医療と社会
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6 巻 , 1 号
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  • 田中 滋
    1996 年 6 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1996/05/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    今回,『医療と社会』誌にとって初めて,特集テーマ「高齢者の医療とケア」を事前に設定し,テーマに合わせて論文を募る方式を試みた。そして本号には編集責任者の呼びかけに応じた,7編の価値ある論文が掲載されている。各論文の執筆者は,それぞれが高齢者医療・ケア分野において,積極的に仕事を行ってきた優れた実務家である。かつまた,現実社会の観察から得た見識をもとに,一般化して記述する能力をもった研究者でもある。
  • 岡本 祐三
    1996 年 6 巻 1 号 p. 6-20
    発行日: 1996/05/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    戦後最大の社会福祉改革のひとつといわれる公的介護保険制度では,「ケア・マネジメント」という医療および介護を中心とした福祉サービス給付の新しい手法が導入されようとしている。
    これは適切かつ公正な福祉サービスの供給システムを目指して,クライアントの自立支援のために新しい援助の手法を制度的に確立しようとするものである。ある意味では,この福祉の世界でのインフォームドコンセントの手法(理念といってもよい)が,どこまであるべき方向に具体化されるかによって,介護保険が本当の「市民福祉」の制度となるかどうかの成否が決まるといえよう。第1部では「ケア・マネジメント」が導入された背景と,公的介護保険制度の関連について述べ,そのための2種類の客観的手法が現在開発されつつあるが,第2部ではそれらの手法の問題点について検討する。
  • 外山 義
    1996 年 6 巻 1 号 p. 21-36
    発行日: 1996/05/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    わが国の高齢者福祉・保健医療施設は,社会的要請に応えるべく,時代を追って整えられてきたものである。今日,急速な高齢化の進行の中で,相互の仕組みの整合性,連携性が強く求められるようになってきている。本論文は,こうしたケア施設の個々のあるいは相互間の整合性の問題や,課題の概念整理を行い,現在検討されている社会保障制度導入後の施設ケアのあり方を考える上での資料を提供しようとするものである。
  • 岡本 悦司
    1996 年 6 巻 1 号 p. 37-48
    発行日: 1996/05/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    白内障手術は高齢者に頻繁に実施される医療行為であるが,緊急手術ではなく選択的手術であり,救命ではなく専ら生活の質を高めることを目的に行われる点で,一般の医療行為と異なり,古典的な医療経済の原理に従わず,自己負担等経済的な因子により実施率が大いに左右される特徴がある。92年の点数改訂で眼内レンズが保険適用され,前後の年で手術の「買い控え」と「買い走り」が観察された。しかし長期的な累積手術件数が一気に増加したとは考えられず,相当数の老人が高い自己負担のため手術を受けられないでいる,という主張に疑問をなげかける。選択的かつ価格弾性の高い治療行為の保険適用にあたっては実証に基づく慎重な検討が求められる。
  • 岡本 茂雄
    1996 年 6 巻 1 号 p. 49-59
    発行日: 1996/05/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    公的介護保険の成立によって,はたして本当に魅力ある市場を創出されるのだろうか。また,民間営利企業がその市場において成長するためにはなにをしなければならないのか,民間営利企業はどのような役割を期待されているのかを検証することとした。在宅介護市場は,次のような特徴をもつ。1)商品特性では機能が複合されないと効果が出ない,2)顧客特性では情報からの隔離,3)市場規模では境界の不明,4)成長性では極めて有望,5)強力な競合がある,の特徴をもつ。この市場では,顧客ニーズにあった新商品サービスの開発は極めて大きな市場シェアを確保できる可能性をもつことになる。このため,顧客志向が強く開発力もある有力な企業にとっては有望な市場となる。しかし,このような優良な企業を創出するためには,ケア・マネジメントを権利構造の温床とせず,すべての供給主体に解放する必要がある。民間営利企業は,積極的な新商品サービスの開発を行いつつ,商品サービスの供給面においては高レベルのケア・プラン作成機能を併せ持つ必要がある。
