会社立病院であるから,特別に何かをおこなっているということはなかった。
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