医療と社会
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巻頭言
特集
地域包括ケアシステムの構築-総合診療専門医に期待される役割-
  • 前野 哲博
    2019 年 29 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2019/05/24
    公開日: 2019/06/05
    ジャーナル フリー
  • 中川 貴史
    2019 年 29 巻 1 号 p. 9-22
    発行日: 2019/05/24
    公開日: 2019/06/05
    ジャーナル フリー

    約3,000人の北海道寿都町は多大な財政負担を抱えた道立寿都病院を町立寿都診療所に移管し,家庭医,総合診療医を中心とする地域医療を展開している。その際,北海道家庭医療学センターと業務契約を行い,医師複数名に変更し,家庭医,総合診療医を中心とした包括的かつ継続的な家庭医療の実践,地域やコミュニティを対象とした様々な取り組みを行ってきた。

    結果として移管前は年間4~5億円であった赤字が,現在の寿都診療所においては1億円へ圧縮され,町の実質負担が3千万円弱となっている。国保被保険者中の町内医療機関受診率が2005(平成17)年度46.5%から2016(平成28)年度58.8%と年間約1%ずつ増加し続けている。休日時間外受診患者数が2005(平成17)1,011人から2016(平成28)年度772人へ,救急車搬入数が2005(平成17)169件から2016(平成28)年度76台へと減少した。

    これらは家庭医療,総合診療により住民と医療機関との信頼関係が構築されてきた結果と考えられる。家庭医,総合診療医の増員,ならびに循環型地域医療モデルの拡充により持続可能な地域医療達成の可能性がある。それらの取り組みを支えていくために総合診療専門医制度を定着,発展させていくこと,さらには政策的な後押しも重要である。

  • 本村 和久
    2019 年 29 巻 1 号 p. 23-32
    発行日: 2019/05/24
    公開日: 2019/06/05
    ジャーナル フリー

    沖縄県は39の有人離島があり,宮古島と石垣島,久米島にはそれぞれ県立病院や公立病院が設置され,16島に県立診療所,4島に町村立診療所が設置されている。16の県立診療所と2つの町村立診療所においては,医師の配置は1人だけである。16の県立診療所医師のほとんどは,沖縄県立中部病院や沖縄県立南部医療センター・こども医療センターの後期研修プログラムの一環として赴任している。

    現在の医師養成が可能となっているのは,先人の離島医療に対する尽力があってこそと考えている。沖縄の近代医療史を振り返りながら,第二次世界大戦,沖縄戦で大きな被害を受けた沖縄の医療がどのように立ち上がってきたのかを考察し,その中で離島の医療を守ることが重視されてきた現状を報告する。沖縄戦後,米国統治下の厳しい医師不足,医療事情の中で,公衆衛生看護婦や医介輔などの医療職が沖縄の離島医療を支えてきた。医師養成を行い,離島の多い沖縄の医療を支える拠点病院としてスタートした沖縄県立中部病院では,教育システムを作り上げて人材の養成確保を図り,代診や遠隔医療などの支援体制を充実させてきた。派遣された医師は,離島という特殊環境下において,島民の医療を守り,地域包括ケアを実践している。

  • 大島 民旗
    2019 年 29 巻 1 号 p. 33-44
    発行日: 2019/05/24
    公開日: 2019/06/05
    ジャーナル フリー

    日本プライマリ・ケア連合学会認定医・指導医である著者が都市部の中規模病院の施設長になり,その後取り組んできた内容を紹介する。

    地域の連携病院として,症状に関わらず診療する総合外来を開設し,かかりやすさを追求した結果,受診患者件数の増加をもたらしている。また「高齢者診療に強い病院」を病院の方針に掲げ,高齢者委員会を開催し,「ユマニチュード」の普及,せん妄の予防介入,ポリファーマシーに対する介入,アドバンス・ケア・プラニングの普及に取り組んだ。その結果,高齢入院患者のせん妄発生率の低下(14%→9%)を達成することができた。

