複数傷病の記載されることの多いレセプトの日数と医療費の合計に占める傷病別日数と傷病別医療費を推計する Proportional Distribution Method (比例配分法。岡本が1996年に発表した時は Proportional Disease Magnitude,傷病マグニチュード按分法と呼んだがこの名称の方がわかりやすいため改称した)法について妥当性と精度の改善を試み,モンテカルロ法によって検証した。
PDM 法とは,傷病分類ごとに共通の重み(マグニチュード)を想定し,各レセプトの日数と点数を重みに比例して配分し,最終的に傷病ごとの日数と点数を合計し傷病別医療費を推計する。そのため重み推計法が重要となるが,今回は従来からある平均値補正法に加えて新しい Excel® ソルバーを用いた最適化法の2つの重み推計法を試みた。平均値補正法では,傷病数による補正法をより一般化する補正式を考案し導入した。なお日数の分析は点数とは異なった原理が必要なので別稿にゆずる。
コンピューターで生成したシミュレーションデータによる検証結果は,傷病別医療費の推計値と正解との回帰直線の傾きで妥当性を,決定係数で精度をそれぞれ評価した。その結果,最適化法による重みを用いた場合はほぼ完全な推計となり,平均値補正法もそれに近い良好な推計値が得られた。また重み推計値の妥当性と精度は低くてもその重みをPDM法にかけると最終的な傷病別医療費の推計値の妥当性と精度は向上し,PDM法原理の有する頑健な傾向を示唆した。
最適化法は優れているが制約も多く,レセプトが電子化され迅速かつ大量の傷病分析が要求されると対応できない。平均値補正法は最適化法よりやや劣るとはいえ十分かつ許容できる妥当性と精度を有している。
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