医療と社会
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7 巻 , 2 号
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  • 姉川 知史
    1997 年 7 巻 2 号 p. 1-35
    発行日: 1997/07/10
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本研究では製薬産業に対するR&D政策を対象にした経済学的分析を行い,次の課題に答える。第1の課題はR&Dを企業の投資活動として位置づけ,R&D投資と企業価値との間に成立する関係を一般的理論で示すことである。第2の課題はこの関係を利用して,各種のR&D政策手段を区別,分類し,それぞれの政策内容,作用,効果を検討することである。第3の課題は,実際に日本の製薬産業に対するR&D政策手段の現状を概説し,上記の理論から見たその問題を明示することである。この研究ではR&D政策を,補助政策,税制,競争政策・特許政策,M&A政策,薬価政策,新薬承認制度, 公的基礎研究に分類し, これらを理論的に分析して, 評価する。
    この研究の結果,次の点が明らかになった。第1は,日本の製薬産業に対する政策においてはR&D政策は必ずしも重視されてこなかったことである。例えば薬価制度の運営においては保険診療における薬剤費の抑制が最大の政策目的となり,薬価がR&D投資に持つ影響力は十分に考慮されていない。第2は,政策が効果を及ぼす主体の反応を適切に考慮しないとき,R&D投資が歪められる可能性があることである。近年の薬価抑制政策に対して,製薬企業が部分的改良のR&Dを重視して,革新的なR&Dを抑制するように反応した可能性がある。第3は各種のR&D政策手段が政策目的の実現としては相互に調整されていないことである。第4にR&D政策として十分に活用されていない政策があり,この例として税制,新薬承認制度,薬価算定,M&A政策等をあげられることである。第5に,R&D政策の効果が政府の組織上の問題によって,妨げられていることである。大学等の公的基礎研究の効率性の上昇のためには,政府の省庁間の調整が必要となる。
  • 広井 良典
    1997 年 7 巻 2 号 p. 36-52
    発行日: 1997/07/10
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    遺伝子技術を始め,現在進行中の生命科学の革新は,医療そのものへの影響のみならず,社会的,経済的にも大きなインパクトをもつものであることから,アメリカ及びヨーロッパの各国においては,その推進・評価・規制の各局面について,特に近年活発な政策展開が行われている。
    本論文では,それら欧米諸国(アメリカ,イギリス,ドイツ,フランス)における生命科学分野の研究開発政策の特徴を整理・分析し,これを踏まえてわが国における今後の政策展開の課題についてまとめる。
  • 印南 一路
    1997 年 7 巻 2 号 p. 53-72
    発行日: 1997/07/10
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本研究は,医薬品の研究開発を組織における情報価値の生産,すなわち知識創造活動であると考え,特に進歩が著しい情報技術を用いて情報共有・知識創造をする意義・効果を探求した。具体的には,情報共有が知識混交を経て知識創造に至るメカニズムを,個人の持つ構造化された知識であるスキーマがコミュニケーションを通じて活発化する過程であるとし,有効スキーマ理論として提示した。したがって,単なる情報共有ではなく,組織の構成員が持つ知識を組織内で流動化させ,組織内の知識創造を促進させるダイナミックな「知識混交」こそが,組織の知識創造活動にとって重要である。そして,近時急速に進歩している電子コミュニケーション技術は,伝統的な人的ネットワークを時間的・空間的制約から解放し,この知識創造活動の場を飛躍的に拡大する。
    組織の情報共有には,組織内,組織間の公式・非公式な情報共有に加え,組織の構成員が任意に参加するプラクティス・コミュニティ(職業的・知的好奇心を共有する非公式な人脈)との情報共有がある。医薬品の研究開発は知識集約的であり,分子生物学・遺伝子工学・医学にまたがる学際的交流が果たす役割が大きい。したがって,世界的規模のプラクティス・コミュニティに,研究開発担当者が自発的・積極的かつオープンに参加し,知識混交するメリットと必要性がある。いくつかの実例をかかげた。
  • Richard Zeckhauser, Todd Olmstead
    1997 年 7 巻 2 号 p. 73-97
    発行日: 1997/07/10
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    医療プランの「メニュー」にどのような医薬品が含まれるかという問題,すなわち「医薬品処方集」は,米国の医療者のほとんどが,何らかの形で活用している。だが,処方委員会が最善の配慮を払っているにもかかわらず,処方集決定のプロセスにおいては,対象人口の中の患者の割合は常に同じであると仮定し,また任意の治療クラスにおいて医薬品の相対的な効率性に関心を集中させることで,問題をあまりに単純化しすぎている。目的が医薬品予算の枠内で期待医療効果を最大化することにあるとすれば,こうした過度の単純化は次善の処方集しか生み出さない可能性がある。患者の選択を指示できるとしても,処方集には適切でない医薬品が含まれるだろう。さらに,メニュー設定問題においては古典的な問題だが,利己的な患者は(あるいはその代理としての医師は)治療効果の割に高価な医薬品を選択する可能性がある。理想的な処方集はこうしたコスト効率の悪い選択を排除することを目指すものである。本論で提示する数学的モデルは, 患者の異質性を明確に織り込んでおり,処方集について全体的な視野を持ち,患者の選択が利己的であることを想定したものである。このモデルは非常に柔軟なため,さまざまな目標やコスト構造に対応することができ,処方集決定担当者を助ける意思決定支援ツールとして活用できる。メニュー設定問題は医療分野においては処方集に限らず一般的に見いだされるものだが,恐らく最も重要なのは,医療プランや保険において提供すべきサービスを決定する場面であろう。
  • 大日 康史
    1997 年 7 巻 2 号 p. 98-119
    発行日: 1997/07/10
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本稿は,国民生活基礎調査基本調査('86,'89,'92)の個票に基づいて要介護老人を抱える世帯において,就業可能な同居家族の就業行動と福祉サービスとの関連を分析した。その結果,ホームへルパーが就業確率を有意に抑制し,デイサービスが有意に促進するというかなり頑健な結果を得た。さらにその推定結果から,老人保健福祉計画の達成された場合の介護者の就業に与える影響を検討し,就業確率を少なくとも20%以上押し上げることが明らかになった。
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