医療と社会
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7 巻 , 3 号
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  • 二木 立
    1997 年 7 巻 3 号 p. 1-24
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    各種の病院名簿・施設名簿と各私的病院から得た資料,および電話調査等に基づいて,わが国の大病院全体の構造ならびに私的大病院の形成過程と最近の活動の広がり(チェーン化と「健・医療・福祉複合体」化) を調査した。
    調査対象は,1996年に500床以上の病床を有する大病院512病院で,内訳は,(1)大学病院以外の私的病院155,(2)私立大学病院41,(3)国公立大学病院52,(4)大学病院以外の国・公的病院264。これらは病院総数の5.3%,病院病床総数の21.2%を占めている。本稿では,大病院全体を対象にした横断分析を行い,以下の結果を得た。私的病院の時系列分析と活動の広がりは,次稿で報告する。
    (1)500床以上の大病院は,総合病院と慢性病院(精神・老人)への「二極分化」が完了している。私的病院の多く(三分の二)が慢性病院に特化し,大学病院と(厚生省開設以外の)国・公的病院は総合病院に特化している。ただし,大学病院以外の私的病院の3割は総合病院であり,その7割が臨床研修病院である。
    (2) 私立大学病院は国公立大学病院に比べて,はるかに大規模であり,しかも私立医科大学の7割が病院チェーンである。大学病院以外の病院でも,私的病院の方が国・公的病院よりも大規模であり,特に老人病院(すべて私的)は2割弱が1,000床以上の巨大病院である。1,000床以上の私的巨大病院の大半は広義の病院チェーンである。
    (3) 私立大学病院の100床当たり平均職員数は国公立大学病院よりもはるかに多い。私的病院全体の100床当たり平均職員数はかなり少ないが,これは職員数が少ない老人病院・精神病院が多いからであり,総合病院と一般病院に限れば,大学病院以外の国・公的病院に比べて遜色がない。大学病院以外の国・公的病院のうち,厚生省開設病院の100床当たり職員数は,異常に少ない。
    (4) 大学病院以外の国・公的病院の7割強と国立大学病院の6割強は1949年以前に開設されている。精神病院の6割は1950~1960年代に開設され,私立大学病院は1970年代に急増し,老人病院の半数近くは1980年代以降に開設されている。
    (5) 500床以上の病院は,病院総数に比べて,13大都市への集中度が高いが,新設医科大学の大学病院の相当数(特に国立の4割)は,人口5万人未満の市町村に開設されている。
  • 川渕 孝一
    1997 年 7 巻 3 号 p. 25-52
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,厳しい環境下にある医薬品卸業界の羅針盤となる指標を見出すべく,米国のNWDAを範として日本版NWDA Operating Surveyの構築を視野に入れ,その実現の可能性について検討を加えた。
    その結果として,次の4点が明らかになった。
    1)わが国の医薬品卸業界の活動内容を示す唯一の公開資料である有価証券報告書から得られるデータだけでは米国のNWDAを網羅することが不可能であること。
    2)日本の医薬品卸業の比較財務分析を行ったところ,わが国の医薬品卸業の方が総じて(1)資本効率が悪い,(2)労働生産性が低いこと。
    3)わが国の医薬品卸業界が置かれている経済的状況とその業態特性を明らかにするために医薬品卸業界の販売先である病院業界と比較財務分析を行ったところ,各企業間のバラツキは大きいものの,医薬品卸業は病院より確かに売上高は大きいが,営業(経常)利益率はむしろ病院の平均値を下回っていること。
    4)そこで,わが国の医薬品卸業の最も大きな管理可能コストである販売費の効率性を調べるために,MS(Medical Sales)の業務量分析を行い,これと販売先売上高及び売上総利益との関係を調査したところ,今回の調査は医薬品6社9事業所とサンプルが少なかったため,数値にかなりバラツキが出たが,こうした指標は日本版NWDAを構築する上で有用な一つの指標となること。
  • 印南 一路
    1997 年 7 巻 3 号 p. 53-82
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    一人当たり医療費には地域格差が存在するが,既存の医療費に関する研究は,県レベルでのデータを用いるものが多いため,地域格差の要因や医療費の決定構造は現在に至るまで明らかになっていない。
