情報ネットワーク・ローレビュー
Online ISSN : 2435-0303
19 巻
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
論説
  • 大島 義則
    2020 年 19 巻 p. 1-15
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    本稿は、日本の個人情報保護法に課徴金制度を導入する際の理論上の障害となっている「我が国の法体系特有の制約」の意義を明らかにし、個人情報保護法に課徴金制度を導入することが可能かを検証することを目的とする。

    本稿では、①個人情報保護法の改正過程における課徴金に関する議論を紹介し、②国内における課徴金制度の立法上の先例を確認した上で、③「我が国の法体系特有の制約」の意味内容を明らかにし、個人情報保護法に課徴金制度を導入するための現実的な制度設計を提案する。

  • 渡邊 卓也
    2020 年 19 巻 p. 16-29
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    不正指令電磁的記録に関する罪(刑法19章の2)は、サイバー犯罪条約の要請により、コンピュータウィルスによる被害を防止してプログラムに対する信頼を保護し、情報処理の円滑な機能を維持するために導入された。その客体は、コンピュータを使用者の「意図」のとおりに動作させない「不正な指令を与える電磁的記録」と定義されるが(刑法168条の2第1項1号)、反「意図」性を如何なる基準によって判断すべきかは、必ずしも明らかではない。

    そこで、反意図性要件の意義について、近時の判例を参照しつつ論じた。具体的には、仮想通貨のマイニングを実行するために設置されたコードにつき反意図性が争われた、コインハイブ事件が対象である。同罪の立法経緯や罪質に鑑みれば、規範的観点からみた許容性こそが判断の本質である。判例の示した抽象的な基準はともかく、具体的な判断には問題があり、これを解決するためには立法による対処が望ましい。

  • 尾崎 愛美
    2020 年 19 巻 p. 30-46
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    近時、米国では、反差別運動の高まりを受けて、顔認証システムを犯罪捜査に提供することを停止する企業が散見される。また、サンフランシスコ・サマーヴィル・オークランド・ボストン・ポートランド等、顔認証技術に関する規制を設けた都市も見受けられる。

    報道によれば、既にわが国の捜査機関でも顔認証システムの運用(さしあたり本稿ではこの種の捜査手法を「顔認証捜査」と称することとする。)が開始されているようである。この点、顔認証捜査の被侵害利益に関しては、プライバシーにとどまらず、公平性(フェアネス)や表現の自由といった観点からの検討も不可欠であると考えられる。本稿では、比較的早い段階から顔認証技術が社会にもたらす影響に関する研究が進められてきた米国の議論を参考に—わが国において顔認証技術の適正な利用を進めるにあたっても必要となると思われる—顔認証捜査に対する法的規制のあり方について考察を行った。

  • 栁川 鋭士
    2020 年 19 巻 p. 47-63
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    改正された道路交通法及び道路運送車両法並びに保安基準が2020年4月1日に施行され、日本において、いわゆるレベル3の自動運転車の公道での実用化が法律上可能となった。レベル3の自動運転車の事故における民事裁判においては、事故発生時の運転状況を記録した証拠が特に重要となる。道路運送車両法は作動状態記録装置の設置を義務付けており、ドライブレコーダー、EDRと共に事故状況を再現するための重要な電子証拠となる。これらの電子証拠は、自動運転車の事故状況の立証において決定的に重要となり得ることから、証拠調べ手続における当該証拠の取扱い、とりわけ、その証拠の同一性及び正確な再現性の確保が必要である。そこで、本稿では、刑事訴訟における「証拠の関連性」概念を参考にして、民事訴訟においても、「証拠の関連性」概念による裁判所の裁量規制(考慮要素の提示)を行うことによって、適正な事実認定が確保されることを提唱する。

  • 栗原 佑介
    2020 年 19 巻 p. 64-80
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    本稿は、デジタル遺産のうち、SNSアカウントの法的処理について、アクセス権の「相続」可能性を検討し、デジタルデータとアイデンティティの関係を考察する。

    まず、SNSアカウントへのアクセス権を中心に各種サービスの利用規約を概観し、ドイツの裁判例(Facebook事件)、アメリカのRUFADAA(The Revised Uniform Fiduciary Access to Digital Assets Act)などを取り上げ、諸外国の状況を概観する。

    次に、こうしたアクセス権の相続の問題が、データの企業への一極集中に端を発していることから、データの帰属に関し、自己主権型アイデンティティという考えの紹介と、既に自己主権型アイデンティティの社会実装の取組み、データポータビリティという制度の組み合わせにより、データをめぐる権利関係が自己主権型への転換がなされることを論じる。

