情報ネットワーク・ローレビュー
Online ISSN : 2435-0303
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論説
  • 小西 葉子, 芝池 亮弥, 鄭 舒元, 曹 洋, 吉川 正俊
    2023 年 22 巻 p. 1-23
    発行日: 2023/11/17
    公開日: 2023/11/17
    ジャーナル フリー

    本稿は、法学の研究者と情報学の研究者が共同して、差分プライバシーを社会実装する際の法的課題を検討することを通じて、「高度化するデータ活用と個人情報保護の均衡を保つ」という社会的要請に応える研究の成果を示す。

    差分プライバシーとは、攻撃に対して返されるクエリ結果にノイズを付加することを要求し、プライバシー保護技術の安全性を定義する指標である。

    確率的意味を持つパラメーターによりプライバシー保護の程度が左右されることから、法的評価が困難な差分プライバシー技術であるが、本稿は差分プライバシーを用いたプライバシー保護の意義と限界に着目し、その法的な位置づけを明らかにする。

    研究手法としては、米国の国勢調査において実装された差分プライバシーをめぐる法的紛争の検討や、日本法との接続の観点から、高度な技術的手段に求められる透明性の水準・性質などの諸問題に迫る。

  • 荒岡 草馬, 篠田 詩織, 藤村 明子, 成原 慧
    2023 年 22 巻 p. 24-44
    発行日: 2023/11/17
    公開日: 2023/11/17
    ジャーナル フリー

    本稿は、「声の人格権」という新たな権利概念について検討するものである。近年、音声合成技術が急速に進歩しており、関連する製品やサービスも数多く登場している。これらの技術が誤った使い方をされた場合、人の声を無断で再現し、本人の意に反した発言をさせるなどの運用がなされる危険性があり、既に国内外で問題となった事例もある。従来、我が国において、人の容姿に対しては「肖像権」という人格権が認められてきたが、人の声に対して人格権を認めた判例はなく、学説においても十分な議論が蓄積されていない。本稿は、そのような「声の人格権」の議論を惹起することを目的とする。

  • 松尾 光舟, 斉藤 邦史
    2023 年 22 巻 p. 45-66
    発行日: 2023/11/17
    公開日: 2023/11/17
    ジャーナル フリー

    本稿では、アバターに対する法人格付与の意義、及びいわゆる「中の人」に対する責任追及について検討し、以下の考察を得た。

    第一に、法人格付与の主要な意義は、財産の隔離と構成員の有限責任にあり、その設立およびガバナンスの設計には経営破綻の局面を想定する必要があるから、仮に立法により法人格を認める場合でも、現行の法人制度との平仄を確保するべきである。

    第二に、アバターの法人に対する、自然人(「中の人」)による関与の形態は、所有者(受益者)または経営者(受託者)としての関与と構成したうえで、現行の法人制度と同様の責任追及を認めるべきである。

    第三に、法人格のないアバターも、構成員から独立した社団(または財団)としての社会的な実態を有する場合には、権利能力のない社団(または財団)として、固有の人格権を認める余地がある。

  • 松尾 剛行, 小松 詩織
    2023 年 22 巻 p. 67-89
    発行日: 2023/11/17
    公開日: 2023/11/17
    ジャーナル フリー

    ブレインテックと呼ばれる脳神経情報を利用した技術の進展に伴い、脳神経法学と呼ばれる法分野が注目を集めている。本稿は、プライバシーと個人情報保護法の領域において脳神経情報がどのように取り扱われるべきかについて検討する。具体的には、入力型、出力型及び介在型の3類型の事例を用いて、個人情報保護法と民事法上の情報プライバシーの観点から分析する。

研究ノート
  • 河井 理穂子
    2023 年 22 巻 p. 90-103
    発行日: 2023/11/17
    公開日: 2023/11/17
    ジャーナル フリー

    米国の子どものオンラインサービス利用に関するプライバシー保護法制度は、古くから学校教育における子どもの教育記録の保護を目的としたFERPA、消費者保護の立場から主に学校教育ではない場面での子どものオンラインサービス利用におけるプライバシー保護を目的としたCOPPAという、成立の経緯が異なる2つの連邦法を中心として成り立っている。そして2つの連邦法を、各州が州法によってそれぞれ補完している。本稿では、学校教育以外と学校教育の2つの場面において、米国連邦法、州法がどのような子どものデータに対してどのように保護を行っているのか、その現状についてカリフォルニア州を例に検討をするものである。また、近年の情報技術の急速な発展により、学校教育や子どものオンライン利用の環境が急速に変化していることに伴う連邦法、州法のそれぞれの課題について指摘する。最後に、日本の子どもの個人情報・プライバシー法制度への米国法からの示唆を明らかにする。

  • 緒方 健
    2023 年 22 巻 p. 104-120
    発行日: 2023/11/17
    公開日: 2023/11/17
    ジャーナル フリー

    2020年初頭からの世界的なCOVID-19感染症蔓延時、台湾では2022年春まで感染者を低く抑え込み、世界の注目を浴びたが、感染症対策の一環としてスマートフォン・携帯電話を通じた情報の取得と利活用が行われていた。今後日本で危機管理にスマートフォン・携帯電話を通じた情報の取得と利活用を行う際の示唆とすべく、情報利活用の先進地ゆえに課題先進地でもある台湾の事例を素材に、明らかになった課題について若干の検討を行う。

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