Journal of Inclusive Education
Online ISSN : 2189-9185
ISSN-L : 2189-9185
最新号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
ORIGINAL ARTICLES
  • ―訪問教育担当教員の視点からの分析―
    王 青童, 竹田 一則
    2022 年 11 巻 p. 1-14
    発行日: 2022/08/30
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    中国の「障害者教育条例」では訪問教育も特殊教育の一つの教育形態であるとされ、学齢期において、自宅療養が必要で通学して教育を受けることに困難がある障害のある児童・生徒に対し、訪問教育を実施することが明確に規定され、今後の中国の特殊教育の体制を考えていく上で無視のできない仕組みである。本研究では中国における訪問教育の担当教員を対象とし、対象となる児童・生徒の保護者との関係性を分析し、さらに訪問教育を行う際に実施するペアレント・トレーニングの実態を調べ、ペアレント・トレーニングが中国の訪問教育において、どの様な役割を果たしているのか、その位置付けを明らかにすることを目的とした。今回の研究を通して訪問教育の担当教員は、訪問指導に際する保護者との関係について比較的満足度が高く、また多くの保護者も訪問教育に対し高い関心を持ち、積極的に指導に参加する意欲を示していると考えられた。さらに、ペアレント・トレーニングの実施が訪問教育の質の向上に関与することが明らかになり、今後、中国の訪問教育においてペアレント・トレーニングに関するより一層の取り組み強化が重要であることが示唆された。
  • 畠山 玲子, 韓 仁愛, 増満 昌江, 川島 雅子, 佐口 清美, 中林 誠, 西出 久美
    2022 年 11 巻 p. 15-28
    発行日: 2022/08/30
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は, 医療的ケア児の支援において学校職員が感じる困難や不安なことを明らかにすることを目的に, 関東圏公立特別支援学校に勤務する学校職員を対象として質問紙調査を行った. 結果, これまでに経験したすべての施設の経験年数から,児に適した接し方, 家族の期待とニーズへの対応, 小児医療の情報や専門知識の3項目に有意差が示された. また, 特別支援学校での支援の経験年数からは, 親(保護者)との連携・協力体制の1項目に有意差が示された. さらに, 自由記述からは【児童生徒の学習・教育の平等と保障】【医療的ケアの支援体制の構築】【感染防止策・緊急時の対応】【医療的ケアの質を担保するための課題】【医療的ケアニーズの多様性への対応】の5カテゴリーが生成され, 学校職員が感じる困難や不安なことが明らかになった.  これらの結果を踏まえ, 特別支援学校の医療的ケア児の支援のあり方について論じた.
  • Xin WANG, Kazunori TAKEDA
    2022 年 11 巻 p. 29-42
    発行日: 2022/08/30
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    This study is focusing on the campus activity and supporting needs of the visually impaired students who use Braille in higher education in China. The purpose of this study is to obtain the information which is helpful for improving the supporting system and learning environment for students with visual impairment. A survey was performed on 17 students who use Braille. We find out that mobility support and digital braille conversion are most common needs for surveyed students. Personal computer and screen reader are most common assistive devices that students need. The results of this study showed the measures to construct the support system for the visually impaired students based on the rational consideration. Based on the findings from this study, we recommend that universities should focus on providing students with support related to braille version textbooks and support related to extracurricular activities.
  • ―ARCSモデルの4つの側面からの評価―
    山崎 千鶴, 三浦 美環, 平川 美和子
    2022 年 11 巻 p. 43-55
    発行日: 2022/08/30
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、COVID-19の影響により基礎看護学実習Ⅱの臨地実習を体験できなかった学生にフィジカルアセスメントに関連したシミュレーション演習を行い、実習への動機づけや不安の軽減などの効果を明らかにすることを目的とし、学習意欲をデザインするARCSモデルの手法を用いて演習を計画した。演習後、学習意欲を測定するための興味度調査(CIS)とグループインタビューを実施した。 CISの平均点は、『注意』4.15±1.07点、『関連性』4.25±1.01点、『自信』3.28±1.33点、『満足感』4.04±1.16点であった。グループインタビューでは【演習から得られた意欲】【課題の明確化】【演習からの学び】【緊張感のある疑似体験】の4カテゴリーが抽出された。今回の対象学生は、患者対応が初めてのためシミュレーションを使用してもバイタルサイン測定の実施は【緊張感のある疑似体験】になっていた。上手く出来なかった原因を学生なりに理解し、【課題の明確化】につなげ、自信を持って患者の対応を行いたいという【演習から得られた意欲】になっていた。演習後の振り返りでは他学生との意見交換の中での気付きなど【演習からの学び】を深める機会となっていた。
  • -秋田県内特別支援学校への調査から-
    今井 彩, 前原 和明
    2022 年 11 巻 p. 56-67
    発行日: 2022/08/30
