医療と社会
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20 巻 , 1 号
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特集論文
  • 小林 美亜, 池田 俊也, 藤森 研司
    2010 年 20 巻 1 号 p. 5-22
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/28
    ジャーナル フリー
    良質な医療サービスの提供に向け,医療の質評価の仕組みを構築することが必要になる。一般的に,医療の質保証・改善の取り組みにおいては,診療・ケアの提供状況であるプロセスとその効果であるアウトカムに係る臨床指標を用いた評価が行われる。本稿では,入院診療において臨床指標を多く活用している米国の実態を踏まえ,我が国の臨床指標におけるDPCデータの活用可能性について検討を行った。
    米国では,政府機関,様々な非営利組織や民間保険会社が臨床指標による医療の質評価を行い,その結果を医療機関や医療者にフィードバックしている。そのうち,一般公開が行われているものある。さらに,医療の質評価を報酬に結びつける制度も導入されている。しかし,これらが質保証・向上に貢献する一方で,一般公開や報酬の影響により,好成績をあげるために患者選別や不適切な診療行為等を招くことも指摘されている。
    我が国では,DPCデータの導入によって,標準的な様式で診療情報が把握できるようになった。しかし,現在のDPCデータでは,臨床指標の算出にあたり,適正な評価に向けて必要となる診療情報を十分に得ることができない限界がある。したがって,DPCデータから,課題や改善すべき領域をトリガーできる指標を抽出し,他のデータソースと有効に連動することで,臨床指標を抽出し,その結果に基づき,医療の標準化や質の向上に取り組める体制の整備を図ることが必要と考える。
  • 河口 洋行, 橋本 英樹, 松田 晋哉
    2010 年 20 巻 1 号 p. 23-34
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,DPCデータを用いて生産物(output)をより精緻に捉えたうえで,Stochastic Frontier Analysis(確率的フロンティア分析,以下SFA)を用いた効率性測定を実施した。
    具体的には,第一に生産物としての「患者数」にDPCデータから得られる相対係数で重み付けを行った。これまでの日本の先行研究では生産物として単純に患者数や退院数を用いていたため,より医療資源が必要な患者を多く取り扱う医療機関が効率性測定において不利になっていたが,このウエイト付けにより正確な生産関数を推定することが可能となる。
    第二に,DPCデータから得られるHSMR(Hospital Standardized Mortality Ratio:期待死亡率と観測死亡率の比を取った比率)を品質変数として推定モデルに追加し,品質の制御を実施した。これまでの日本の先行研究では品質変数が利用できず,「医療サービスの品質は一定」という暗黙の前提条件を設定していた。もし,日本の病院に大きな品質のばらつきがある場合には,効率性の差が大きくなる可能性が考えられる。
    併せて,サンプル病院の「観測されない異質性」(unobserved heterogeneity)を制御するためにGreene(2004,2005)のTrue Fixed Effect Model(以下,TFEM)を用いた。TFEMの特徴は,従来のSFAに病院毎のダミー変数を追加し,このダミー変数で固定効果を補足することによって,より正確な効率性推計を可能とした点である。さらに,この固定効果を示す数値は,病院の生産構造(或いは費用構造)の違いを反映すると考えられ,DPCデータの機能係数としての利用可能性があるかも知れない。
    推定の結果,以下の2点が明らかになった。第一に,推定した効率性値は,約0.6と先行研究に比して低い水準となった。これは,本研究では,品質変数による制御が行われているためと考えられ,品質変数を除いたモデルでは効率性の平均値は0.74であった。第二に,病院毎の固定効果値のヒストグラムを見ると,0.9付近を峰とする分布になっていることがわかった。当該棒グラフを,その開設者が識別できるように,樹形図に変換したところ,明らかな分布の違いは認められなかった。
  • 野口 晴子, 泉田 信行, 堀口 裕正, 康永 秀生
    2010 年 20 巻 1 号 p. 35-55
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/28
    ジャーナル フリー
    背景:DPCは患者を傷病名と診療行為から分類する診断群分類である。これまで得られなかった情報が利用可能となる貴重なデータであり,それによって研究も実施されてきた。他方,DPCデータは病院経営においても有用性が高いと考えられ,効果的な利用は効率的なマネジメントに寄与すると考えられる。しかしながら,この点に関する客観的な検討は行われてこなかった。
    目的:DPC病院における経年的な効率性改善を,新規技術などによる貢献部分とDPC病院としての経験年数により示されるマネジメントの貢献部分に分離し,後者が統計的に有意な影響を持つかを実証的に明らかにすること。
    方法:胃の悪性腫瘍,虫垂炎,胆のうの疾患,そけいヘルニア,の4疾病について,入院医療提供時における資源使用量の指標として,在院日数,医療費の包括部分,および包括外医療費,を選択し,これらを被説明変数とする方程式をそれぞれ推定する。説明変数にDPC病院としての経験年数の変数を導入し,他の条件を最大限コントロールした上でもDPC経験年数により資源使用量に差異が発生するかを検証した。その際に,術式選択に関する内生性も踏まえた推定を行った。
    結果:その他の条件を最大限コントロールした上で,DPC病院としての経験年数が2~3年の病院群を頂点に,それよりもDPC経験年数が短いほど平均在院日数が長く,包括外点数も長い傾向が見られた。有意性の点で違いがあるが,傾向としては対象とした4疾病について共通の傾向であった。
