本研究は,難病対策要綱から難病法までの間の,難病医療費助成に関する議論の傾向と推移の整理を目的とする。難病法制定に向けた2010年代の議論は政府審議会等の議事録を時系列に沿って分析した。難病対策要綱制定から2010年までの議論は,国会会議録を分析対象とし,年単位での難病の語の出現頻度と主な議題から分析対象年を選定したうえで,計量テキスト分析の手法を活用した。
整理の結果,次の3点が示された。①医療・福祉・介護制度の進展の影響を受けながら,難病の概念の重点が原因不明から希少性へと変化している。②助成を基礎付ける根拠は,公による救済から,疾患の困難性および発症の普遍性へと変化している。③助成の法律上の根拠が他制度との均衡から成立に至ったため,助成の要件についても他制度との均衡および公平性が要請され,客観的要件の策定が求められてきている。
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