薬価制度の目的は,患者が高い経済的な負担を負うことなく良質の医薬品の提供を受けることを実現することである。その制度の改革に求められる原則として,以下の5点が挙げられる。(1) 革新的な医薬品の研究開発を促し,患者のQOL向上に寄与するとともに,新産業育成,雇用創出を促進する。(2) 革新的医薬品の薬価面での評価向上とともに,不必要な患者負担を抑制し,医療保険財政健全化を図る。(3) 公的保険制度を維持しつつ,市場メカニズムが機能する仕組みを構築し,適正な価格形成を促す。(4) EBMに基づき,医薬品の特性にあった薬価算定方式を適用する。(5) 市場実勢価格を反映し,特例・裁量を最小限にすることで,わかりやすい制度を構築する。
これらの原則を踏まえ,重点的な具体案として,(1) 革新的医薬品に限定した上限付自由薬価制度導入,(2) 良質で安価なジェネリック医薬品が存在する先発品に対する保険支払い額の当該ジェネリック医薬品レベルまでの引き下げ,を提案する。
また,関連する問題を薬価制度のみで解決しようとすると,特例・裁量の余地拡大で,薬価制度そのものがわかりにくくなるため,補完する他の制度改革も進めていかなければならない。また,急激な変化により医療機関,製薬企業ならびに医療保険財政に短期的な混乱を与えないため,長期的な視野で計画的・段階的に改革を進めていくことが必要である。また,よりテクニカルな問題として,医療保険財政のバランス,外国価格調整,新規ジェネリック医薬品の薬価差益,フラット・プライス制,医師主導治験と薬価,再算定のあり方についても言及する。
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