    考察:DPC病院としての活動年数が高まると資源配分の効率性が高まる可能性が示唆された。これはDPCデータを用いるだけでなく,実際にDPC病院として活動することを通じたマネジメント改善による効率化余地が存在する可能性を示唆するかも知れない。
  • 伏見 清秀
    2010 年 20 巻 1 号 p. 57-71
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/28
    ジャーナル フリー
    適切な医療提供体制の構築のためには,地域医療の実態を正確に把握し評価することが必要である。そこで,患者調査データとDPC診断群分類を用いて地域医療の実態を可視化し,地域における医療資源の空間的配分のあり方とその必要量を分析した。患者住所二次医療圏と病院二次医療圏の関連を定量的に可視化すると,病態により二次医療圏境界を越える患者の移動に差があることが明らかとなった。東京都を対象とした体系的な分析では,がん,虚血性心疾患の手術患者が特定の地域に集中する傾向があるのに対して,脳卒中手術患者,長期入院患者では二次医療圏内で完結する傾向が強かった。また,都外の療養病床へ入院する患者が一定数存在することが明らかとなった。全国データを用いた二次医療圏外への入院に関連する要因の多重ロジスティック回帰分析では,循環器,整形外科,がんの手術患者のオッズ比が高い一方,外傷,一般消化器外科,高齢者のオッズ比が低いことが明らかとなった。医療資源必要量の推計として,患者調査より推計した手術患者と在院日数30日以下の患者数を急性期患者として,急性期入院医療の平均在院日数を12.0日と設定すると,我が国の急性期病床の必要数は約46万床で現在の一般病床の半分程度であり,さらに急性期病床の平均在院日数が短縮するとそれに比例して必要数も減少することが明らかとなった。急性期病床と非急性期病床の医師,看護職員数を設定して我が国の医療労働力の充足率の地域差を分析すると,北海道,東北地方での医師の不足と関東,東海地方での看護職員の不足の可能性が示された。また,ICUの全国的な過少状態が明らかとなり,回復期リハビリテーション病棟病床の最大必要数は約11万床であることが明らかとなった。
  • 藤森 研司
    2010 年 20 巻 1 号 p. 73-85
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/28
    ジャーナル フリー
    DPCデータからどのような診療プロセスの分析が可能か,大腸(上行結腸からS状結腸)の悪性腫瘍の手術症例(DPC 060035xx0100xx)を例として一連の分析を行った。様式1からは年齢,性別等の従来的な疫学的分析のほか,術前・術後の在院日数,癌のステージと手術手技,病変部位と手術手技の分析が可能であった。診療内容を記述したEファイル,Fファイルからは,手術手技ごとの周術期の抗菌剤の使用状況,麻酔時間,輸血量の分析が可能であった。DPCデータは検査値や画像所見等は持たず,長期的な予後についての情報も持たないが,診療プロセスの詳細な分析が可能であり,大規模臨床研究の基盤としても利用可能なことが示唆された。
  • 康永 秀生, 堀口 裕正
    2010 年 20 巻 1 号 p. 87-96
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/28
    ジャーナル フリー
    Diagnosis Procedure Combination(DPC)データベースは退院時情報や診療報酬データなどから構成され,診断名・入院時並存症および入院後合併症とそれらのICD-10コード,手術処置名,麻酔時間,輸血量,使用された薬剤・医療材料,在院日数,退院時転帰,費用などの情報が含まれる。データは毎年7月~12月の6箇月間に全国の調査参加病院から収集される。2008年にDPC研究班が収集した855施設・約290万件のデータは,日本の急性期病院の入院患者数全体の約40%に相当する。DPCデータベースを利用して,医療サービスの利用やアクセス,アウトカムや費用などについて経時的に分析可能である。さらにDPCデータベースは臨床疫学研究にも応用可能である。本稿の目的は,(1)DPCデータベースの詳細について解説し,(2)米国の診療報酬データベースと日本のDPCデータベースを比較し,(3)臨床疫学研究における診療報酬データベースの位置づけとDPCデータベースの欠点・利点を明らかにする。さらに,(4)DPCデータベースだけを用いてできる具体的な研究例や手法について紹介し,(5)今後の臨床疫学研究ならびにヘルスサービス・リサーチの発展のためにDPCデータベースが果たす重要な役割について論じる。
研究ノート
  • 小口 正義, 藤森 愛子, 小口 はるみ, 跡部 治, 永田 和也, 両角 和雄, 藤森 洋子, 立花 直樹, 蜂谷 勤
    2010 年 20 巻 1 号 p. 97-105
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/28
    ジャーナル フリー
    抗菌薬適正使用は感染患者の確実かつ安全な治癒,耐性菌出現と蔓延化の防止,および医療費の効率的運用の観点から対処するとされ,特に抗菌薬の使用法管理は経済的にも重要な問題となっている。そのため抗菌薬の使用法管理としての対策(抗MRSA薬・カルバペネム系薬の使用申請制度,監視制度,警告通知制度),DPC制度導入などがどの様に薬剤費に影響したかを調査・分析した。その結果,抗菌薬の総使用量は調査期間中ほぼ一定であったが,カルバペネム系薬の使用量,および抗菌薬の総使用金額は半減した。さらに平均在院日数も減少した。
    これらのことから当院の抗菌薬適正使用の取り組みにより,スペクトラムの広域な抗菌薬から狭域な抗菌薬への変更,および高価な抗菌薬から安価な製品への置き換えなど,適切な抗菌薬の選択が進んだものと考えられた。抗菌薬適正使用による抗菌薬の使用法管理は,薬剤費に大きなコスト削減効果を及ぼしていることがわかった。
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