日本は世界に類を見ない高齢化社会を迎えようとしており、厚生労働省は日本の医療機関に対し、ベビーブーマー世代が後期高齢者を迎える「2025年問題」に向けたロードマップで、各機関の役割明確化と在宅医療を推進している。
病院内の図書室は、医療法第22条により地域医療支援病院に設置が定められた共同利用施設であり、院内および地域の医療従事者に学術支援を行う役割がある。
また病院内に患者のための図書室(以下、患者図書室)を設置する動きが増加しているが、これは「がん対策基本法」により、がん診療連携拠点病院や自治体には患者への医療情報提供が義務付けられたことや、「健康増進法」制定、患者サービスの一環等の理由による。
病院図書室には、医療における1990年代からの根拠に基づく医療(EBM:Evidence based Medicine)推進の流れを受け、医療従事者や患者への科学的根拠のある情報提供が求められてきたが、一般市民にとっても、健康情報リテラシーの向上は喫緊の課題である。
図書館員の役割として、利用者に積極的に溶け込んで情報サービスを行う「エンベディッド・ライブラリアン」が注目されている。
本稿では、患者図書室の状況や役割を概観し、さらに自治体や公共図書館との連携・患者会や地域などへエンベディッドして活動する図書館員の役割と課題を考察する。
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