医療と社会
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26 巻 , 1 号
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巻頭言
特集論文
特集:医療ビッグデータをめぐる現状と課題
  • 伏見 清秀
    2016 年 26 巻 1 号 p. 3-5
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/05/13
    ジャーナル フリー
  • 康永 秀生
    2016 年 26 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/05/13
    ジャーナル フリー
    DPC(Diagnosis Procedure Combination)データベースは,全国の1000以上の施設から収集された入院患者データベースであり,年間700万を超える症例数を有するビッグデータである。DPCデータは診療報酬明細データベースの一つであり,詳細な診療履歴データに加えていくつかの臨床データも含んでいる。このデータベースを用いた臨床研究が近年積極的に進められている。本稿ではその成果の一部として,(1)アテローム血栓性脳梗塞患者に対するアルガトロバン療法の効果,(2)非がん成人患者における経静脈栄養と経腸栄養の短期生存率と合併症率の比較,(3)予後熱傷指数の妥当性の検討,という3つの研究について解説する。さらに,DPCデータをはじめとする医療ビッグデータ研究の今後の課題についても言及する。
  • 藤森 研司
    2016 年 26 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/05/13
    ジャーナル フリー
    医療のビックデータの一例として匿名化電子レセプトのアーカイブであるNational Database(NDB)について,その特徴と制約について詳述した。NDBは平成21年度分からすべての電子レセプト(医科,DPC,歯科,調剤)と特定健診データが突合可能な匿名化の後に厚生労働省保険局に集積されている。本来は医療費適正化のために集積されたデータであったが,都道府県や研究者にも門戸が開放された。
    そもそもの電子レセプトの制約に加えNDB特有の制約はあるが,電子レセプトの電子化率が98%に迫る今日では,我が国の医療状況を悉皆性を持って把握できる仕組みと言えるだろう。NDBの活用例として厚生労働省医政局と共同で申請し,都道府県の地域医療計画,地域医療構想のために提供しているデータブックの例を記した。都道府県別,二次医療圏別,市区町村別の医療提供体制と患者受療動向を示したものである。
    NDBに対する大きな期待は全国民を対象とするコホート研究の優れた情報源となることである。現在は保険情報に基づいたレセプト情報の突合であるので,保険が切り替わると結合が中断するが,今後,医療用の個人番号等の導入により,長期間に渡るレセプトの結合が可能となり疾患の発生から収束まで一連のエピソードを把握することが可能となる。
  • 松田 晋哉
    2016 年 26 巻 1 号 p. 25-35
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/05/13
    ジャーナル フリー
    わが国の医療におけるビッグデータの代表的なものはDPCとNational database(NDB)である。1年間で前者は1,100万件の退院サマリと医療行為の詳細データ,後者は医科レセプトのみで17億件以上のデータを集積している。情報技術の進歩によりこうしたビッグデータの加工が可能となり,また国の医療政策としてもこうしたデータの活用が促進されつつある。詳細さと悉皆性においてこれらのデータは国際的にも非常に優れたものであり,その活用が進むことでhealth service researchの発展が期待できる。このような研究の推進は我が国の医療政策の実効性を高めると期待される。そのためにはこのような医療ビッグデータを活用できる人材の育成が急務である。
  • 中山 健夫
    2016 年 26 巻 1 号 p. 37-46
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/05/13
    ジャーナル フリー
    近年,国内においても医療における様々な大規模データベースが大きく発展しつつある。中でも保険者に由来する診療報酬明細(レセプト)は,母集団が明確であることと,全数把握であり,長期間の時系列変化を把握でき,外来での医療行為も把握できる点,医療費(チャージ)の情報を得られる,利用コストが低いことなどから研究活用も進んでいる。株式会社日本医療データセンター(JMDC)は複数の健康保険組合からの委託でレセプト(現在約270万人分)と特定健診結果を匿名化名寄せしてデータベース化している。このデータベースを用いて医薬品安全性におけるエビデンス診療ギャップの課題として,ステロイド長期処方患者における骨粗鬆症治療薬の予防投与,抗パーキンソン薬の安全性に関して薬剤添付文書の注意事項の遵守状況,医薬品以外の課題として壮中年期の虚血性心疾患患者における心臓リハビリテーションの実施状況を明らかにした。また健診データとレセプトデータの突合解析により,健診結果で指示された医療機関を受診していない者は,高血糖で約65%,高血圧で約90%に達することを明らかにした。厚労省の構築しているNDBへの期待は大きいが,膨大なデータを効率よく管理・運用するシステムの開発,ノウハウの蓄積はこれからの課題である。民間データベースはNDBと比べ規模的には限界があるが,数百万単位のデータを柔軟かつスムーズに扱える点は大きな魅力である。
