医療と社会
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8 巻 , 3 号
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  • 丸尾 直美
    1998 年 8 巻 3 号 p. 1-15
    発行日: 1998/11/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    超高齢社会を迎えて高齢者医療と介護のニーズは一層高くなる。他方,福祉の費用を支える生産年齢人口は減少し,GDPは停滞している。福祉ニーズを効率的に充足するために福祉ミックス,プロダクティブな福祉,医療と福祉の総合化などの一層の工夫が必要である。
    本稿では47都道府県データのクロス・セクション分析によって,高齢者医療と介護サービスの総合化が[高齢者医療費プラス老人福祉費の合計]を節減できる可能性を計量的に示すことを試みた。まず各都道府県の病床数の介護施設の定員数に対する相対的大きさを指標化して,その指標と各都道府県の[一人当たり老人医療費あるいは入院費プラス老人福祉費の合計]との関係が正の相関関係にあることを明らかにした。
    本稿では施設の関係だけの分析に限ったが,施設入所対在宅介護・看護の相対費用の比較も同様な方法で可能であろう。本稿ではあわせて1990年代にスウェーデンで導入されたエーデル改革がどのような形で高齢者医療と高齢者介護サービスを地域レベルで総合化したかを紹介して,医療施設,介護施設,在宅看護・介護の総合化に加えて,医師,看護婦,ホームヘルパーという人間関係でも連携と総合化が必要であることを示唆した。
  • 鈴木 雅人, 中村 洋
    1998 年 8 巻 3 号 p. 17-38
    発行日: 1998/11/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本論文では,ドイツ型参照価格制度を個別医療用医薬品の価格・処方量と研究開発インセンティブへの影響という観点から考察した。その制度導入が製薬企業間の価格競争を促進する効果は疑わしい。一つの理由は,設定された参照価格以上の医薬品の価格が低下する一方で,参照価格以下の医薬品の価格が上昇する可能性が考えられるためである。ドイツにおける参照価格制度の医薬品価格への影響をレベルごとに分析した結果,91年に対象となったレベルIIの医薬品グループの加重平均価格指数は制度導入後に上昇していることが分かった。また,一度設定された参照価格を適正に改定することは極めて困難であり,長期的な価格固定化に結びつく。したがって,たとえ参照価格制度の薬剤費低減効果があったとしても,その効果は一時的であり持続するのは難しい。
    ドイツでは制度導入により参照価格以上の医薬品から以下の医薬品への処方シフト,あるいは制度対象医薬品の処方量減少を示す十分なデータは得られなかった。ただし,我が国では,参照価格制度移行による薬価差消滅が,薬価差獲得を目的とした薬剤の過剰使用を解消させることで医薬品の処方量を減少させると考えられる。
    さらに,参照価格制度がその対象となる医薬品を研究開発する企業の収益を悪化させるとは限らない。したがって,改良型新薬が制度の対象になっても,その研究開発意欲が減退するとは必ずしも言えない。また,画期的新薬を制度の対象から外したとしても,改良型新薬に比べその研究開発を促進する効果は必ずしも期待できない。
  • 中島 孝子
    1998 年 8 巻 3 号 p. 39-51
    発行日: 1998/11/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    日本の医療は, しばしば「3待って3分間しか診療してもらえな」と批判される。これは,主に大病院で観察される現象である。長時間待つことが予想されるにもかかわらず,患者はなぜ,多くの医療機関の中から大病院を選択するのだろうか。
    第一に,医療保険制度の存在により医療需要がもともと多いことが指摘できる。一般に医療保険があると,ないときに比べて医療サービスに対する需要は高まる(中西他,1991)。第二に,情報が供給側に偏在していることが挙げられる。一番目に,通常,患者は医師ほど医学的知識を持たない。二番目に,小規模の医療機関と大病院が緊密に連携していない可能性がある。三番目に,ある特定の医師の能力の高低を,患者は正確に評価できない。患者が大病院を志向する理由として,上のような不確実性の存在が挙げられる。つまり,患者は,設備やスタッフの充実した大病院に行くことで,これらの不確実性に対して一種の「保険」をかけているとみることができる。
    本論文の目的は,以上の状況を単純なモデルによって説明することである。
    モデルでは,患者が直面する不確実性は,病気の重症化の可能性の程度と,小規模医療機関がとる行動に由来すると単純化する。結果として,これらの不確実性のために,患者は長時間待つにもかかわらず大病院へ行くことを選ぶ。その傾向は,病気の可能性が高いほど,金銭的なベネフィットを重視する小規模医療機関の割合が大きいほど強くなる。逆に,大病院での待ち時間が長くなると,小規模医療機関を選択するようになる。また,重症化の可能性が小さいタイプにおける重症化の確率が大きくなると,患者は大病院を選択する傾向を強めるが,重症化の可能性が大きいタイプにおける重症化の確率が,患者の行動に与える影響は一定ではない。
  • 田村 誠, 福田 敬, 土屋 有紀
    1998 年 8 巻 3 号 p. 53-66
