医療と社会
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24 巻 , 1 号
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巻頭言
特集:健康格差とソーシャル・キャピタルの『見える化』
  • 近藤 克則, JAGESプロジェクト
    2014 年 24 巻 1 号 p. 5-20
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/05/12
    ジャーナル フリー
    「健康日本21(第2次)」で,「健康格差の縮小」とソーシャル・キャピタル(地域のつながり)など「社会環境の質の向上」が明示され,介護予防でも地域診断に基づく地域づくりへの重視が謳われるようになった。しかし欧米に比べ我が国ではそれらに必要な「見える化」が遅れている。
    これらの課題に取り組むため厚生労働科学研究費補助金などで組織されたJAGES(Japan Gerontological Evaluation Study,日本老年学的評価研究)プロジェクトの取り組みを紹介し「見える化」の可能性と課題を考察することが小論の目的である。
    本研究プロジェクトでは,まず先行研究レビューに基づきベンチマークの必要性や限界・課題,政策評価ベンチマーク指標群の枠組みと指標選択基準,要介護リスクと保護要因などについてまとめた。次に全国31市町村との共同研究により,要介護認定を受けていない10万人超の高齢者のデータベースを構築して指標群を作成し,保険者にフィードバックするベンチマーク・システムを開発した。さらに縦断研究で解明されたリスク要因や保護的要因,応用研究としての介入研究などに基づく指標群の妥当性の検証などを行った。考察では,行政と研究者の共同の仕組みやデータベース,ベンチマーク・システム開発の多面的な意義と,ベンチマーク指標の妥当性の検証など今後の課題について述べた。
    健康格差と健康の社会的決定要因の「見える化」による効果的・効率的・公正な介護政策のために総合的なベンチマーク・システムのプロトタイプを開発し,社会保障領域における大規模データ活用の可能性と課題を考察した。
  • 狩野 恵美
    2014 年 24 巻 1 号 p. 21-34
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/05/12
    ジャーナル フリー
    世界保健機関(WHO)は,健康格差はグローバルな保健課題であるとしたうえで,その対策として,健康格差の測定・評価と,健康の社会的決定要因への対処を推進している。その一環として,人口の健康状態を小規模な行政単位やその他の社会・経済特性などによって層別化したうえで,健康リスクや健康状態の格差を定期的に測定し,そのエビデンスをもとに,適切な政策や事業を計画,実施,モニタリング,評価することを強く勧めている。その実践を支援するため,とくに地域の保健医療管理者にとって利用しやすいヘルス・マネジメントのための指標やツールを開発している。 本稿では,その中からWHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター)が手掛けている,Urban HEARTとAge-friendly Cityをそれぞれ紹介する。これらのツールが,各国や都市における,多部門連携を通じた健康の社会的決定要因への対処と,それを通じた健康増進および健康格差是正の一助となることが期待される。今後,異なる状況にある国や地域における,これらのツールの効果と適性について検証を重ねる必要がある。
  • 尾島 俊之, JAGESプロジェクト
    2014 年 24 巻 1 号 p. 35-45
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/05/12
    ジャーナル フリー
    人口が高齢化し,要介護高齢者が増加する中,効果的な介護予防対策を推進していく必要がある。そのためには,要介護に関連する要因等に関する見える化を進めることが必須であると考えられる。そこで,地域で活用できる介護予防ベンチマーク指標を開発することがこの研究の目的である。まず,評価指標の枠組みを検討し,指標の候補を作成した。次に,良い指標の評価基準を作成し,多数の指標の候補から,コア指標と推薦指標を選定した。また,年齢の交絡への対応方法を検討した。そして,実際に全国の31地域についての評価を行った。評価指標の枠組みについて検討した結果,5要素と2側面による独自に作成した分類と,世界保健機関(WHO)によるUrban HEARTの枠組みを活用することとした。それらの枠組みで指標の候補を列挙し,249の指標の候補が作成された。良い指標の評価基準を検討し,正確性,内容的代表性,社会的受容性,学術的重要性,介入可能性,入手容易性の6つを採用することとした。交絡への対応については,限定,層化,直接法年齢調整,間接法年齢調整,ベイズ推定値(間接法年齢調整),多変量解析,回帰分析の残差等を検討した結果,自治体の事務職員等へのわかりやすさを重視して層化を原則として採用することとした。各指標について評価を行い,22個のコア指標と,18個の推薦指標が選定され,それを用いた評価を行った。今後,開発されたベンチマーク指標による評価結果を用いて,対応戦略の特定を進めていく必要がある。
  • 近藤 尚己
    2014 年 24 巻 1 号 p. 47-55