研究ノート
  • 西貝 吉晃, 佐藤 健
    2020 年 19 巻 p. 81-120
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    筆者らは民事訴訟における要件事実論をプログラミングするPROLEGというシステムを研究・開発してきている。民事の要件事実論については、それが持つ形式論理的な観点からの多くの議論が既にあるので、それに沿った開発が可能であった。もっとも、それをプログラミングするだけでは民事訴訟に対応するシステムにしかならない。刑事訴訟も、要件効果モデルを採用する実体法に基づいて、民事における主張立証責任に相当する事柄の分配を考える点では民事訴訟に類似するのであるから、理論的にはプログラミングが可能なはずである。しかし、PROLEGは裁判の結論に至るまでの推論過程を可視化させることができるところ、刑事実体法は、刑法総論の体系の下で分析・研究されてきており、プログラミング過程において刑法固有の解決すべき課題があった。本稿では刑法の体系に即した裁判規範としての刑法のプログラミングを行ったので、問題解決の方法を実際のプログラムを示しながら解説したい。これによりPROLEGが刑事訴訟にも対応し、将来的に、教育用のツールや実務支援のための複雑な規定を有する刑罰規定への応用可能性がみえてきた。

  • 清水 翔
    2020 年 19 巻 p. 121-133
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    国際司法裁判所における「サイバー・アトリビューション問題」はサイバー攻撃の匿名性や証拠へのアクセス可能性だけでなく、インテリジェンスを用いたサイバー・アトリビューションの性質や国家の安全保障上の利益といった複合的な要因によって引き起こされる問題である。本稿はそのような「サイバー・アトリビューション問題」の緩和策としてコルフ海峡事件において示された「証拠の偏在」緩和法理の活用を模索すると同時に、同法理の適用上の問題点について検討する。

  • 数永 信徳
    2020 年 19 巻 p. 134-152
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    ブロードバンドの普及や映像配信技術の進展による人々の視聴習慣の変化に対応するため、インターネットを活用した放送コンテンツの同時配信に期待が寄せられている。その一方で、放送コンテンツの同時配信については、同一のコンテンツであっても、著作権法上の課題から、放送と同じコンテンツを視聴できないことがあるという指摘がある。

    そこで、本稿では、IPマルチキャスト放送に著作隣接権(送信可能化権)の制限が認められる著作権法の法的解釈と実務上の運用実態を再検証し、放送コンテンツの同時配信への、レコード製作者等の著作隣接権の制限の適用の可否について考察していくこととする。

    はじめに、著作権法と放送法で異なる「放送」の定義について概観し、次に、IPマルチキャスト放送の法的位置付けについて確認していく。その上で、メディアを巡る新たな技術の進展との関係における著作権法上の課題について、「時間」、「空間」、「内容」の要素に分けて、法制度と実務上の運用実態について分析を行っていく。

  • 時井 真
    2020 年 19 巻 p. 153-166
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    特許進歩性の判断においては、①主引用例を提出し請求項発明と主引用例の間の相違点を認定した上で(第一ステップ)、次いで②当業者が請求項発明を容易に想到することができたかという手順を経る(第二ステップ)。現在、ITや検索エンジンの進展により急速に引用例検索技術が進展して第一ステップの難度が下がり、その結果、相対的に第二ステップの判断の重要性が増している。本稿の第一の目的は、第二ステップの判断の主役の一つである「示唆」の概念の現況を、直近の裁判例から明らかにすることにある。その結果、日本の裁判例では、従来技術に主引用例と副引用例を結びつけ請求項発明を想到する動機付けとなる示唆以外に、逆に引用例と副引用例との結びつきを妨げ、動機付けを否定する逆示唆の裁判例が多数存在することが判明した。最後に補論としてこの第二ステップ(示唆及び逆示唆)と情報ネットワーク社会との関係についても若干考察した。

  • 郭 薇
    2020 年 19 巻 p. 167-183
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    従来の法情報学は、法実務や法学教育を支える情報群を対象としてきたが、メディア報道やネット言説など公共圏における法情報のあり方についての検討を積極的にしてきたわけではない。本稿では、法にかかわる情報が用いられる多様な文脈に着目し、法情報学の可能性を検討する。まず、近時日本の刑事立法を事例に、法情報が大衆化することとの意味とその問題点について検討を行う。次に、実証的な法学研究の成果を踏まえたうえで、社会にとっての法情報の意義を考察する。最後に、法情報の社会効果に関する研究を発展させるため、法情報を分類し、法情報学の課題を再考する。

  • 板倉 陽一郎
    2020 年 19 巻 p. 184-195
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    裁判において、一方当事者が、個人データが含まれる証拠を裁判所に提出することは、しばしば生じている。本稿では、個人データが含まれる証拠の裁判所への提供について、従来の整理を確認した上で、法23条1項2号に該当し、適法であるとの解釈について、条文解釈、訴訟法上の救済手段、十分性認定及び欧州法の解釈との関係から適切であることを論証する。

  • 阿部 真也
    2020 年 19 巻 p. 196-210
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    AIについては社会的に様々な論考がなされているが、AIの新規性は知的創作物を自身で創作できることであると思われる。その為、このAIが生成した知的創作物が何者に帰属するかは大きな課題である。知的財産推進計画2017年及び同2019年では、AIを道具的に使用した場合は著作権が発生する一方、AIによる自律創作(AI創作物)の場合は著作権が発生しないとされた。しかし、両者の境界は曖昧であり、また著作権が発生しないAI創作物においても著作権法以外の観点から、何者に帰属するかを定める必要性がある。本稿は、知的財産推進計画の内容に言及しつつ、先行研究を調査し、それらを主に行動の動機付けの面から考察して、知的財産推進計画への提言を行うものである。

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