    発行日: 1998/11/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    Background. There is a large variation amongst the values of statistical life estimated in the past. The authors have focused their attention on the relationship between the size of risk change presented in a contingent valuation method and the estimated value of statistical life. Methods. A survey was performed on 600 community residents. The subjects were presented with various WTP scenarios, which included a different size of risk change. Results. Regression analysis of the value of statistical life with the size of risk change shows that R2 was high, indicating that the relationship is strong. Though this relationship was expected, it is quite interesting that the relationship is almost linear. Conclusion. The range of risk change should be fairly narrow when the value of statistical life is universally discussed. For economic evaluation of health care programs, which reduce the risk of death, it may be desirable to measure WTP each time for each specific program.
  • 武藤 香織
    1998 年 8 巻 3 号 p. 67-82
    発行日: 1998/11/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    〈目的〉ハンチントン病の発症前遺伝子検査と医療福祉サービスのあり方についての問題を明らかにする。ハンチントン病は,常染色体優性遺伝の神経難病であり,不随意運動や痴呆などを特徴としている。CAGの繰り返し塩基配列の検索によって,1993年より発症前遺伝子検査が可能になっている。
    〈対象者と方法〉九州北部に住むハンチントン病の介護者(家族)5名に対して,1回2-3時間の半構造化面接を行った。
    〈結果〉5名のうち, 3名は発症前遺伝子検査に消極的であり, 2名はその存在を知らなかった。全例において,医療福祉サービスの利用経験はなかった。3名は家族会が発足しても参加する希望はなかった。2名は家族の中で病気の存在を隠していた。〈考察〉4名は子どもや孫に対する結婚忌避への恐怖を表明していた。結婚をめぐる差別の問題は,恐らく発症前遺伝子検査や医療福祉サービスの施策形成を検討するうえでも共通する問題点となりうるだろう。今後とも注意深く検討していく必要がある。
  • 池田 俊也, 田端 航也
    1998 年 8 巻 3 号 p. 83-99
    発行日: 1998/11/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    障害調整生存年(Disability-adjusted Life Year;DALY)は,死亡年齢や障害度を加味した新しい健康指標であり,開発途上国を中心に多くの国々で政策立案のツールとして利用されつつある。今回,筆者らは,既存の統計資料を基に,わが国におけるDALYの簡便法による推計を試みた。その結果,早死や障害の原因として重要な傷病については,死亡者数のみでは捉えられない疾病負担を定量的に評価することができ,政策決定における有用な情報として活用できる可能性が明らかとなった。今回の検討により,DALYはわが国においても新しい健康指標として一定の意義を有することが示された。
  • 萱間 真美
    1998 年 8 巻 3 号 p. 101-113
    発行日: 1998/11/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    精神分裂病患者に対して熟練保健婦が地域でどのような訪問ケアを提供しているかを具体的に記述することを目的とした記述的研究を行った。平均経験年数29年で,精神保健看護の領域から熟練者として推薦を受けた保健婦12名を対象に21名の精神分裂病患者に対する訪問ケアを想起したインタビューを行った。データは逐語録を作成してGrounded Theory Approachの継続的比較分析法を用いて分析を行った。分析の妥当性を確保するため対象のうち4名に対して郵送法にて質問紙による確認を行った。分析の結果,関係性を創る技術,日常生活のケア,地域で生活していく権利の擁護,医療を受けることへの関わり,家族への関わり,症状の管理,他職種・住民との共働という7カテゴリと35のサブカテゴリが抽出された。保健婦の技術の特徴は,未治療あるいは治療が中断している,他者との信頼関係がほとんど確立されていないケースとの間で関係性を創るための多様な技術が用いられていたこと,さらに転医など医療との関わりそのものに対して基盤を地域におくことによって継続的な援助が提供されていたことであった。保健婦はクライアントとして患者本人にとどまらず地域住民としての家族にも関わる立場にあり,患者本人の医療との関係に拘束されない多様な援助を提供していた。