    さらにWHO(世界保健機関)の提唱するHPH(ヘルス・プロモーティング・ホスピタル&ヘルス・サービス)ネットワークに加盟し,地域住民のヘルスプロモーションを目的に,スクエアステップの実施,小学校での防煙教室の開催などを行った。

    総合診療医がスタッフ・管理者となることで,外来・入院ともより幅広い,医療の提供のみならずケアも意識した活動を行うことができ,地域の健康増進活動を含め,地域包括ケア時代に求められる中小規模病院の役割を推進することが可能となる。

  • 北村 俊晴, 葛西 龍樹, 菅家 智史, 中村 光輝, 若山 隆, 森 冬人
    2019 年 29 巻 1 号 p. 45-58
    発行日: 2019/05/24
    公開日: 2019/06/05
    ジャーナル フリー

    我が国の地域包括ケアシステムは,いまだ認知症高齢者の在宅ケアのニーズに焦点を当てている段階だが,すべての年齢層の地域住民の,すべての健康ニーズの,すべての種類のケアを対象とするサービス提供体制を地域の実情と課題に応じて調整する取り組みが,今後目指すべき進化型地域包括ケアシステムであろう。これは質の高いプライマリ・ヘルス・ケア(PHC)の整備に他ならず,アルマ・アタ宣言40周年の2018年10月に採択されたアスタナ宣言でも,ユニバーサル・ヘルス・カバレッジと持続可能な開発目標達成のために必須のものとして強調されている。本稿では,2006年3月の設立から現在までの13年間に福島県立医科大学医学部地域・家庭医療学講座が実施した多彩な取り組みのプロセスとアウトカムを紹介する。取り組みには,県内6ヵ所の地域にある診療所と病院に立ち上げた家庭医・総合診療専門医の育成拠点での行政および多職種との連携,災害時の対応,PHCを担う人材を育成する卒前卒後一貫した教育,ホームステイ型医学教育研修プログラム,メンタルヘルスでの指導医の質向上プロジェクト,修学資金制度およびへき地での医師のキャリア形成,そして海外とのベンチマーキングが含まれる。当講座はこれからも,PHCの専門性と家庭医療学の原理を十分に理解して実践できる専門指導医群を育成し,彼らのリーダーシップでPHCの整備を広域で進めていけるように継続して支援をしていきたい。

  • 松下 明
    2019 年 29 巻 1 号 p. 59-70
    発行日: 2019/05/24
    公開日: 2019/06/05
    ジャーナル フリー

    米国での家庭医療専門医を取得後に2001(平成13)年から岡山県北,奈義町での診療を開始し,地域での家庭医療の実践と家庭医療・総合診療専攻医育成に取り組んできた。また,医師だけでなく地域で働く看護師や薬剤師の育成にも取り組み,一定の成果を上げている。

    家庭医療看護師育成は日本プライマリ・ケア連合学会のプライマリ・ケア看護師の認定制度につながるモデルとなり,家庭医療薬剤師レジデンシーは日本プライマリ・ケア連合学会の研修制度の現場での教育モデルになり得る取り組みである。家庭医療・総合診療専門医教育とプライマリ・ケア領域の看護師・薬剤師教育はIPEの視点で共有できる教育リソースがあり,全国に約400ある専門研修プログラムとのリンクが望まれる。

    奈義ファミリークリニックでの,18年間の取り組みを振り返ることで,家庭医が地域に及ぼす影響を,地域で新たな役割を担う人材育成の面から検証したい。

  • 横谷 省治
    2019 年 29 巻 1 号 p. 71-84
    発行日: 2019/05/24
    公開日: 2019/06/05
    ジャーナル フリー

    地域貢献は教育,研究と並ぶ大学の使命である。医学部特有の地域貢献には地域医療への関与がある。これからの地域医療は地域包括ケアシステムの構築が最重要課題であり,人々の生活とは離れた存在に見える医学部も,近年は地域包括ケアに貢献する素地が作られつつある。中でも総合診療部門は地域包括ケアに最も適する。