  • 阿部 信子
    1996 年 6 巻 1 号 p. 60-79
    発行日: 1996/05/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    高齢化の進展につれ,高齢者ケア・ニーズは質的な多様化を伴いながら量的に急拡大していく。この高齢者ケア・ニーズに的確に対応する上で,公私両セクターの役割分担と連携が求められる。
    しかしながら,高齢者ケア・サービスを供給する新しい産業,すなわちシルバーサービスは,現状,揺籃期を脱していない。それは,1.シルバーサービスに対する社会の認知度が必ずしも十分ではないこと,2.一部のシルバーサービスは,措置費によって提供される極めて安価な公的サービスと競合していること,3.事業者の大部分が中小零細企業であり経営資源が脆弱であること,などに起因している。
    シルバーサービスの発展は,民間企業が創意と工夫を発揮し,利用者に選択される良質で多様なサービスを提供することが基本である。しかしながら,そうした事業展開を支援する,体系的・戦略的な振興策の実施も求められる。シルバーサービス市場の将来像を示し,新規参入促進のシグナルを発するとともに,現在,市場拡大の阻害要因となっている制度環境等を整備することが必要である。
    本稿は,平成7年3月に発表された「シルバーサービス振興ビジョン」をベースとして,在宅サービスの推計ニーズ量およびサービスに対する利用意向度などを踏まえたシルバーサービス振興の課題をまとめたものである。前半においては,高齢者ケアにかかわるサービス・ニーズを推計し,新ゴールドプランによる公的サービスがそのニーズをどの程度満たすのか,また民間部門として見込むことのできる市場規模がどの程度であるのかを推計した。後半においては,公的介護保険制度の導入によりもたらされる高齢者ケア・サービスの価格(利用者負担額)低下が,どの程度需要を顕在化させるかを推計した。
    膨大な高齢者ケア・ニーズに対応していくためには,シルバーサービスの参画が欠かせない。公的介護保険制度の下で,公私両セクターの競争条件を同一化し,シルバーサービスに公正な競争の機会を与えることが期待される。
  • 中山 博文, Tom Skyhoey Olsen, Alastair John Douglas Macdonald
    1996 年 6 巻 1 号 p. 80-92
    発行日: 1996/05/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    デンマークおよび英国における痴呆性老人に対する在宅ケアの在り方について現状分析し,それぞれの問題点について検討した。
    両国において痴呆性老人に対する在宅ケア供給体制は基本的には共通しており,痴呆が軽度で問題行動がない場合は自宅に居住し,一般的在宅ケアを受け,重症化あるいは不安,幻覚,譫妄,興奮等の問題行動が生じた場合,老年精神科的介入を行い,特別養護老人ホームへの入居,病院への長期入院,老年精神科地域ケアによる在宅管理を受ける,というものである。デンマークでも英国でも老年科の積極的介入は認められなかった。
    このような両国における痴呆性老人在宅ケア供給体制にいくつかの問題点が認められた。
    1)痴呆ケアと一般在宅ケアの基本的相違:一般在宅ケアは日常生活動作の介護に重点を置いており基本的には患者によってそれまで遂行されていた機能を在宅ケアが代行するものである。しかし,痴呆ケアに対する近代的アプローチは患者の自立を最大限引き出すことであり,基本姿勢に根本的相違がある。
    2)痴呆の診断,予後評価の重要性:痴呆の中に治療により改善するものがあることを考えると,専門家による対応を整備し,早期発見に適した立場にいる一般在宅ケア従事者を教育することが重要である。
    3)医療-福祉連携としての在宅痴呆ケア:デンマークにおいても英国においても,在宅ケアを担当している社会的サービス部門と老年精神科が属する保健部門には隔たりがあり,その背景に行政的,文化的,歴史的相違の存在が示唆され,今後わが国における連携の実態や問題点の検討が必要となるであろう。