    本研究は,日本全国3,251市町村の市町村別の国民健康保険(一般・退職者・老人)医療費データおよび医療福祉サービスデータ,地域特性データを用いて,全国市町村をカテゴリー化し医療費の高低を比較するとともに,総合的な医療費の要因構造モデルを構築し,さまざまな要因が医療費に与える影響と要因間の影響を定量的に測定した。その結果,地域医療費のバラツキの約半分がモデルによって説明され,次のようなことが明らかになった。
    (1) 全国市町村は,医療福祉供給サービスの充実度によって,病院充実型地域,福祉・診療所充実型地域,平均的地域の3つに分類され,病院充実型地域で全医療費が高く,福祉・診療所充実型地域で,一般の医療費が高く退職者・老人医療費が低い。
    (2) 同様に,全国市町村は,人口密度・世帯構成・経済などの地域特性によって,都市型地域,過疎地域,平均的な住宅地域の3つに分けられる。都市型地域では,老人・退職者医療費が高く,一般医療費は極めて低い。過疎地域では,一般医療費が極めて高い。平均的な住宅地では,核家族率・老人単独世帯率の高い地域で医療費が高く,2世帯同居型地域で医療費が低い。
    (3)病院サービスが充実していると,入院費割合が高く,一人当たり医療費も高い。
    (4)一人当たり特別養護老人ホーム数が多いと,直接的に,また入院費割合の増加を通じて間接的に,退職者・老人医療費が高くなる。老人保健施設は,直接的には医療費を押し上げるが,入院費の割合は減少させる。ショートステイ利用人数が多いと,直接・間接的に退職者・老人医療費を下げる効果があるが,デイサービスは医療費を上げる効果が認められた。
    (5)市町村の年齢構成,世帯構成,経済等の地域特性は,市町村の医療福祉サービス供給体制を介して,間接的に一人当たりの医療費に影響を及ぼすとともに,直接医療費に影響している。これまで市町村医療費の偏りは,主として老齢人口の偏りによって説明されてきた。しかし,本研究は,医療費の地域格差がより多数の原因から構成されていること,原因間には相互に複雑な関係があること,これらの関係の相対的比重に違いがあることを明確にした。
  • 安川 文朗
    1997 年 7 巻 3 号 p. 83-98
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    日本の病院における資金調達には,公民格差および民民格差が存在する。すなわち,すべての病院は医業収入を基本的な経営源資とするが,それが不足した場合,公立病院では公的補助金獲得や公債発行が可能だが,民間病院の資金調達手段は限られており,しかも民間病院間でも,経営主体の違いによっても資金調達オプションに差がある。
    日本の病院の8割を占める民間病院の資金調達のあり方は,病院経営の問題だけでなく,日本の医療政策に大きな影響を及ぼす。そこで本稿では,資金調達における公民・民民格差および民間病院の経営実態と,民間病院における外部資金調達の実態について,資料に基づき把握したのち,「非営利」民間病院の資金調達行動と, 病院の資金調達のあり方が病院自身および患者を含めた国民にとってどのような意味をもつかを考察した。
    民間病院の経営および外部資金調達実態としては,
    1) 半数以上の病院が資金調達上の困難を訴えていること,
    2) 公的融資による外部資金調達が,病床規制以降も伸び続けていること,
    3) 今後も民間病院の公的融資に対する需要は減退しない可能性が高いこと,が明らかになった。
    また,日本の民間病院は,法的に「非営利」と規定されているもののその企業行動特性は実際には「営利」に近い。したがって, 今後は民間病院の経営問題は, 従来の「営利- 非営利」といった二分法的議論ではなく,病院にどのような資金調達オプションを与えることが,その病院の経営的安定とクオリテイの維持に有益か,また患者にとって望ましいかという観点から議論されるべきである。
  • 山田 武
    1997 年 7 巻 3 号 p. 99-112
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    この論文の目的は,1日あたりの一部負担と所得の関係を調べることにある。医療サービスの需要には,仕事を休むなどの間接的な費用(いわゆる時間費用)が伴う。これまでの研究では1日あたりの一部負担は所与で,時間費用は需要曲線をシフトさせる要因として取り扱われてきた。しかし,時間費用が高くなると,1日あたりの需要量を増加させるインセンティブを消費者はもっていると考えらえる。1日あたりの需要量が増加すれば,1日あたりの一部負担も増加するから,1日あたりの一部負担を所与として取り扱うことはできない。本稿では,集計したレセプトデータを使って1日あたりの一部負担と所得の関係を計量経済学の手法をつかって分析した。その結果,男性の外来や歯科では,総所得が増加すると1日あたりの一部負担は増加するが,女性の入院では総所得の増加は1日あたりの一部負担を減少させる。したがって,1日あたりの一部負担を価格として需要関数を推定するときには,推定されたパラメタの解釈に十分な注意が必要になる。
  • 安藤 雄一, 河村 真, 池田 俊也, 池上 直己
