1996年に500床以上の病床を有する大学病院以外の私的病院(以下,私的大病院)155病院を対象にして, 病院の形成過程とチェーン化・「保健・医療・福祉複合体」化の実態を調査し, 以下の結果を得た。
(1)私的大病院の開設者は,6割が医療法入,2割が公益法人である。
(2) 私的大病院は,総合病院と慢性病院(老人・精神)への「二極分化」が完了している。
(3) 私的大病院の開設時期は,病院の開設者と病床タイプにより異なる。特に,老人病院の半数は1980年以降開設された新しい病院である。
(4) 私的大病院は1980年代に急増した。精神病床主体の病院は,1950~1960年代には私的大病院総数の7割を占めていたが,1996年には5割に低下している。1959年には,現在500床以上の私的病院の2割が結核病床主体の病院であった。1959年以前に開設された私的大病院の,1959年と1996年の病床タイプは,「結核」を除いて,ほとんど変わらなかった。1970年に500床以上だった病院の1割(4病院)が,新設私立医科大学の設立母体となった。
(5) 私的大病院が病院開設後500床以上になるまでの平均年数は,全体では26年であるが,老人病院と病院チェーンの3番目以降の病院では10年である。
(6) 一般には,私的病院の多くは,診療所から発展したと思われているが,前身の診療所を有する私的大病院(グループ)は,4割弱にすぎない。特に,精神病床主体の病院では,単独病院,病院チェーンとも,この割合は2割にすぎない。
(7) 私的大病院開設グループでは,病院チェーン化が進んでおり,約半数は「広義」の病院チェーンであり,その6割が医療法人である。これら病院チェーンの平均病床総数は1,500床に達する。2,000床以上の巨大病院チェーンは全体で13存在し,そのうち11が500床以上の病院を開設している。
(8) 私的大病院開設グループでは,病院チェーンを中心に,保健・医療・福祉・教育分野への進出(「保健・医療・福祉複合体」化)も進んでいる。老人保健施設または特別養護老人ホームの開設率は全体で5割,病院チェーンでは6割である。看護・医療技術系・介護福祉士学校の開設率も全体では5割,病院チェーンでは7割である。
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