医療と社会
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5 巻 , 4 号
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  • 紀伊國 献三
    1996 年 5 巻 4 号 p. 1-12
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    平成7年度版厚生白書は医療を特集とし,同時に一般市民2,000人に対するアンケート調査を行った。その時,現在の医療に関する満足度調査では「満足」の割合は約50%,「やや不満」19%,「非常に不満」3%とされた。
    この満足度を上げることは医療提供者として当然の責務である。医療担当者は,まず技術水準を高めることにより医療の質を高める努力を行う。そのためには客観的な質の評価が必要であり,これについては「構造的」「過程的」「成果的」な評価が行われてきた。いわゆる第3者機能評価の考えである。と同時に,これら技術水準の高さによる医療の質は利用者の満足に直結するものではない。高い質の技術がどのように利用者に提供されたかが利用者の満足の高さをもたらすものである。注意しなければならないことは,提供者と利用者の間で高い質の医療について共通の理解点を求め,それが個々の医療の提供にあたって達成されていたかどうかの検討が必要である。
    アメリカ,イギリス,カナダでの検討によれば,たとえ総合的満足度は高くても,個々の行為については問題点が多くあることが指摘されている。共通の理解点について個々的な医療の提供にあたっての問題発見,およびその解決が組織的に行われなければ医療の質は高められない。また,医療の質の向上に努力する姿勢を社会はサポートしなければならない。
  • 島田 晴雄, 山田 武
    1996 年 5 巻 4 号 p. 13-25
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    この論文の目的は,わが国の医療システム,すなわち消費者である患者と供給者である医師と,その背景にある制度がかかえているいくつかの問題について,患者あるいは消費者の立場から経済学的に分析し,問題を提起することにある。一般の財やサービスの市場と同様に,医療サービス市場も需要者である患者と供給者である医師・医療機関が存在する。しかし,一般の財・サービスの市場とは異なり,医療サービスには情報の非対称性があるたあに,かならずしも効率的に医療サービスは供給されていない。また,制度もこのような問題を是正するような十分な働きをしていない。この論文を通じてわれわれは次の3点を強調する。まず第1は患者の利益の尊重である。患者と医師の間での診断や治療に関して情報の非対称性があるために,患者は弱い立場にある。そのために,医師によって患者の利益が侵害される可能性もある。残念ながらわが国ではこのような侵害を抑制するようなメカニズムは十分ではない。第2は情報の公開と共有である。医療サービスには情報の非対称性がっきまとう。患者は診断や治療に関する知識を持っていないから,医療サービスの選択にあたっては医師が提供する情報に頼らざるをえない。情報が十分に公開されないのであれば,患者は最適な選択をすることができない。したがって,医師は情報を開示し,患者は情報を共有した上で選択しなければならない。第3は医療資源の効率的活用である。情報の非対称性とさまざまな規制はインセンティブを歪めている。したがって,医療資源の効率的な配分が実現されるような制度を設計しなければならない。たとえば,情報の非対称性を是正するための仕組み,第三者による質の評価などがそれにあたる。
  • 木村 陽子
    1996 年 5 巻 4 号 p. 26-38
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    老人医療にかんする財政調整は,次の3つの要件を満たす財政調整が望ましい。第1に,被保険者や地域住民のニーズにあった効率的な医療(効率性)と制度間格差の是正(公平性)のバランスを図ることである。第2に,医療から介護ヘシフトを促進するものであること,第3に,老人医療費の増大を抑制するシステムであること,である。この3つの要件にてらしてわが国の老人医療の財政調整を考慮すると,次の問題点がうかびあがる。かかった医療費全体について保険者全体および公費で財政調整をするために,各保険者の責任が明確でない。これは医療費高騰の原因である。また,病院から介護施設に老人を移すと社会的コストは安くなっても,地方公共団体にはかえって負担が重くなる。これは,老人医療と老人介護では,市町村の負担割合が異なるからである。
    したがって, 将来的には, 老人医療と老人介護はサイフをひとつにし, 市町村を責任者として, 財政調整の対象もドイッの医療保険のように,標準的な医療費までとすることが望ましい。
  • 印南 一路
    1996 年 5 巻 4 号 p. 39-48
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    世界の医療政策は,アクセスの保障から,医療の効率化を図りつつ医療の質を向上させる方向へと変化してきている。日本も同様である。この時代に相応しいのは,財政政策主導の医療費抑制や,既得権益温存のための変化拒絶反応ではない。医療の質を科学的に,しかも患者からの視点を加えて,継続的に評価し,それを政策と経営に反映させることである。これを実現するためには,医療の技術評価ないし質の向上という観点から既存の政策を見直し再体系化すること,政策にプログラム・エバリュエーションを導入して継続的評価の対象にすること,民間セクターに質における競争と自浄努力を誘発する政策を導入することの必要性がある。これを「質における競争と継続的評価の時代」と表現したい。
    医療の質の評価は難しいという議論がある。難しいことや完全でないことは,それ自体は導入の試みの妨げにはならない。医療には経済を適用できないという議論が,40年前米国で,10年前日本で展開された。初めから完全なものはない。実践としての医学にはエラーが不可避であり,かつ致命的な場合もある。医療の質を高めるもっとも重要な理由は,防止可能なエラーを防ぐことである。不完全であることを理由に適用を拒否する企ては,地味だが,堅実な試行錯誤の前には無力である。