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、特別支援学校高等部の現場実習における教員のフィードバックの取組や課題意識について明らかにし、現場実習の効果的なフィードバックの在り方について検討する。そのため、秋田県内全ての特別支援学校15校(分校3校含む)に勤務する高等部教員を対象とした質問紙調査を実施した。その結果、現場実習のフィードバックにおける取組に関する調査では、教員は生徒の進路実現に向け、生徒のキャリア形成に応じた現場実習のねらいを設定し、フィードバック場面でそのねらいに沿った支援を行っていることが明らかとなった。また、現場実習のフィードバックにおける教員の意識に関する調査では、教員は生徒の自己理解を促進させることを意識し、理想と現実の差を埋めるために現場実習先からの客観的な評価を大切にしていることが明らかとなった。これらから、現場実習の効果的なフィードバックの在り方として、生徒本人の主体的な進路選択と社会参加を目指し、生徒のキャリア形成段階に応じながら自己理解を促進させていく取組が重要であると考えられた。
  • -障害種別を横断した教師の実践・親の運動・専門家の参加と教育行政に着目して-
    浜 えりか
    2022 年 11 巻 p. 68-82
    発行日: 2022/08/30
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、日本の通級による指導(通級指導)がどのように開始されるに至ったのか、特にそのはじまりとなる要因を明らかにすることである。現在の「日本型インクルーシブ教育システム」において、通級指導は重要な位置に置かれている。しかし、そのような重要性に比して、これまでの研究では、通級指導の歴史研究が僅かしか見られず、そのモデルはアメリカのリソースルームであるとする研究が見られる。しかし、それらはアメリカの制度から見た研究であり、日本の歴史資料からは検討されていない。そこで本研究では、1993年通級制度化当初、通級指導が適応された言語障害、難聴障害、視覚障害、自閉症/情緒障害に着目して日本の通級指導の始まりの要因を探った。その結果、それぞれの障害種別特有の背景に起因した変遷があったが、共通点として、教師の実践や行動、親の運動、医師や研究者などの専門家の参加と教育行政の動きによる障害種別学級の設置実現の様子が確認できた。 この結果から、日本の通級指導のはじまりの段階には、多くの人々の願いと行動という背景があり、通級指導の制度を作り上げた要因の1つであるであろうことが示された。
  • ―質問項目の分析を中心に―
    上野 惠美, 趙 彩尹
    2022 年 11 巻 p. 83-93
    発行日: 2022/08/30
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    2019年から始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、人々の日常生活が奪われ、行動制限の中で生活することとなった。コロナ禍の中、次世代を担う大学生の新卒採用において、企業等がどのような経験や能力を把握したいと考えているのかを確認し、今後のキャリア教育の内容に反映させることが本研究の目的である。本研究においては、大学生の就職活動の選考における初期段階で、選抜のために使われるエントリーシートに着目した。エントリーシートでは学生生活での経験を問う内容が多いが、コロナ禍の行動制限がある中で、それに答えることのできる内容は、コロナ禍前に学生生活を過ごした大学生と比較すると圧倒的に少ないと考えられる。そのため、エントリーシートの質問項目が大きく変化したのではないかという仮説を立てた。収集したエントリーシートをコロナ禍前後で比較するため、テキストマイニングによって分析を行った結果、コロナ禍前には画一的な質問項目が多かったがコロナ禍後においては、多角的な質問項目が増えたことが確認できた。また、「学業」「興味」「資格」という、コロナ禍においても一人で取り組みやすい質問項目が増えているという、興味深い結果が確認できた。
REVIEW ARTICLE
  • Judging from a Trend of Education Policy and Medical Technology
    Yukino NIITSU, Kazuhito NOGUCHI
    2022 年 11 巻 p. 94-109
    発行日: 2022/08/30
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    In these days, children with muscular dystrophy (MD) tend to enroll in local elementary schools and junior high schools rather than the health impairment children’s schools. However, it is not clear the enrollment status of children with MD in special needs schools, elementary schools or junior high schools had changed. Therefore, we considered a change in school enrolment of children with MD in schools for children with special needs focused on trend of medical technology and educational policy. According to this, it was suggested that school enrollment statue of children with MD changed after the 1980s, and the number of them in each special needs school including illness special needs schools where the most of them had enrolled have decreased. We regarded two following reasons as this change; The number of children with MD who choose local elementary schools and junior high schools have increased with the promotion of inclusive education and the progress of medical technologies, which are indicated in preceding studies. The number of children with MD have decreased with the spread of genetic diagnosis. Therefore, we need to compare the number of children with MD enrolled in each school to clarify the enrollment status of them, and also examine trends in the medical field such as genetic diagnosis, and changes in the educational system and educational environment.
