医療と社会
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28 巻 , 1 号
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巻頭言
〈特集〉治験・臨床研究―患者の医療アクセスの改善,被験者保護と臨床研究開発の推進―
  • 楠岡 英雄
    2018 年 28 巻 1 号 p. 3-16
    発行日: 2018/04/30
    公開日: 2018/05/24
    ジャーナル フリー

    わが国における治験・臨床研究の活性化に関する取り組みは,2003年の「全国治験活性化3カ年計画」に始まり,その後,2007年の「新たな治験活性化5カ年計画」,2012年の「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」へと続いている。活性化計画が作られた背景には,ICH-GCPの国内への適用のため策定され,1997(平成9)年に公布されたGCP省令により治験の実施が難しくなり,国内で実施される治験の件数が減少したことがあるとされている。また,国内の治験の「進捗が遅い,費用が高い,質が良くない」という状況を改善するためでもあった。「新たな治験活性化5カ年計画」により治験の件数は回復し,スピードは国際レベルで差はない程度まで改善し,質はよくなっていたが,費用が高い点は変化がなく,これはわが国における治験体制の構造的問題,すなわち施設の症例集積性が低いことが原因と考えられた。症例集積性を高めるためにネットワークの強化が図られ,治験中核病院や治験拠点医療機関への基盤整備の援助が行われた。それに引き続く「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」では創薬等のイノベーションの促進へと目標が拡大し,治験から臨床研究の活性化へと重点が移った。この延長上に,臨床研究法や臨床研究中核病院の制度があると言える。

  • 川野 宇宏
    2018 年 28 巻 1 号 p. 17-26
    発行日: 2018/04/30
    公開日: 2018/05/24
    ジャーナル フリー

    現在の難病対策については,スモンへの対応以降,数度の見直しを経て,2015(平成27)年1月1日に「難病の患者に対する医療等に関する法律」(平成26年法律第50号。以下「難病法」という。)が施行されるに至っている。難病法の下における難病対策は,これまでの研究中心的な制度から,福祉的な側面も含めた総合的な難病対策へと変化した。

    このような総合的な難病対策を推し進める難病法が成立する以前から,予算事業においても医療費助成等の施策を実施してきたが,自治体の超過負担等の課題もあった。これらの課題の解決に向けた議論がなされた結果,難病法による難病対策として以下の3つの柱を中心として施策が講じられることとなった。

    ①効果的な治療方法の開発と医療の質の向上

    ②公平・安定的な医療費助成制度の仕組みの構築

    ③国民の理解の促進と社会参加のための施策の充実

    難病法が施行され,難病対策は充実しているが,必ずしも十分とはいえない点もある。例えば,どの病気にかかっているかなかなか診断がつかない患者へ早期に診断を付けることができるようにする医療提供体制の整備や,難病患者がその状態に応じて就労し,仕事を継続していけるようにするための支援体制の充実等,更なる難病対策の充実が重要である。

    これまでの成果・課題を把握し,現在の施策の延長線上に難病法に規定された見直し時期があることを見据え,難病対策に取り組んでまいりたい。

  • 伊藤 たてお
    2018 年 28 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 2018/04/30
    公開日: 2018/05/24
    ジャーナル フリー

    2015年1月1日から施行された「難病の患者に対する医療等に関する法律」(以下,難病法とする)の提起と成立に至る患者会の活動を振り返り,患者会の視点からの新たな課題と問題提起を行う。難病対策は1972年の難病対策要綱以来,対象疾病や事業の拡大をしてきたが,予算措置であるためにその時々の国の予算の範囲内での対策とされていた。その歴史の中で患者会はどのような運動を展開して難病法の成立に関わったのかは,今後の日本の難病対策の在り方の議論においても重要な意味をもつものではないだろうか。患者会の果たすべき役割はより大きくなると考える。

    「難病の患者が尊厳をもって地域で生活をしていくことのできる社会」の実現を目指すとしている難病法の見直しについての課題を提起する。それを一言に集約するならば,「すべての難病とその患者を難病法の対象とする」ということである。医学的な見地とはまた別に,患者の生活を支援することの重要性の理解が必要であると考える。加えて,急速に発展する医学の発展にも対応できる仕組みの構築が必要と考える。法律はよりシンプルである方が多くの国民の理解を得られやすく,かつ行政的にもコスト的にもより効率的になると考えるからである。

    現状では様々な課題も次第に明らかとなっているが,難病法のもつ「国民の健康の向上に寄与する」という目的からも,他の施策との横並びの整合性を過剰に重要視すべきではないと考える。

  • 片山 晶博
    2018 年 28 巻 1 号 p. 37-48
    発行日: 2018/04/30
    公開日: 2018/05/24
    ジャーナル フリー