    4)家族に対する支援:初期の痴呆性老人に対する在宅ケアにおいて家族の果たす役割は大きく,公的な在宅ケアと家族による介護の協調が重要である。また,家族にとっての痴呆老人の介護負担は大きく,その軽減をはかる必要がある。
  • 藤野 次雄, 長尾 演雄, 小玉 亮子
    1996 年 6 巻 1 号 p. 93-105
    発行日: 1996/05/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    1994年8月,国際エイズ会議が横浜で開催された。その前後2回「エイズに関する横浜市民意識調査」をわれわれは実施した。この論文は,その2つのアンケート調査の結果にみられる横浜市民特に高齢者のエイズに関する知識や意識・態度の現状から,エイズとともに生きる“共生意識や態度”の形成課題に,つぎのような議論と順序で接近したものである。1)市民はエイズの問題を自分の問題として捉えているのか。2)エイズ感染予防のための,市民の正しい“知識”とはどういうものだろうか。3)エイズに感染した時,どのように生きられる意識を市民は形成してきているのか。4)患者・感染者と一緒に生きる意識・態度はどのように形成されてきているのか,一層の形成にはどんな課題があるのか。
    2回のアンケート調査の比較や年齢階層と職業階層の比較検討から,つぎのような仮説を導き出してみた。(1)これまでのエイズに関する啓蒙活動は,エイズの爆発的な感染の心配からエイズ予防のための知識・情報の提供に熱心のあまり,予防のための“技術論”に偏りがちであった。そのことから,自分を“リスクグループ”だと考えていない高齢者や主婦層の関心に知識・情報の内容や形態になっていなかったのではないか,(2)エイズ予防のための市民の正しい知識とは“医学的専門知識”を単に身につけるということではない。普通の市民生活ではエイズはうつらないという確信がもてる知識と難病に苦しんでいる人々にどのように対応することが人間的であるのかという価値意識とで合成された“生活意識”とでも呼ばれるようなものが,それであろう。(3)エイズとともに生きる“社会”の実現には,若者にも高齢者にも,主婦にも学生にもというように,それぞれの社会層に乗り越えなければならない課題があった。それぞれの課題にフィットした啓蒙活動が,いま強く求められているように思われる。
  • 安川 文朗
    1996 年 6 巻 1 号 p. 106-117
    発行日: 1996/05/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,高齢化社会の進展において上昇を続ける地方自治体の老人福祉費について,その支出規模を決定する要因は何か,またわが国の近年の財政政策,特に国庫負担率の変更がどのような影響を与えたか(または与えなかったか)を検証することである。
    老人福祉費の決定要因には,人口高齢化のような人口構造の変化,また地域の福祉サービスに対する需要構造の変化といった外生要因と,自治体の歳入規模および国庫支出金,地方交付税等の国庫補助規模といった内生要因が考えられる。しかし一方で,地方政府の公共支出における増分主義の存在がいわれている。本稿ではこの増分主義の存在を考慮したDDWモデルによって,都道府県のマクロ財政データおよび埼玉,千葉両県の市レベルのミクロ財政データ,さらに老人福祉マップ数値表から老人在宅福祉サービスの実施データを用いて,老人福祉費決定の要因を分析した。
    結果は,都道府県レベルのマクロ・データからは,有意にわが国の老人福祉財政における増分主義的傾向の強さが確認できたが,埼玉,千葉の市データをみると,全国傾向にくらべその傾向はやや小さい。また,国庫負担率の大きな改訂がなされた1985年前後の2期に分けた推計では,国庫負担率削減が福祉財政の規模に一見プラスに作用しているように見えるが,地方交付税との関連は見い出せず,国庫負担削減が地方自治体の自主的財政決定を促したかどうか判断することはできない。
    一方,地域の福祉サービス需要との関係では,施設を基盤にしたショート・ステイサービスとの間に若干の関係性が見られるものの,ホームヘルプ・サービスは老人福祉費にほとんど影響を与えていない。
    これらのことから,わが国の老人福祉費決定には,全体として増分主義的メカニズムが働いており,一連の財政政策の改編による地方の分権的意思決定の助長という期待が,あまり結実していない可能性が示唆される。今後は,福祉ニーズに連動するような支出決定を促す,誘引的な財政メカニズムおよび補助金メカニズムを創出する必要がある。
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