SHORT PAPER
  • ―CRAYON BOOKを用いたデータを中心に―
    宇多川 清美, 小原 愛子
    2022 年 11 巻 p. 110-120
    発行日: 2022/08/30
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    乳幼児時期の概念形成に密接に関わってくるのが環境である。保育の環境は、子どもが人と関わる力を育てていくため、子ども自らが周囲の子どもや大人と関わっていくことができる環境を整えること、と保育所保育指針の総則1)でも述べられているが、その物的環境が概念形成に働きかけるためには、人的環境である大人の関わりが必要となってくる。韓によって開発された構造化された評価ツールCRYON BOOKでは、乳幼児の「概念形成」には、大人の関わり方が重要であり「理解」という意識活動を通して、幼児の「概念形成」を促すとある。そこで、本研究では、保育園での環境が概念形成に与える影響を分析することを目的とした。その結果、環境と日常生活の物的環境から、直接的に概念は形成されるのではなく、理解という大人や周囲の意識活動が必要であるということが明らかとなった。
ACTIVITY REPORTS
  • ―支援者側の要因に着目して―
    藤村 励子, 河合 英美, 舛本 大輔, 郷右近 歩, 野口 和人
    2022 年 11 巻 p. 121-130
    発行日: 2022/08/30
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    脳性麻痺児の中には、コミュニケーションに問題を抱える者が多くいる。筆者らがかかわる機会を得た脳性麻痺児は、特別支援学校中学部に入学してから同高等部を卒業するまでの6年間、学校で全くと言ってよいほど発話を行わなかった。ただし、自宅では自発的に発話を行い家族との会話を楽しんでいた。本研究では対象児がどのような状況で発話を抑制するのかを参与観察を通して明らかにするとともに、かかわり手が対象児に対して性急なかかわりを控えることで発話が行われるかを確認することを目的とした。その結果、①対象児の発話の抑制には場所の要因よりもかかわり手の影響が大きいこと、②かかわり手が性急なかかわりを控えることで対象児の発話が行われるようになることが確認された。対象児の発話を抑制させる要因は、「性急に向かってくるかかわり手が存在する状況や環境」だと考えられた。
  • ―下関市立大学を例として―
    猪又 由華里, 政子 西村
    2022 年 11 巻 p. 131-140
    発行日: 2022/08/30
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    下関市立大学では1991年から外国人留学生の学習や生活を支援する留学生チューター制度が導入されている。留学生チューター制度が留学生だけでなく留学生チューターにとっても教育的意義があることは従来の研究で示唆されており、本学においても同様に留学生チューターに対し様々な教育的意義があると考えられる。また、新型コロナウイルスの影響で海外との人的交流が遮断されている昨今、学内での国際交流や異文化理解の体験の場が求められており、留学生チューター制度にはその役割を担う可能性が十分にあり得るのではないかと考える。一方で、留学生チューター制度が十分機能していない場面も見受けられる。そこで、本稿では、下関市立大学における留学生チューター制度を概観するとともに、2021年度の留学生と留学生チューターへのアンケート調査の結果から留学生チューター制度の現状と課題を明らかにする。また、アンケート調査結果を基に行った2022年度の留学生チューター制度への改善を述べることにより、本学の留学生チューター制度の今後の課題を検討することを目的とする。また、留学生チューター制度の学内での国際交流や異文化理解体験の場としての可能性についての示唆を得る。
  • ―CRAYON BOOKの数概念との関連性―
    岡田 直美, 磯部 一恵, 太田 麻美子
    2022 年 11 巻 p. 141-153
    発行日: 2022/08/30
    公開日: 2022/08/30
    ジャーナル オープンアクセス
    日本では小学校低学年の段階において、算数は「A 数と計算」と「B 図形」、「C 測定」、「Ⅾ データの活用」と分けて教えられており相互に関連性を持って教示されている。特に「B 図形」に関しては、「1.図形についての理解の基礎」として、形とその特徴の捉え方、形の構成と分解、方向やものの位置との関連から理解することが望まれている。 現在、数概念の構成要素として、「図形」をテーマとした乳幼児教育の実践研究が行われている。しかしながら、それは絵や積み木などを活用した遊びの中で行われており、数概念の観点から「図形」の理解を促し、分析した実践論文は少ない。そこで、本実践研究では、2歳児を対象として「図形」をテーマとした実践を行い、対象児に見られた数概念の変化を報告することを目的とした。  図形の特性を意識させるような環境設定、関わり及び実践を行った。その結果、丸が転がることや四角が積み重ねることができること、形の組み合わせにより図形が変化することなど、図形の特性に気づく様子が観察された。しかしながら、丸は転がることや四角は積み重ねることができる、形の組み合わせにより図形が変化する、といった図形の特性に気づく様子が観察された。加えて、副次的評価項目においても、プラスの変化が見られた。今後、統計的な検証も視野に入れて、データを収集することで、効果的な図形のプログラムの開発ができると考えられる。
feedback
Top