肺結核に関する研究は, 化学療法による疾病の慢性化と外科療法の普及に伴い, 肺機能に対する考慮が要請されるようになつた. 肺機能検査方法としては古くよりHutchinsonの肺活量計による測定が行われてきたが, 1941年Cournand1)が静脈カテーテル法を臨床的に応用するに至り, 循環面における心, 肺を中心とする病態生理学的研究が盛んとなり, 肺の機能についても, 換気機能, 肺胞機能, 肺循環の三者が不即不離の関係にあることが明らかにされ, いわゆる心肺動態として新しく取り上げられるようになつた. 1949年American Trudeaun Societyの肺機能委員会2)が発足し, 臨床的検査法と研究的検査法とに分け, 肺機能を判定する上に最小限度の必要検査事項を挙げた. 1952年笹本3)が紹介するに及んでわが国においてもようやくこれについての研究が行われるに至り, 種々の例についての報告がある.
J. S. Gray, 4) Needham5)は健康人における換気機能の正常範囲を報告し, また虚脱療法の中, 肋膜外気胸についてはCutler, 6)川村7)の報告があり, 肋膜外気胸は選択的虚脱と, 虚脱の可逆性, 肺機能の損失の少ないことなどにより幾多の利点を有していることを強調したが, 人工気腹についても百瀬, 8) Siebens9)10)の報告があり, 人工気腹のみの場合と, 人工気腹に横隔膜神経捻除術を加えた場合との肺機能の差異について述べた. 肺機能の本質は肺胞における空気と血液とのガス交換であつて, 換気機能, 肺胞機能, 肺循環の三つに分つて考えることができるが, これらの中のいずれが障害されても正常な呼吸機能を維持することができない. しかしあと二者は手技が煩雑であり, 臨床的に一般に施行するには適さない. 従つて著者は換気機能を主として肺結核患者の肺機能の検索をした.
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