医療と社会
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4 巻, 1 号
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  • わが国における医療機関選択の考察
    知野 哲朗
    1994 年 4 巻 1 号 p. 1-25
    発行日: 1994/11/05
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
  • 山田 武
    1994 年 4 巻 1 号 p. 114-138
    発行日: 1994/11/05
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    わが国の医療サービス市場は診療報酬制度によって価格が規制されている。そのため,一般には市場は均衡しない。このような市場を分析するためには,不均衡を考慮した計量モデルを適用すべきである。本研究では高齢者の歯科サービスの市場について儒要関数と供給関数を均衡モデルと不均衡モデルの両方について推定し,次の結果をえた。
    (1)高齢者の歯科サービス市場は,ほとんどの都道府県で超過供給である。(2)均衡モデルでは供給者誘発需要仮説は支持されるが,不均衡モヂルでは供給者誘発需要仮説は棄却される。高齢者の歯科サービス市場は不均衡で,供給者誘発需要は棄却されるから,歯科診療所の開設制限の参入制限や歯科医師の養成抑制などの政策は必要ない。(3)需給を一致させるためには,全国一律の診療報酬の改定ではなく,都道府県ごとにことなる診療報酬が必要となる。ただし,地域ごとに格差を設ける場合にも注意が必要である。超過供給のある地域に高い診療報酬をつければ,生産量は増加するからかえって超過供給は拡大する。市場の構造を把握しないままで地域格差を導入すれば,非効率的な資源配分が加速される恐れがある。
  • 費用は削減できるか
    安川 文朗
    1994 年 4 巻 1 号 p. 139-170
    発行日: 1994/11/05
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本稿は,近年多くの病院に普及している「委託」について,特にその費用削減効集に関する意味づけと検証を行ったものである。
    本稿ではまず,現在入手可能なデータから,委託の実態を概観した。そこでは,委託比率の高い業種が診療報酬の裏付けのある業種であること,また都市部での委託率の高さ,病院規模と委託率の比例関係などが明らかになったが,規模と委託率の関係など,経済学の通説とは異なるものであった。
    次に,委託の費用効果に着目し,病院にとっての「費用」を3つの指標,すなわち1)単位当たりコストの低減,2)取引費用の削減,3)費用効率的な技術導入,に分け,それぞれについてその発生メカニズムと委託の意味を考えた。ここでは委託が統合的な在庫管理システムとして,必要人員などを自己决定できる疑似独立部門として,さらに人材確保の安定化要因として,機能していく可能性が示唆された。
    最後に,各費用に対応する公表費用データを用いて,病院総費用および委託費を被説明変数とした重回帰分析を行って,総費用に対する各費用の影響度,委託費の変動が他の費用に与える影響について検証した。結果は,材料費に関してはいずれも有意に期待どおりの符号が得られ,マテリアルな部分への削減効果が確認できたが,給与に関しては符号は期待どおりでも有意さにおいて,また設備費や賃貸料などは,符号も統計的有意さもともに期待に反するものであった。さらに,研修費,福祉厚生費などは,有意に正の結果が得られ,委託の費用効果は否定的であった。
  • 角田 由佳
    1994 年 4 巻 1 号 p. 171-197
    発行日: 1994/11/05
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本稿は,看護婦の労働市場構造に関する先行研究をふまえ,不完全市場仮説,なかでも需要独占・寡占市場仮説の日本への適用可能性に関し,ファクト・ファインディングを通じて検討するものである。そこでは,看護婦の多くが既婚の女子労働者であり,その労働供給は1次稼得者である配偶者の所得,幼少期の子供の有無と人数にマイナスの影響を受ける可能性のあることが認められている。加えて,配偶者の就業地に制約され自らの就業移動を困難とすることから,地域的な労働市場が成立しやすく,一方で需要者である病院が都市部を除いて地域に少数であるために,市場は概して需独占・寡占構造になると推測された。これは,看護婦が直面する賃金率,内部収益率に病院間で格差が存在すること,ならびに,内部収益率格差に縮小傾向がみられないことからも裏づけちれる。また「看護基準制度」は,病院収入の変化によって看護婦の労働需要に影響を与えるのであり,需要独占・寡占モデル自体の変更を要したり,日本への適用可能性を妨げるものではない。上述の賃金率・内部収益率格差,そして病院の看護婦採用経路から,日本の看護労働市場は,看護婦養成校と関連のある病院が労働需要者になっている階層と,関連のない病院が需要者である階層に大きく分かれていることを提示した。