  • 姉川 知史
    1996 年 5 巻 4 号 p. 49-64
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    アメリカ合衆国特許の出願書類では特許対象の技術に密接に関連する先行特許と専門文献の引用がなされる。特許公告において開示されるこれらの引用情報を利用して,個々の企業の取得特許の質を測定する「特許影響力」,「科学関連性」,「技術サイクル・タイム」といった各種の指標を作成することができる。本研究ではアメリカ合衆国特許を対象とする特許指標のデータベースを利用して,先進国の代表的な製薬企業の基礎研究能力の国際比較を行った。
    第1に,当該特許が後続特許によって引用される頻度を表す「特許影響力指標」と「特許取得数」の積である「総技術力」指標によって,世界の製薬企業上位150社を順位づけた。第2に,特許取得者として位置づけた製薬企業の法人格の所在地によって,製薬企業を日本企業,アメリカ企業,ヨーロッパ企業に3分類し,それらの基礎研究能力の特徴を各種特許指標によって検討した。第3に,特許指標相互の関係を検討し,それぞれの特許指標が持つ情報内容を分析した。
    また製薬企業の国籍別にいくっかの事実が確認された。第1に,上位150社の「総技術力」に占める日本企業の「総技術力」の割合は全体の1割にすぎず,これは研究開発支出額に占める日本の割合を大きく下回ることが示された。日本企業の基礎研究能力は欧米企業の上位企業にはるかに及ないと言える。しかし,第2に日本企業の「特許影響力指標」はサンプル企業の平均値であるば1前後であり,これはアメリカの上位企業と比較すると低いものの,ヨーロッパ企業とは遜色がないことが示された。したがって,日本企業の「総技術力」の低さでは,個々の「特許影響力指標」の小ささよりも「特許取得数」が少ないという量の問題がより影響していることが示された。第3に,特許出願における専門誌の引用数で見た当該特許の「科学関連性」はアメリカ企業が高く,日本企業は著しく低いことが示された。第4に,特許出願において引用される先行特許の成立後の平均経過期間によって,当該特許の「技術サイクル・タイム」を測定すると,日本企業は欧米企業と同水準にあることが示された。すなわち日本企業は欧米企業に伍して,最近の特許動向を把握した迅速な特許取得を行っている。第5に,アメリカの公的研究機関や大学,小規模企業の「特許影響力指標」,「総技術力」,「科学関連性」の大きいことが示された。このような一群の研究主体は日本には見られない。
    一般に指摘される日本の製薬産業の基礎研究の能力の弱さをその産業組織によって表現すると,第1には多数の特許取得を行う欧米の上位企業のような大規模研究機関が存在しないこと,第2には「特許取得数」では小規模であるが,「特許影響力指標」と「科学関連性」の大きいアメリカの一群の研究機関のような存在が日本にはないことで要約される。
    以上の試論の結果,特許引用情報を加味した各種の特許指標によって,製薬企業の基礎研究能力が適切に分析されることが示された。
  • 大森 正博
    1996 年 5 巻 4 号 p. 65-84
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    現在,世界の多くの国々で,医療システムとして「プライマリーケアシステム」が採用されている。しかし,そのメリットとデメリットについてはそれほど明らかにされていないように思われる。本論文では,医療サービスの持つ「情報」の性質に注目して,「プライマリーケアシステム」が実際にどのような機能を果たすのか,そのメリットとデメリットは何かについて検討する。最初に第2節では,医療サービスの情報の持つ性質について検討し,それが医療サービス市場にどのような問題を生じさせるかを考える。第3節では,「プライマリーケアシステム」の代表的な定義に触れながら,その本質的な性質を抽出する。そして,次にそのプライマリーケアシステムの本質的な性質が,医療サービスの情報の性質が医療サービス市場にもたらす問題をどのように解決するかを明らかにし,残された問題は何かについて検討する。4節では結論が述べられる。
  • 村田 勝敬, 荒記 俊一, 今中 雄一, 岡島 史佳
    1996 年 5 巻 4 号 p. 85-96
    発行日: 1996/03/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    看護婦の就業満足度およびマスメディアの就業動機に及ぼす影響を明らかにするために,関東地方にある2総合病院に勤務する看護婦133名を対象に自記式質問紙調査を行った。以下の結果が得られた。
    1.看護婦の就業満足度に影響する要因(カッコ内は満足率)は「看護業務」(21%),「給料」(26%),「看護管理」(31%),「医師-看護婦間の関係」(33%),「専門職としての自律」(50%),「看護婦相互の影響」(57%),「職業的地位」(60%)の7つであり,米国での同様の調査報告と比べ低率であった。
    2.看護婦の就業満足度は年齢層により異なっていた。30~44歳では「看護婦相互の影響」,「看護管理」,「医師-看護婦間の関係」の3項目で満足度がもっとも低かった。45歳以上では「給料」,「職業的地位」,「医師-看護婦間の関係」の満足度が他の年齢層と比べ有意に高かった。
    3.就業満足に有意に関連する要因は「職業的地位」,「専門職としての自律」であった。また,就業継続意志に有意に関連したのは「職業的地位」と「医師-看護婦間の関係」であった。
    4.看護職の選択は,大半が「自分で積極的に選択」したと回答した。看護職の選択にマスコミ(特にテレビ)の描く看護婦像が影響したと回答したのは全体で2割弱であったが,20~29歳では43%と高率であった。
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