    医学部・大学病院は卒前教育や臨床研修医の教育の場として地域を必要としている。また総合診療部門は総合診療医の養成のために地域の教育拠点が必須である。一方,地域医療機関では医師が足りず教育に割く人材や時間に乏しいのが現状である。これらを結びつけるのが地域からの出資による大学-地域連携の仕組みである。

    筑波大学総合診療科は,全国に先駆けて地域医療教育ステーションという,総合診療医を教員として地域医療機関に派遣し教育を行う仕組みを構築した。派遣された総合診療医は地域包括ケアシステムの様々な部分に貢献でき,そのほとんどが教育・研究に結びつくことで,この仕組みが持続的に発展する好循環が生み出されている。

    出資について,自治体の立場からは直接的な市民サービスにならない部分,地域医療機関の立場からは診療報酬に繋がらない部分が少なからずあることが障壁となる。地域で活躍する医師を地域で育てるという理念で教育へ投資することについて,大学,自治体,住民,地域医療機関の共通理解を得るのが,この仕組みの実現のための要である。

  • 洪 英在
    2019 年 29 巻 1 号 p. 85-96
    発行日: 2019/05/24
    公開日: 2019/06/05
    ジャーナル フリー

    当院は70年を超える歴史を持つ,過疎地に立地している県立の小病院である。臓器別専門科によるミニ総合病院から,2007(平成19)年に家庭医療科の単科病院になって以降,地域包括ケアシステムの中心としての活動が活発になった。家庭医は地域指向の医師が多いために「継続性」が担保され,多職種と協調する「協調性」があるからこそ,多職種連携,地域住民を巻き込んだ形になり,また,地域のニーズに合わせて自ら研鑽を続ける「責任性」があるからこそ,独りよがりではない地域のニーズに合わせたシステム構築ができている。過疎地に立地しているからこそ,勤務する医師はより一層地域を意識することができるようになり,多職種の意見を聞くことができるようになる。また,小病院ということで,多職種が顔の見える関係性にあり連携がスムーズで,地域活動を行う業務分担も容易となり,診療所や大病院などとも違った形で地域包括ケアの中心になりえた理由となっている。この包括ケアシステムは今後,「地域ケアとしての包括ケア」「地域づくりとしての包括ケア」「世代間の継続性を意識した包括ケア」と広がりを持ち,今後も発展,展開を続けるであろう。各地域に総合診療科を主とする小病院を整備し,その小病院を中心に包括ケアシステムを構築していくことが,地域差のない,質が確保された形になると思われる。一つの包括ケアシステム発展のモデルになるであろう。

  • 井階 友貴
    2019 年 29 巻 1 号 p. 97-106
    発行日: 2019/05/24
    公開日: 2019/06/05
    ジャーナル フリー

    未曾有の超高齢社会において,これからの地域包括ケアシステムは,医療者や行政関係者だけがいくら奮闘しても理想にはたどり着けず,住民や地域主体に解決していく必要がある。福井県高浜町では10年前から,地域医療を守り育てる住民有志団体「たかはま地域医療サポーターの会」による“住民主体の医療づくり”や,ソーシャルキャピタルと地域社会参加型研究を意識した“地域主体の健康のまちづくり”の取り組みが展開され,成果を残しつつある。いずれにおいても,住民-行政-医療が対等な協働関係を結び,住民の主体的な動きと行政・医療のきっかけづくり並びに活動支援とを調和させること,そして,刻一刻と変化する日本や地域の情勢を十分に考慮し,その条件に適する取り組みへと変化・発展させていくことが,これからの地域包括ケアシステム構築の鍵となるであろう。その中で総合診療医に求められる役割は大きく,ケアの協調性や地域志向アプローチなどの専門性を存分に生かし,地域の発展を促すキープレーヤーの1人となる。

  • 松下 綾
    2019 年 29 巻 1 号 p. 107-118
    発行日: 2019/05/24
    公開日: 2019/06/05
    ジャーナル フリー

