医療と社会
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22 巻 , 2 号
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研究論文
  • 千葉 理恵, 木戸 芳史, 宮本 有紀, 川上 憲人
    2012 年 22 巻 2 号 p. 127-138
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/09
    ジャーナル フリー
    目的:わが国の地域住民が,精神障害をもつ人々とよりよく共生するために,居住地域や自身にどのようなことが不足していると考えているかを質的に明らかにすることを目的とした。
    方法:東京都内の20市区町村を対象地域として,各市区町村の選挙人名簿および住民基本台帳から100名ずつを単純無作為抽出し,20歳以上の地域住民2000名を対象として,2009年9~11月に郵送により自記式調査票の横断調査を行った。調査票には,2つの質的質問項目「住民の皆さんと精神障害をお持ちの方が,共に心地よく暮らすために,あなたの住んでいる地域には(/住民であるあなた自身には)何が不足していると思いますか」や,性別,年齢などの項目を含めた。1つ以上の質的質問項目に有効回答のあった274名(平均年齢48.6歳;男性44.2%)を分析対象者として,ベレルソンの手法に基づく内容分析を行った。
    結果・考察:質的質問項目の回答には,精神疾患についての知識や理解,精神障害をもつ人々との交流,地域住民同士の交流に関する回答など多彩な内容が含まれた。精神障害についての知識を深めるための地域住民のニーズに合うような教育の機会や,精神障害をもつ人々との交流の機会の提供,広い意味での住民の交流・連帯への介入によってスティグマにどのような影響があるかを明らかにすることが,精神障害をもつ人々のソーシャル・インクルージョンを促進していく上で重要であることが示唆された。
研究ノート
  • 梅原 昌宏, 山田 康夫
    2012 年 22 巻 2 号 p. 139-156
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/09
    ジャーナル フリー
    少子高齢社会の影響もあり,医療保険制度の財政は非常に厳しい状況に陥っている。そして国民医療費の抑制を目的とした自己負担率の引き上げが過去幾度か行われてきたが,効果は限定的であった。しかし近年,スイッチOTC化の進歩とともに医療サービス需要を代替するセルフメディケーションが注目されはじめている。セルフメディケーションが普及することは医療サービスの価格弾力性を大きくし,自己負担率引き上げによって医療サービス需要を抑制させ,その効率化を図ることが期待できる。
    本稿では対象疾病をアレルギー性鼻炎および花粉症に限定し,WEB調査によるアンケートを行った。そして,医療サービス需要関数,セルフメディケーション需要関数をProbit分析によって推定し,自己負担率が現在平均の2割8分から最大6割まで引き上げられたときに関連する要因をχ2独立性の検定,差の検定によって分析した。
    分析の結果は,交差価格弾力性が0.54~0.90と大きくなり,自己負担率引き上げによる医療サービス需要の抑制効果が高くなる可能性があることが確認された。しかし,自己負担率が6割まで引き上げられると自然治癒を選択する割合が高くなり健康水準の低下とそれに伴う国民医療費の増加が懸念されるようになる。そして,性別,年齢,自己負担率,世帯労働所得,薬の知識,自覚症状といった要因の分析を行ったが,自己負担率の引き上げに関連するものは薬の知識と自覚症状ということが明らかになった。
特別レポート
  • 桒田 但馬
    2012 年 22 巻 2 号 p. 157-170
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/09
    ジャーナル フリー
    農村地域における公的医療・公立病院のあり方を巡り,「公立病院改革ガイドライン」に沿った改革の是非について議論がなされていた最中,2011年3月11日に東日本大震災が発生した。本報告では,大震災からの復興・再建議論の文脈において,岩手県の医療供給の中核を担う県立病院を事例として取り上げ,「小都市―農村型」二次医療圏が直面する地域医療の供給が抱える政策的課題を整理した。その結果,以下の示唆を得た;
    ①農村地域の医療供給において,岩手県では公的セクター,特に県立病院・診療所の役割は非常に大きく,大震災からの復旧,復興にあたってその再建は不可欠である。
    ②岩手の「小都市―農村型」二次医療圏では大震災前から県立病院等は供給体制の縮小を余儀なくされており,再建後においてもその議論は避けられない可能性が高い。
    ③再建上,最優先にすべきことは県・県立病院等と地域住民(県民)や市町村との信頼関係の構築,病院・診療所間の緩やかな分担と連携,そして医療と保健・介護(福祉)との連携である。これらはすでに震災以前から重大な課題であり,大震災でよりその必要性が鮮明になったに過ぎない。
    ④これらの課題に取り組むことが,岩手の農村地域における県立病院等の経営の持続可能性を高めることにつながる可能性が,一部の実践事例から示唆されている。
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