  • 山田 武
    1998 年 8 巻 3 号 p. 115-125
    発行日: 1998/11/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    この論文の目的は,健康が高齢者の就業行動に与える影響を分析することにある。実証分析を進める上で自己評価による健康指標にはいくつかの問題がある。多くの研究で使われている健康指標は,個人による自己評価である。全く同じ健康状態でも評価は個人間で必ずしも一致しないから,健康の自己評価には個人の特性が反映されていると考えられる。また,仕事の内容によって健康の影響は異なる。これまでの研究では就業するかどうかの二者択一に重点が置かれていて,職種ごとに健康の影響が変化することは考慮されていなかった。この論文では労働省『高齢者就業実態調査』のマイクロデータを使った60歳から69歳の男性の高齢者の就業についての多項ロジット分析から,次の結論をえた。健康指標が健康状態の悪化を示すほど就業確率が減少し,年金を受給するほど就業確率が減少する。この一方で,職種別では健康状態の悪化は自営業よりも一般雇用に大きく影響すること,年金受給額の増加が就業を抑制することも確認された。今後は職業による健康水準の違いが,指標の作成方法によるものなのか,あるいはその他の要因によるものなのか慎重に検討する必要がある。
  • 中村 真規子
    1998 年 8 巻 3 号 p. 127-146
    発行日: 1998/11/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    患者と医療者が臓器移植推進の鍵となると期待していた臓器移植法が施行されて10月16日で1年が過ぎた。しかし今も,臓器提供の不振は改善されず,その問題点を論じる意見は多い。しかし,その多くは患者側の視点に立つ情緒的見解の域をでていない。移植治療は,一般医療と認められつつあるにもかかわらず,その治療に不可欠な臓器とその移動について広い視点での理解が十分なされていないのである。従来の医療者と患者の視点だけではなく,潜在的提供者を含む社会の視点を取り入れることによって,この問題についての社会の認識レベルを向上させなければ,臓器問題は,解決しないと思われる。そのためには,まず個人財である臓器が提供者から被提供者への移動の形態とそれに伴なう諸問題を明らかにする必要がある。
    本稿は,社会学的視点に立脚し,臓器移植に関わる問題,とりわけそこで発生する生体間臓器移動の現象をどのように考えればよいのか,またそれをどう分類すればよいのかを検討する。そのために,従来から展開されてきた社会学的交換理論とそれに関連した血液ドナー,骨髄ドナーについての研究をレビューする。ついで,その上に立った筆者自身による調査分析を加え,臓器の移動形態に関わる諸問題を考察する。
  • 前田 正一, 萩原 明人, 信友 浩一
    1998 年 8 巻 3 号 p. 147-161
    発行日: 1998/11/30
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    生命維持治療技術が長足に進歩し,いままででは当然死亡したような患者の生命を維持することが可能となった。しかし,死が目前に迫っているにもかかわらず生命維持治療を施す結果,安らかな死を迎えることができる人は少なくなった。そこに,生命維持治療の差し控え,中止の問題が登場してきた。
    この生命維持治療の差し控え,中止は,1970年代のアメリカの裁判例の中で患者の権利として認められるようになった。わが国でも,1994年5月に日本学術会議「死と医療特別委員会」は,「尊厳死について」を報告し,生命維持治療の差し控え,中止を正面から肯定した。また,1995年3月には,横浜地裁は東海大学安楽死事件判決で,治療行為中止の要件について述べた。
    ところで,人間は自分の身体を何の制約もなしに完全支配しているとはいえない。しかし,医療技術の進歩が,治癒不可能な末期患者の命をただ引き伸ばすという事態を生じさせるようになったことを考えるとき,終末期状態においては,その状態で長生きすることだけが最高の価値であるとも言えない場合もたしかに存在すると思われる。そうすると,終末期状態にある患者が自分がまわりとの関係の中で生きていることをもう一度熟慮してもなお自らの生命を犠牲にすることのほかには代替手段はないという状況に陥ったとき,自己決定としての生命維持治療の差し控え,中止が許容されるのだろう。
  • 1998 年 8 巻 3 号 p. 165a-
    発行日: 1998年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
  • 1998 年 8 巻 3 号 p. 165b-
    発行日: 1998年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
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