医療と社会
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20 巻 , 3 号
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財団研究論文
  • 伏見 清秀
    2010 年 20 巻 3 号 p. 211-222
    発行日: 2010/10/29
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    限られた医療資源を適切に配置して,医療の質と地域住民のアクセスの確保のバランスのとれた医療提供体制を構築することが求められている。従来は,基本的に二次医療圏で完結する医療が想定されていたが,二次医療圏外の遠方の病院へ入院する患者が相当数いる事が明らかとなり,患者の病院選択に影響を与える要因の分析が必要となっている。本研究では,既存データを活用して,二次医療圏外の病院へ入院する要因を明らかとすることを目的とした。
    平成20年度の厚生労働省患者調査病院退院票とDPC調査様式1を結合して,患者の病態,詳細な診療明細,入退院経路,患者住所地の情報を含むデータベースを構築し,データの整合性を確認するとともに,二次医療圏外の病院への入院と関連する要因を分析した。
    患者調査退院票とDPC調査様式1の傷病名情報の整合性は一部の疾患を除いて高かった。二次医療圏外の入院では,ケースミックス係数が低く,ケースミックス補正在院日数は短かった。多変量解析により,高齢者(オッズ比0.762),男性(1.067),救急車の利用(1.064),紹介患者(1.158),転院(1.268),感染症(1.486),眼科(1.276),乳腺外科(1.239),循環器科(1.218),患者数の多い病院(1.571),教育病院(2.318)などが二次医療圏外への入院と関連する主な要因であった。
    本研究により,患者の病態と病院特性が患者の病院選択に影響を与えることが明らかとなった。専門病院の空間的配置を含む医療連携体制の構築において,考慮する必要があると考えられた。
研究ノート
  • 松山 一紀
    2010 年 20 巻 3 号 p. 223-237
    発行日: 2010/10/29
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,医薬品産業における研究開発に適合的な従業員の組織行動と,それを促進する人的資源管理(human resource management:HRM)を明らかにすることにある。これまで,医薬品産業の研究開発に関する先行研究は多く認められるものの,研究開発に従事する研究人材や人的資源管理に関する研究はほとんど見られない。そこで本研究では探索的に,革新的な組織成果を導き出す研究開発戦略セット,人材マネジメントセットおよび研究者の組織行動セットを明らかにしていく。また同時に,医薬品産業に特有な戦略や人材マネジメント,および組織行動が存在するか否かを確認する。
    東証一部に上場している製造業企業700社を対象として調査を実施したところ,革新的な研究開発成果を導き出すのは,開発戦略においては「革新・品質戦略」,人材マネジメントにおいては「透明・公平なHRM」,そして組織行動においては「自立的行動」であることが明らかとなった。また,これらの間の適合性についても分析したところ,研究開発戦略と組織行動が適合的であるほど,革新的な成果が導かれる傾向にあることが示唆された。最後に,医薬品産業に固有の特徴としてバイオ戦略,革新的な報酬施策が抽出された。
  • 堀籠 崇
    2010 年 20 巻 3 号 p. 239-250
    発行日: 2010/10/29
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,占領期におけるインターン制度の形成過程という歴史的フィルターを通じて新医師臨床研修制度の課題を明示するところにある。そこで本研究では,インターン制度の狙いの解明に焦点をおく。本研究が用いた資料は,第一にスタンフォード大学フーバー研究所所蔵のSylvan E. Moolten Papers,1945-1986である。本資料により,インターン制度導入意図を解明し,医学教育審議会(CME)内部の連合国最高司令官総司令部(GHQ/SCAP)と日本側委員との関係性を再検証した。第二に国立国会図書館憲政資料室所蔵のGHQ/SCAP Record内の公衆衛生福祉局(PHW)文書である。本資料に含まれるCME議事録の精査から,CMEの発したインターン制度構想について明示した。
    結果は次の通りである。インターン制度の真の狙いは,地域医療と医学教育システムとの融合による,最新医療の市民への還元及び開業医のレベルアップにあった。それは,インターン制度を通じた学閥解体とともに国立メディカルセンター計画による医療提供システムの再構築により果たされる予定であったが,前者の,制度としての練りこみ不足と,後者の頓挫とによって失敗に終わった。
    この結果より,新臨床研修制度が医療提供システムに与える影響の検討と,日本の医療システム全体をいかにデザインするかという視点からの当該制度の見直しの必要性が示唆された。
  • 石垣 千秋
    2010 年 20 巻 3 号 p. 251-262
    発行日: 2010/10/29
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    英国の労働党ブレア政権下では,政策の「近代化」のもとに様々な改革が進められた。医療専門職については,歴史的に「自己規制」によって人材の資質を管理していたが,1990年代後半から2000年代初頭の医療スキャンダルをきっかけに,「クリニカル・ガバナンス」という国民保健サービス(NHS)の近代化の一環として改革が進められた。一連の議論を通じて,国民の安全性を最優先とすること,専門職団体の組織運営において非専門職をより登用すること,議会を通じてより積極的に国民に説明責任を果たすことなど,過去に例をみない改革が進められた。そして,プロフェッショナリズムの下に自己規制によって専門職を統治してきたあり方は,規制機関の多元化という構造の変化と共に,行政府,国民,患者も参加した共有化された規制という主体の変化をみた。
    本論は,一連の過程を追跡することにより,「近代化」のもと,医療専門職の規制,国家の関係について示唆を得ることを目的としたものである。英国の中央医療評議会(GMC)はプロフェッショナルの理念型と捉えられる好例であり,日本の議論にも多くの示唆が得られるものである。
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