  • 宮田 裕章
    2016 年 26 巻 1 号 p. 47-60
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/05/13
    ジャーナル フリー
    大規模臨床データベースは,患者・国民の視点に基づいて医療の質向上に向けて日々取り組んでいる臨床現場の人々が活用することにより最大の効果を発揮する。それは現場の医療者自らがプロフェッショナルオートノミーを発揮し,エビデンスに立脚した医療の質向上の活動を継続的に行う活動を基本とするものである。現場が活用可能な価値のあるデータベースを構築することで,行政・保険者と連携し医療の質向上と持続可能性を両立させる社会システムを構成すること,産官学の協働による革新的な診断・治療技術の開発など,さまざまな取り組みへと発展させることが可能となる。一連の活動を信頼性のあるデータに基づいて体系的に行うことは,患者および国民の視点に基づいた最善の医療を実現し,新しい社会を拓くことにつながる。
  • 石川 ベンジャミン光一
    2016 年 26 巻 1 号 p. 61-72
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/05/13
    ジャーナル フリー
    病院情報システムの普及に伴って診療に関わる記録が電子化され,医療機関の壁を超えて集積されるようになった結果,我が国でも大規模な医療情報データベースの整備が急速に進みつつある。また大規模医療データについては,臨床疫学的な視点からの医療の学問的・技術的側面に関わる分析だけでなく,社会サービスとしての医療の費用・効率や持続可能性についての観点からも分析が行われるようになってきている。中でも厚生労働省が実施する「DPC導入の影響評価に関する調査」では,医療機関が作成するデータセットに入院治療を受けた患者の住所地が7桁郵便番号として記録され,また調査の結果報告において医療機関の実名入りの傷病別症例数・入院日数などが公表されることから,地理情報システム(Geographical Information System,以下GIS)を利用した診療圏の分析や,社会経済学的な属性を活用した分析への注目が集まっている。本稿では,GISが取り扱うデータの形式や,住所から緯度経度による地理データへの変換,GISを用いた地理情報の分析手法について説明すると共に,具体的な分析事例を示すことでGIS分析の現状についての紹介を試みる。また,GISを利用した研究を進めていく上で直面する課題から主なものを取り上げ,今後に向けた展望について記す。
  • 宇山 佳明
    2016 年 26 巻 1 号 p. 73-83
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/05/13
    ジャーナル フリー
    近年,規制当局において,電子診療情報データベースの活用が増加しつつある。医薬品医療機器総合機構(PMDA)においては,平成21年度からMIHARIプロジェクトと呼ばれる新たな取り組みを開始し,薬剤疫学的手法を用いた医薬品の安全性評価を実用化するための検討を進めてきた。MIHARIプロジェクトにおいては,多くの試行調査を実施し,薬剤疫学的手法を行政的な目的で活用するための体制構築を進め,また,日本で利用可能な電子診療情報データベースの特徴等を明らかにしてきた。さらに平成23年度からは,MID-NET(医療情報データベース基盤整備事業)と呼ばれる新たな取り組みを開始し,日本における大規模病院診療情報データベースの構築を進めている。このような取り組みを通じて,PMDAは,薬剤疫学的手法を用いた医薬品の安全性評価に関する規制当局としての経験を集積することができ,これらは安全対策の質の向上に寄与するだけでなく,今後の日本における電子診療情報のさらなる標準化あるいは活用を促進することにも役立つものと考えている。
    本稿では,MIHARI及びMID-NETプロジェクトに関する背景やこれまでの取組み,そして今後の活動の方向性についてご紹介したい。
  • 山本 隆一
    2016 年 26 巻 1 号 p. 85-93
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/05/13
    ジャーナル フリー
    我が国は医療の情報化自体は先進的であったし,現在でも情報システムの導入率という観点では世界の最高水準にある。しかし,情報化の目的は,事務処理の合理化が主体であり,情報を公益目的に利用する二次利用の面においては遅れていたと言わざるを得ない。しかし最近になって,我が国にも大規模な医療情報データベースが構築されるようになったが,それに伴い,公益利用とプライバシー保護の対立的な問題が顕在化してきた。例えば高齢者の医療確保に関する法律に基づいて作成されたレセプトおよび特定健診・保健指導のデータベースは一般的な公益利用に関して根拠法には記載がないために,利用に際して厳格な匿名化が求められ,安全管理に関する要求も厳しく,公益研究にとって使いやすいデータベースとは言えない。一般に,公益目的の研究を行う研究者がプライバシーの侵害を意図的に行う可能性はないと考えられるが,法的な要求自体が曖昧であるために,研究が促進されない可能性もある。医学は診療情報の公益利用なしには発展はあり得ないので,明確で研究者にとっても患者にとってもわかりやすい法制度の整備が強く望まれる。改正個人情報保護法が2015年9月に成立したが,政令や指針の整備は2017年と思われる法の実施までに議論される。医療に関するデータベース研究者はこれの議論を注視すべきであるし,必要な場合は適切な提言を行うべきと考えられる。
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