医療と社会
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9 巻 , 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 姉川 知史
    1999 年 9 巻 2 号 p. 1-17
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    この研究は医薬品需要の決定要因を循環器官用薬の個別データを用いて分析した.患者負担と保険給付額の基準となる「薬価」,卸業者の納入価格である「市場販売価格」の双方を需要量の決定要因として重視し,それぞれの効果を推定する理論モデルと推定方法を提示した。実証研究結果は相互に整合的で,しかも実務上の経験的事実を適切に説明することが判明した。とりわけ,市場販売価格に対する医薬品需要の弾力性は全サンプルにおいては-0.864であり,部分サンプルではこれが-0,6から-1.1の範囲で推定され,市場販売価格低下に対して需要量が増加するという傾向が確認された。他方,薬価低下そのものに対しては医薬品需要は影響されない場合が一般的であった。また,1992年以降,需要量は市場販売価格により弾力的になった。医薬品発売後経過年数の長い医薬品ほどその需要量は市場販売価格に対して弾力的であった.さらに,市場販売価格以外の個別医薬品の属性にもとつく個別効果が需要量変動に果たす役割の大きさが示された。
    以上の実証研究によって薬価基準制度,薬価低下政策に対して次の評価が可能となった。その第1は薬価だけでなく,市場販売価格の効果を重視して政策を運営すべきという点である。第2は現行制度では個別の医薬品の価格弾力性が異なるため,その相違を考慮した薬価低下政策が不可欠であるという点である。第3は薬価や医薬品価格を重視した需要抑制政策を実施しても,実際の需要量は個別効果によって大きく影響されるため,価格規制によっては需要抑制という政策目的は実現できないということである。このとき個別効果に応じて需要量を抑制する方法,例えば何らかの「需要管理」が効果的である。
    他方,製薬企業は薬価低下政策に対して,市場販売価格低下と個別効果による需要量増加で対応したと解釈される。
  • 1999 年 9 巻 2 号 p. e1a-
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
  • 1999 年 9 巻 2 号 p. e1b-
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
  • 1999 年 9 巻 2 号 p. e1c-
    発行日: 1999年
    公開日: 2012/12/14
    ジャーナル フリー
  • 浅川 和宏
    1999 年 9 巻 2 号 p. 19-53
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本論では,ICHの進展等により製薬業界における国際標準化がますます加速化する中,日欧の製薬企業が新たな世界標準プラクティスを採用し社内に普及,定着させる過程でいかなる困難さが生じ,その背景にいかなる障害要因が介在しているのかを考察した。そこでは「認知的」「政治的」「制度的」障害といった各要因及びSzulanski (1996) が明らかにした「因果曖昧性」, 「吸収・保持能力の欠如」,「関係性の欠如」の各要因が,プラクティスの「採用」「普及」「定着」の各過程における困難さに対していかなる影響を及ぼしているか,に焦点を当てた。日欧企業85社(および日本企業1社内追加調査)に対する実証研究の結果,以下の点が明らかになった。
    第1に,あるプラクティスを採用する際に直面する困難さは,そのプラクティスの存在や自社にとっての重要性が十分認識されないことから生じる傾向にある。第2に,自社に取り込んだプラクティスを社内各部署に普及させる際に生ずる困難さの主な要因は,なによりもその対象となるプラクティス自体への反発にある。第3に,一応社内各部署に普及させたプラクティスをそれぞれの部署独自のコンテキストに適合した形で定着させる際に直面する主な障害要因は,なによりもその新たなやり方と自社のこれまでのやり方との間の隔たりに起因する。第4に,そのプラクティスの因果関係が曖昧であったり受け手側にその吸収・保持能力が足りなかったりした場合,それを社内に取り込むことが難しくなる。第5に,受け手の吸収・保持能力が足りない場合,いくらそのプラクティスを社内に普及させようとしても限界がある。第6に,受け手の吸収・保持能力が足りないと,さらにそのプラクティスを社内にしっかりと定着させることが難しい。第7に,日欧比較の観点からは,欧州企業と比べ,日本企業のほうがプラクティスの採用・普及・定着のいずれの段階においてもより困難さを認識している傾向にある。そして第8 に, プラクティスの内容別にみると, GCP 関連プラクティスは,その他のものと比べ,より採用・普及・定着が困難であるとは必ずしもいえないことが判明した。
  • 玉腰 暁子, 石川 鎮清, 尾島 俊之, 菊地 正悟, 小橋 元, 斎藤 有紀子, 杉森 裕樹, 中村 好一, 中山 健夫, 武藤 香織, ...
    1999 年 9 巻 2 号 p. 55-68
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    主に以下の3つの研究を行った。
    1.疫学研究におけるインフォームド・コンセント(以下IC)の実態調査
    日本における疫学研究のICの現状について明らかにした,初めての研究である。233名(70.6%)の研究者が何らかの説明を行っており,156名(47.3%)が研究参加の同意も確認したと回答した。
    2.一般住民に対する疫学研究の倫理的問題に関する意識調査
    本調査を通じて,どのような健康情報の提供を求められているかによって,対象者が研究に関する情報を必要とする程度が異っていることが明らかになった。
    3.諸外国における疫学研究の倫理的問題についての情報収集および整理
    イギリスとアメリカの医療記録に関するアクセスについての法的・倫理的な状況について検討した。さらに,ICを巡る法的側面についての課題についての検討を行った。
    疫学研究におけるICのための倫理的なガイドラインを策定するに向けて,より多くの議論の機会を持つことが重要である。
  • 尾藤 誠司
    1999 年 9 巻 2 号 p. 69-75
    発行日: 1999/07/10
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    健康関連QOL(HRQOL)は新しい健康評価のためのアウトカムとして定着したように思われる。さらに現在,実際の医療現場でHRQOL測定を個人のデータとして利用することにも大きな注目が濯がれている。しかしながら,HRQOL尺度を個人データとして理解する場合,疫学的な方法による評価とは異なる性質や問題点が考慮されなければならない。
    HRQOL個人評価のための方法論的な問題点として,実際の臨床使用に耐えうる簡便さ・質問票の長さと,それに付随して問題となってくる尺度の感受性・信頼性があげられる。特に,疫学調査においては十分と思われる評価尺度が持つ感受性や信頼性は,個人評価においてはより高いレベルの値が必要とされる。また,個人それぞれが持つ併存症や重傷度などのケース・ミックスを,どのように適切に調節し評価するべきか,さらに計時的に質問票をテストされることから生じる慣れの問題なども考慮されねばならない。慢性疾患時代に突入した現在,包括的指標をもって被医療者へのケアを還元すべきであるという考え方はもっともであり,上記のような問題点を自覚しながらもHRQOL評価の臨床現場応用への更なる研究と努力が必要であろう。
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