    少子高齢化が進み,医療需要の増大やそれに伴う医師不足が顕著化する我が国では,多職種が協働する医療で地域医療を支えることが求められている。最近では,個々の医療従事者の業務負担を最適化しつつ,医療の質を確保する方法の一つとして,これまでのチーム医療を発展させる形でタスクシフティング(業務の移管)/タスクシェアリング(業務の共同化)を有効活用すべきという考え方が広まってきている。このような状況の中,地域の薬剤師は住民から症状を聞き適切な対応を提案できること,処方箋に基づく調剤をした際に,必要に応じて患者の体調変化などの情報を収集し,医師に情報提供することなどで,地域包括ケアに加わることが新たな役割の一つとして求められている。

    これを実現するには地域の住民から症状を訴えられた時に病歴情報を収集するスキルが薬剤師にも必要と考えられるが,薬剤師にはこのスキルが不足していると指摘されている。

    そこで我々は,薬剤師向けの臨床推論,行動変容,コミュニケーション技法などの教育プログラムの開発と検証を行った。また,薬剤師が現場で患者から病歴聴取情報を収集することを支援するために,医師と薬剤師の協働の下,病歴情報の収集を補助するツールの開発を行った。

    これらを通して,地域包括ケアにおいて,医薬品に限らず健康問題全般のサポート機能を発揮できる「かかりつけ薬剤師」の養成に取り組んでいる。

    今後も医療需要は増大すると見込まれており,このような状況の中で地域医療を維持していくには従来の医薬の職域を超えた連携業務を担うことができる「かかりつけ薬剤師」が必須であると考えている。

研究論文
  • 周 燕飛
    2019 年 29 巻 1 号 p. 119-134
    発行日: 2019/05/24
    公開日: 2019/06/05
    [早期公開] 公開日: 2019/04/12
    ジャーナル フリー

    本研究は,母親による児童虐待の発生要因について,子育て世帯に対する大規模調査データを用いて分析を行った。その結果,児童虐待が発生する背景には,母親の病理的要因のみならず,経済環境と社会環境も影響していることが分かった。具体的には,母親が健康不良,うつ傾向,DV被害者といった病理的特徴を持つ場合や,貧困など経済状況の厳しい場合,周囲から十分な育児支援を得られない場合に,虐待確率が高い。

    いずれの種別の児童虐待についても,健康不良,メンタルヘルスの問題,未成年期の虐待経験など,母親自身の病理的要因の影響が確認される。一方,経済環境と社会環境の影響は,虐待の種別により若干の違いが見られる。「身体的虐待」は,貧困家庭というよりも,多子家庭で生じやすい。「育児放棄」は,低出生体重児のいる家庭やひとり親家庭で発生する確率が比較的高い。

  • 木戸 久美子, 藤田 久美
    2019 年 29 巻 1 号 p. 135-154
    発行日: 2019/05/24
    公開日: 2019/06/05
    [早期公開] 公開日: 2019/04/12
    ジャーナル フリー

    本研究では,幼児期から学齢期にある発達障害児および発達障害が疑われる児の育児上の気がかりと,母親の精神面の健康度によってその気がかりに特徴があるのかを質的に検討することを目的とした。小児科発達外来を受診した発達障害児および発達障害が疑われる子どもの母親25人を対象とした。対象者には,The Center for Epidemiologic Studies Depression Scale(以下CES-D)を用いて抑鬱傾向調査と発達障害児の育児に関して半構造化面接を行った。質的データは,Framework methodsを用い,量的データはEZRを用いて分析を行った。対象者のCES-D平均値は15.9(±10.2)であり,CES-Dの「鬱あり」のカットオフ値である16に近い点数であった。また,CES-D平均値の結果から「鬱あり」の範疇にあったのは11人(44%)で本邦におけるうつ病生涯有病率3~7%(厚生労働省)よりも高い発症率であることがわかった。今一番気がかりなこととして,CES-D正常値群の母親,抑鬱群の母親の双方において将来への不安が語られていた。抑鬱群の母親では,子どもの異性への性的関心が性犯罪に結びつくことを懸念していること,行き場のないストレスを抱え家族や子どもとの関係に影響を与えていることがわかった。母親の精神面の健康状態は,子どもの問題行動や育児を通してのストレスへの主観的な感じ方が影響している可能性が考えられた。

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