情報ネットワーク・ローレビュー
Online ISSN : 2435-0303
21 巻
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
論説
  • 小西 葉子
    2022 年 21 巻 p. 1-13
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    本稿は、刑事事件の諸段階において用いられる、情報収集を伴う技術的手段に組み込まれた自動データ処理機能について、その法的課題を論じるものである。検討手段として、日本の通信傍受法、ドイツの刑法及び刑事訴訟法において具体化された個別事例を用いる。具体的には、日本の通信傍受法における「特定電子計算機」、ドイツの刑法及び刑事訴訟法における「電子的足かせ」の自動データ処理機能を取り上げ、両者において自動データ処理がいかなる役割を果たしているのか、法的観点から検討した。結論として、自動データ処理機能が見せる二つの異なる機能(国家機関側の利便性向上機能と、被告人等を含む刑事事件の関係者の人権保障機能)がそれぞれ有する法的課題を明らかにしたうえで、そのものは中立的な意味しかもたない技術的手段の法的評価の枠組みを構造化する。

  • 原田 伸一朗
    2022 年 21 巻 p. 14-27
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    本稿は、コンピュータグラフィックス(CG)を用いて制作された画像の児童ポルノ該当性が争われた訴訟を手がかりに、CGで描かれた人物の実在性・本人特定性といった被侵害主体の認定に関わる法理を検討したものである。被写体児童の実在性を要求する日本の児童ポルノ規制においては、児童本人を特定できない場合に、児童の実在性をどう立証するかという手法に課題がある。さらに、ディープフェイク、バーチャルヒューマンなど、現実の姿態と見紛うほどに写実的な画像・動画をCGで表現する技術の発達により、画像・動画上の表象そのものから、描かれた人物の実在性を立証することがより困難となっている。そのような状況を踏まえ、CGによる人物表現の法的評価に関する本訴訟の射程と今後の課題を指摘した。

  • 村上 康二郎
    2022 年 21 巻 p. 28-47
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    アメリカでは、プライバシー権の根拠について、信認義務説またはPrivacy as Trust論と称される学説が有力に主張されるようになっており、我が国の学説にも影響を与えるようになっている。もっとも、信認義務説については、アメリカにおいても批判がなされているし、日米の制度的背景の相違から日本への導入について批判的な見解も存在する。そのため、アメリカの信認義務説を日本に導入することの是非については、日米の制度的背景の相違を踏まえた慎重な検討が必要である。本稿は、現時点において、アメリカの信認義務説をそのまま我が国に導入するのは難しいという立場に立つものである。むしろ、信認義務説からどのような示唆を獲得するのかということが重要である。特に、プライバシー権の根拠について、我が国では、多元的根拠論が有力化してきているが、この多元的根拠論に対して、信認義務説は有益な示唆を与えてくれるものと考えられる。

  • 高橋 郁夫
    2022 年 21 巻 p. 48-67
    発行日: 2022/12/15
    公開日: 2022/12/23
    ジャーナル フリー

    2020年には、電子署名法における同法の電子署名の概念や推定効の意味について政府から公表されたいわゆる2条Q&A、3条Q&Aをはじめとして、熱心な議論がなされた。しかし、それらの内容は、制定時における比較法的な分析について配慮がなされていない。制定時において十分な比較法的な分析がなされていたことから、電子署名の解釈は、国際的な定めと整合性に注目してなされる必要がある。その場合に、署名者から分析がなされるべきこと、3条の本人とは、署名者をいうこと、推定効については、UNCITRAL電子署名モデル法の4要件の解釈と整合的な解釈がなされるべきこと、電子署名の概念は、実在人との同一性の論点は含まないこと、が特徴となる。もっとも、現在においては、電子取引における実在人と同一性の確認に関する法的規制等についての議論のほうが有益である。

研究ノート
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