平均寿命の延長に伴うヘルスケアコストの増大は,先進国共通の課題である。本研究は,要介護認定高齢者を対象として,医療費と介護費を個人ごとに合計したヘルスケアコストに関連する要因について療養場所別に検討することを目的とする。
対象は北海道のA町に在住する65歳以上高齢者のうち,要介護1~5に該当し,且つ,国民健康保険加入者226名とした。分析は,療養場所間で,対象者属性やヘルスケアコストを比較した。また,療養場所別のヘルスケアコストに関連する要因を検討するため,療養場所が在宅と介護保険施設入所者については,従属変数をヘルスケアコスト,独立変数を年齢,性別,要介護度,入院日日数とした一般化線形モデルを行った。医療型療養病床の入院者に関しては,対象者数が少ないため多変量解析は行えなかったので,要介護度別,入院日数別のヘルスケアコストを記述した。
本研究の結果では,総ヘルスケアコストの74%が施設に関連して消費されていることがわかった。また,在宅と介護保険施設においては,要介護度と入院期間がヘルスケアコストに有意に関連していた。医療型療養病床の入院者は,全員が21日以上入院しており,ヘルスケアコストの15%を消費していた。これらの者の入院理由は,急性期医療ではなく,主に介護が必要で入院しているという回答が多かった。
ヘルスケアコストの削減をはかるためには,要介護度の重症化を防ぎ,在宅での療養を長期化させることが有効であることが示唆された。しかし,療養場所の選択については,要介護者の家族等の状況についても考慮する必要があると言える。
抄録全体を表示