    1997 年 7 巻 3 号 p. 113-133
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    保育園児のう蝕治療において医師誘発需要が生じているか否かを検証することを目的に,集団歯科検診データとレセプトデータをリンケージした個票データを用いて,歯科医師密度がう蝕の治療量に及ぼす影響について検討した。分析対象は,新潟県内の24市町村における国民健康保険に加入している保育園児のうち,集団歯科検診受診後3ヶ月以内に受療した保育園児485名(レセプト820枚)である。分析は乳歯う蝕について行い,診療室で実際に治療を受けた「う蝕治療歯数」と集団歯科検診時に判定された要処置歯数との差を分析指標とした。「う蝕治療歯数」と要処置歯数を比較すると,前歯部では両者の値がほぼ等しかったが,臼歯部では「う蝕治療歯数」のほうが要処置歯数よりも52%多かった。さらに,「う蝕治療歯数」と要処置歯数の差を被説明変数,性・年齢・う蝕経験歯数・市町村の歯科医師密度を説明変数として,加重最小二乗法モデル・Fixed Effectsモデル・Random Effectsモデルの3種類の方法による推定を,乳歯全体・前歯部・臼歯部に対して行った結果,推定結果は乳歯全体と臼歯部では加重最小二乗法,前歯部についてはRandom Effectsモデルを用いることが望ましいと判定され,歯科医師密度はいずれのケースにおいても有意であった。すなわち,歯科医師密度の高い地域では,集団歯科検診時に判定された要処置歯数に対して,より多くの治療が行われていることが示され,保育園児のう蝕治療において医師誘発需要が生じていることが確認された。
  • 桑嶋 健一, 松尾 隆
    1997 年 7 巻 3 号 p. 134-149
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本稿は,医薬品産業におけるイノベーションの成果としての新薬(新有効成分含有医薬品:NCE)が企業業績に与える影響を,新薬を承認形態によって分類した上で分析し,考察を加えることを目的としている。この目的に基づいて,日本の主要製薬企業20社を対象とし,1976年から1996年までの21年間のデータを用いて分析を行った結果,主に以下のような結果が得られた。
    (1)製造承認数を説明変数とし,同期間の企業ごとの累積営業利益を被説明変数として回帰分析を行った結果,既存研究と同様に製造承認数によって営業利益を説明することができた。
    (2)しかし,利益額は売上高という規模を表す変数によってかなり説明されてしまうため,営業利益率を被説明変数とし,製造承認数を説明変数として回帰分析を行ったところ,統計的に意味のある回帰モデルにはならなかった。
    (3) そこで,営業利益率を被説明変数とし,説明変数である製造承認,輸入承認を単独取得と共同取得とでさらに分類して分析を行った結果,統計的に意味のある回帰モデルとなった。しかも,回帰係数で意味のあるのは,製造承認を共同で取得しているものだけであった。
    このように共同承認が企業の利益率に正の影響を与える理由としては,研究・臨床試験・製造に関わるコストの低減やフレキシビリティの確保,共同販売による販路拡大などのメリットを享受できるということが考えられる。本稿における分析結果を前提とした場合,製薬企業は共同戦略(collaborative strategy)をとった方が業績が良くなることになるが,現実には,全ての企業が共同戦略を利用しているわけではない。共同戦略の採用を阻害する要因としては,NIH症候群やコア能力の欠如といったものがあげられる。
  • 岡本 悦司, Kathleen A. Johnson
    1997 年 7 巻 3 号 p. 150-166
    発行日: 1997/11/25
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    現在わが国の医療保険改革論議において,国際的にも高水準にあるとされる薬剤費の効率化が課題となっている。薬剤費効率化の具体策として,医薬分業の一層の推進の他,患者負担率の引き上げが検討されている。患者負担率の引き上げは薬剤費を確実に抑制するが,必要な薬剤もそうでない薬剤も一律に抑制されるという限界がある。
    本論では,患者負担率引き上げに代わる薬剤給付の効率化策として,目下米国で急成長しつつある薬剤給付管理と呼ばれるマネジドケアに着目し,その様々な機能ごとに,そうしたメカニズムをわが国医療保険制度の中に導入する可能性を,促進要因と阻害要因の両面から検討する。
    結論:薬剤給付管理は,薬剤費の効率化を進める上で,患者負担率の引き上げよりも優れた方策といえる。そのためには保険者と医療機関との直接契約を認める規制緩和が前提となる。また製薬企業の薬局経営が法的に禁止されていないことから,薬業界の「垂直統合」がわが国ですすむ余地も大いにある。
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