  • 有望分野と日米比較
    印南 一路
    1994 年 4 巻 1 号 p. 26-61
    発行日: 1994/11/05
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    医藥品産業においては研究開発が極めて重要である。特に国際化を進める日本の製薬企業にとっては,研究開発の有効管理が生存条件となっている。一般論としては,有望な研究開発分野に経営資源を集中投下することが望まい。しかし,具体的にどの冶療分野が有望であるかを調べた研究は,国内外にほとんど存在しない。本研究は(1)研究開発に関わるリスクを科学的不確実性と経済的リスクに二分し(研究開発マトリックス),(2)予め選定した81の冶療分野について,日米の研究開発担当者に,その科学的不確実性と経済的リスクをそれぞれ評価してもらい,結果を分析したものである。金体として科学的不確実性が高いほど経済的リスクは抵く,研究開発分野としては有望であること,科学的不確実性に関する評価については日米で驚くほどの類似性が認められたこと,冶療カテゴリーとしてはガンが有望であるが,冶療分野としては中枢神経系に特に有望な分野ぶ多いこと等が発見された。本研究は,過去に類似研究がないという新規性・画期性がある反面,(特に国の)データ收集に起因する統計的処理に一部困難がある。最後に,実務面での示唆と今後の斑究課題を検討した。
  • 企業価値,会計的利益,特許による評価
    姉川 知史
    1994 年 4 巻 1 号 p. 62-90
    発行日: 1994/11/05
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    この論文は欧米の代表的な製薬企業を対象にしてその研究開発投資の効率性を検討した。製薬企業が使用する資本を,土地,設備,装置等の通常の物的資本,研究開発資木(R&D資本),知識ストックの三種類に区別してそれぞれの価値と企業価値の間の関係を明らかにした。第一の方法ではR&D資本の価値と利益率を推定した。この結果, 1973年以降, 1978年まではR & D 資本の価値,利益率がともに通常の物的資本より高かったことが示された。ところが1980年代になると,キャッシュ・フローで測ったR&D資本の利益率は依然として高いものの,R&D資本の策場価値は1979~81年,1982~84年にゼロになり,1985~87銀に再び正の値となった。第二の方法では,特許データを利用して知識ストックの生産性を計測し, 研究投資の効率性を直接に計測した。この結果, 研究投資の効率性の1980年代の低下傾向が顕著に示されている。しかもこれは単なる特許数の生産性低下ではなく,より科学的に重要な特許における生産性の低下として表われた。他方,研究開発のアウトプットとしての知識ストックの価値は上昇していることが示された。これは知識ストックの生産性が低下しているため,企業が企業価値を最大化するという合理的な判断のもとで投資活動を行っているかぎり,そのアウトプットの価値が上昇しなければならないことを意味する。特許一単位,相対citation数一単位当たりのR&D投資額を費用として仮定すると,1982年以降知識ストックは平均してその1から2倍の価値が必要になることが判明した。
  • マクロのアプローチ
    矢野 聡
    1994 年 4 巻 1 号 p. 91-113
    発行日: 1994/11/05
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    わが国においては, 医療・福祉資源の有効的活用の手法の1つとして,ソーシャルサポ一トネットワークの在り方に関する研究がなされはじめてきた。筆者は,医療・介護・福祉サービスにまたがるこれらの領域を,先行するアメリカの分析手法およびフィールドに求め,高齢者ケア包括化の一環として研究分析を行ってきた。本研究はその一部である。
    アメリカにおいてのサービスネットワークメニューの豊富さは,圧倒的な民間非営利組織によるボランティア活動を基本にしている,との認識は,わが国においてもよく知られているところであるが,このメカニズムが従来十分に解明されていなかった。そのため,公的サービスの貧困や,過度の非介入性をその根拠にするものが多く見られた。
    本研究の結果得られた結論によって,アメリカでは民間によるサービスメニューの豊富さが,公的サービスの示す連携の枠組みと財源から保障されていることが明らかになった。これはわが国の公民のサービス供給に対するステロタイプな視点をくつがえすものであると同時に,今後の医療・介護・福祉サービスネットワークの在り方に示唆を与えるものである。
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