本稿は,近年多くの病院に普及している「委託」について,特にその費用削減効集に関する意味づけと検証を行ったものである。
本稿ではまず,現在入手可能なデータから,委託の実態を概観した。そこでは,委託比率の高い業種が診療報酬の裏付けのある業種であること,また都市部での委託率の高さ,病院規模と委託率の比例関係などが明らかになったが,規模と委託率の関係など,経済学の通説とは異なるものであった。
次に,委託の費用効果に着目し,病院にとっての「費用」を3つの指標,すなわち1)単位当たりコストの低減,2)取引費用の削減,3)費用効率的な技術導入,に分け,それぞれについてその発生メカニズムと委託の意味を考えた。ここでは委託が統合的な在庫管理システムとして,必要人員などを自己决定できる疑似独立部門として,さらに人材確保の安定化要因として,機能していく可能性が示唆された。
最後に,各費用に対応する公表費用データを用いて,病院総費用および委託費を被説明変数とした重回帰分析を行って,総費用に対する各費用の影響度,委託費の変動が他の費用に与える影響について検証した。結果は,材料費に関してはいずれも有意に期待どおりの符号が得られ,マテリアルな部分への削減効果が確認できたが,給与に関しては符号は期待どおりでも有意さにおいて,また設備費や賃貸料などは,符号も統計的有意さもともに期待に反するものであった。さらに,研修費,福祉厚生費などは,有意に正の結果が得られ,委託の費用効果は否定的であった。
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