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/05/12
    ジャーナル フリー
    保健活動の現場における健康格差の評価に有用な指標について文献レビューを行い,候補指標について,既存のデータを用いて試算し,活用に向けた課題抽出を行った。データには,2010年から11年に全国28自治体117,494名の高齢者(65歳以上)を対象に行われた調査(回収率66%):日本老年学的評価研究(JAGES)を用いた。レビューの結果,健康指標値の差やその比に加え,それらと類似の解釈でありながらバイアス制御や比較可能性の点で有利な指標として格差勾配指数(Slope Index of Inequality:SII)格差相対指数(Relative Index of Inequality:RII)およびその変法(Kunst-Machkenbach's RII(RIIKM))を状況に応じて使い分けることが妥当であると考えられた。JAGESデータを学校区別に集計し,市町村単位で抑うつリスク者割合,閉じこもり者割合について値の差・値の比・SII・RII・RIIKMを算出した。等価世帯所得・学歴・最長職の主成分得点を学校区の社会経済的な困窮度指数として,そのランクによる健康格差を算出した。SII,RII,RIIKMは安定的に算出されたが,値の差や比は偶然誤差の影響を強く受けた。各指標の特性・利点・欠点を踏まえたうえで,これら指標の活用法について普及を進めていくべきである。
  • 相田 潤, 近藤 克則
    2014 年 24 巻 1 号 p. 57-74
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/05/12
    ジャーナル フリー
    保健行動や遺伝要因に加えて,健康の社会的決定要因を考慮する重要性が指摘され,実際の保健政策でも考慮されるようになってきた。これは,人々の行動や健康が周囲の社会環境の影響を受けていることが研究により明らかになってきたことが理由である。社会的決定要因のひとつが,人々の絆から生まれる資源であるソーシャル・キャピタルである。人々のつながりが豊かであることが,情報や行動の普及や助け合い,規範形成を通じて健康に寄与する可能性が指摘されている。ソーシャル・キャピタルには,集団間の健康格差に関わる地域や集団の社会的凝集性に基づいた考え方と,主に個人のネットワークに基づいた考え方が存在する。マルチレベル分析の社会疫学研究への導入により,前者の考え方でソーシャル・キャピタルと健康状態や死亡,保健行動との関係が実証されてきた。一方,信頼や互酬性の規範といった概念よりも踏み込み,より実体のあるネットワークに基づくリソースに注目する後者の考え方は,現実的なソーシャル・キャピタルのメカニズムの理解や,健康向上の介入に利用しやすいと考えられ,研究がすすみつつある。また,社会格差や災害からの復興に関しても,ソーシャル・キャピタルが健康に寄与すると考えられている。そしてまだ数は少ないものの,ソーシャル・キャピタルを活用した介入研究も報告されつつある。前向き研究や介入研究の少なさや負の側面の存在など今後の研究が必要な部分も多いが,健康格差を減らして健康的な社会をつくる方法のひとつとして,今後もソーシャル・キャピタル研究は進められていくべきであろう。
  • 鈴木 佳代, 近藤 克則, JAGESプロジェクト
    2014 年 24 巻 1 号 p. 75-85
    発行日: 2014/04/25
    公開日: 2014/05/12
    ジャーナル フリー
    介護予防に取り組む地方自治体が,自らの重点課題やその改善方法についてエビデンスに基づいた政策を立案・実行することは容易ではない。その原因のひとつは,そうした取り組みを支援するツールが不在だったことにある。JAGES(Japan Gerontological Evaluation Study日本老年学的評価研究)プロジェクトは,WHO神戸センターが開発したUrban HEART(Urban Health Equity Assessment and Response Tool)を参考にして,全国25保険者31市町村のデータをもとに,22のコア指標と18の推奨指標からなる介護予防のための見える化システム「JAGES HEART」を開発した。このシステムは,介護保険者(市町村および広域連合)が自らの現状を把握して政策を立案・実行し,改善状況をモニタリングしてその効果を検証し,さらなる改善につなげるというサイクルを回すうえで有用なツールとなりうる。本稿では介護保険者をJAGES HEARTの利用主体と想定し,保険者による課題の発見・設定と改善取組を支援する具体的な過程について,事例や研究成果を交えて紹介する。
    保険者によるJAGES HEARTの活用プロセスは,①保険者が取り組むべき重点課題の設定,②保険者内における重点対象地域の設定,③介入施策の立案とプログラムの実施,④政策による効果の評価の4段階からなる。
    この4段階のプロセスにおけるJAGES HEARTの意義は,客観的で比較可能な数値による「見える化」を通じ,保険者職員が地域診断を行い課題に取り組む過程を,評価まで含めて総合的に支援することにある。市町村の主体性や知識を重視しながら,エビデンスに基づく介護予防の取り組みを支援するJAGES HEARTに期待されるところは大きい。
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