    我が国では「保険医療機関及び保険医療養担当規則」第18条の規定「保険医は,特殊な療法又は新しい療法等については,厚生労働大臣の定めるもののほか行ってはならない」としており,国内で承認されていない医薬品・医療機器等を使用する場合には原則として保険診療では実施できない。例外として,保険外併用療養費制度が存在し,その枠組みの中に治験や先進医療といった評価療養が存在する。一方で,このような既存の制度では最先端の医療技術・医薬品等への迅速なアクセスが困難な患者が一定程度存在し,そのような患者が先進的な技術等へのアクセスを確保できるよう,2016年より「人道的見地から実施される治験」や「患者申出療養」といった新たな制度が施行された。これらの制度が開始されて1年以上が経過しているが,それぞれの制度の概要を説明した上で,両制度の現状及び課題等について言及する。

  • 天野 慎介
    2018 年 28 巻 1 号 p. 49-61
    発行日: 2018/04/30
    公開日: 2018/05/24
    ジャーナル フリー

    「患者申出療養制度」は,混合診療に関する規制改革会議での議論を経て,一定のルールと患者自身の希望に基づき,保険診療と併せて受ける保険外診療の1つとして,2014(平成26)年3月に規制改革会議より提案された。そして,同年6月に閣議決定された政府の規制改革実施計画において,申請から原則6週間で国が判断するスキームとされるとともに,2015(平成27)年5月に成立した「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律」によって法定された。日本医師会や複数の患者団体などからは,混合診療の原則禁止を堅持することや,有効性と安全性が示されたものは薬事承認と保険適用を速やかに認めること,患者の費用負担や患者説明への配慮を求める要望があり,これらの要望も受けて,中央社会保険医療協議会において制度と運用が検討された結果,一定の安全性・有効性等が確認されたものを対象とし,その保険収載を目指した実施計画を作成して臨床試験を実施して評価する制度となった。患者申出療養は4件にとどまっており,「医師による計画書の作成等にかかる作業の負担が大きいことなどにより,申請以前の準備に長期間を要するのではないか」「患者の費用負担が重いのではないか」などの課題が指摘されている。

  • 福田 亮介
    2018 年 28 巻 1 号 p. 63-77
    発行日: 2018/04/30
    公開日: 2018/05/24
    ジャーナル フリー

    過去の臨床研究の不適正事案を受けて設置された「臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会」において,臨床研究に関して法制化が必要とされた。本会の報告書を受けて成立することとなった臨床研究法は,2016年5月に通常国会に提出され,2017年4月7日に成立,2018年4月から施行される。

    本法は,臨床研究に対する国民の信頼を確保し,臨床研究の実施を推進することを目的として,未承認・適応外の医薬品等の臨床研究及び製薬企業等から資金提供を受けて実施される当該製薬企業等の医薬品等の臨床研究の実施者に対して,モニタリング・監査の実施や利益相反の管理等の実施基準の遵守を義務付けるとともに,製薬企業等に対して,当該製薬企業等の医薬品等の臨床研究に関する資金提供の情報等の公表を義務付けるなどの制度を定めるものである。

    本稿では,臨床研究法成立の背景を含め,臨床研究部会での議論にも触れながら,法の及び施行規則の概要についてご紹介する。

  • 田代 志門
    2018 年 28 巻 1 号 p. 79-91
    発行日: 2018/04/30
    公開日: 2018/05/24
    ジャーナル フリー

    本稿は,ここ10年の間に進められてきた国内の制度改革の過程を詳細に検討したうえで,2017年の臨床研究法の成立をその到達点として位置づけるものである。多施設共同研究の増大に伴い,国際的にも倫理審査委員会の制度改革が急ピッチで進められている。国内においても,2008年に示された原則自機関への倫理審査委員会及び治験審査委員会設置義務の解除に始まり,現在ではむしろ積極的に「一括した審査」を推進するための様々な施策が進められている。

    臨床研究法は,これらの施策の1つの到達点として理解することができ,これまでにない審査プロセスを実現している。従来の倫理審査委員会は,あくまでも研究機関の長の諮問機関であり,独立した判断主体として位置づけられていなかったが,臨床研究法下では研究者と倫理審査委員会は独立した主体として機能することが可能となる。これに伴い,研究者,研究機関の長,倫理審査委員会が責任を分有する仕組みがようやく日本でも始まった。この仕組みは今後直ちに他の法律や研究倫理指針にも反映されるべきである。

  • 澤 芳樹
    2018 年 28 巻 1 号 p. 93-102
    発行日: 2018/04/30
    公開日: 2018/05/24
    ジャーナル フリー

    細胞シート移植法はES/iPS細胞を含む全ての細胞ソースにて治療手段として応用が期待できる再生医療の基盤技術である。2007年には,心臓移植待機中の拡張型心筋症患者が本治療により人工心臓から離脱し,2018年現在も元気にされているというFirst in Humanの臨床試験に成功した。以来,35例以上の重症心不全患者を治療し,LVAS離脱自宅復帰の2例を含めて,本治療法が重症心不全の心機能や症状を安全に向上し,生命予後を改善しうることを臨床的に証明した。一方,技術移転のもと,虚血性心筋症に対する企業治験が終了し,2015年4月には多施設治験の結果が論文発表され,同年9月に保険承認申請が承認された。また成人及び小児の拡張型心筋症を対象とした2つの医師主導治験も開始した。

  • 鮫島 正
    2018 年 28 巻 1 号 p. 103-113
    発行日: 2018/04/30
    公開日: 2018/05/24
    ジャーナル フリー

    iPS細胞に代表される細胞を用いた再生医療分野の研究は,ヒトiPS細胞の開発が報告されてから,この10年間で大きな進歩を遂げており,その研究成果から臨床応用への期待が大きい。わが国では,再生医療の実現化に向けた大胆な法整備が行われて,世界的にも注目されている。大阪大学の研究成果によって弊社が製品化した再生医療等製品「ハートシート」は,世界で初めて重症心不全に適応できる自家細胞製品であり,この法整備によって実現することができた。これは,産官学が常に連携しながら新たな領域の実現化を目指した成果であるが,海外の先進国において実用化された再生医療の数と比べて,日本はやや遅れる状況にある。

    本稿では,弊社開発の経緯と,その期間で経験した規制整備の動きや関連する情報をまとめ,これまでの法整備による開発環境の変化とその成果を整理したうえで,産業側の立場から,今後,わが国が再生医療の実用化と産業化推進を牽引するために必要となる現状課題と論点について考察した。

  • 梶尾 雅宏
    2018 年 28 巻 1 号 p. 115-128
    発行日: 2018/04/30
    公開日: 2018/05/24
    ジャーナル フリー

    2015(平成27)年4月に発足した日本医療研究開発機構(AMED)は,政府の医療分野の研究開発の指令塔である健康医療戦略本部が策定する医療分野研究開発推進計画に基づき,一貫したマネジメント機能を持って,基礎研究から応用研究,実用化にいたるまで切れ目無い研究課題の実施を推進し,これにより,世界最高水準の医療サービスの実現及び健康長寿社会の形成に努めている。

    研究開発費については,関係省庁が確保した補助金等の交付を受け,公募を行い優れた研究を選定して配分している。計画に位置づけられた,横断型と疾患領域対応型からなる9つの統合プロジェクトを縦横連携させて推進している。研究開発課題の評価・運営に当たり,その分野に関して優れた学識経験等を有するPD/PS/POを選任している。発足からの2年間余りにおいても,合算使用ほか研究費を機能的に運用できるようにするための改革や全課題共通の評価システムの構築,また,若手研究者の育成支援,データシェアリングの推進,国際連携の取組,政府出資を受けた新たな事業であるCiCLE事業の発足などに取り組んでいる。

    当面の課題としては,AMEDが支援する研究開発課題を網羅的に把握・管理し,効率的なマネジメントを行うためのデータベース(AMS)の開発・運用や,AMEDにおける評価の質の向上を図るための公募への英語の導入とピアレビューの確立,などが挙げられる。

    アカデミアと臨床と産業界,役所,患者さんその他様々な関係者の間をつなぐ橋渡し役として引き続き取り組む。

  • 武藤 香織
    2018 年 28 巻 1 号 p. 129-139
    発行日: 2018/04/30
    公開日: 2018/05/24
    ジャーナル フリー

    近年,患者・市民参画(PPI)は医薬品開発の過程においても重要視されている。しかしながら,日本では医薬品開発における患者・市民参画政策は本格的に導入されていない。本稿では,既に倫理指針で参画が必須とされている,倫理審査委員会における「一般の立場の委員」の役割を再検証しつつ,今後の患者・市民参画政策の展望を述べる。「一般の立場の委員」の出席は現行の倫理指針において開催要件とされているが,期待される役割や機能の記述は不十分である。この状況は,約30年以上も不連続な議論を続けてきた米国での状況とも類似している。そこで,「一般の立場の委員」をめぐる議論を深めるために,生命倫理学者のレベッカ・ドレッサーが提案する「経験ある被験者」の包摂という考え方を紹介したい。また,「経験ある被験者」の可能性を探るため,著者は日本で過去5年以内に治験に参加した経験をもつ患者に対して調査を実施した。その結果,1,473名の回答者のうち70%近い回答者が,研究対象者への配慮や説明文書に対する意見を示す意欲を示していた。今後,研究過程のあらゆる段階に患者・市民参画が保証されるためにも,「一般の立場の委員」の役割についてより明確な議論を進めるとともに,「経験ある被験者」の養成などを進める必要があるのではないか。

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