習癌の穿孔は非常に希で, 国立弘前病院外科における最近11年間の胃癌手術例402例中穿孔例は4例にすぎない. 穿孔率1.0%であつた. 本邦報告例は1976年10月まで, 自験例4例も含め, 225例である. これらの報告例について臨床的検討と若干の文献的考察をおこなつた.
1) 本邦における胃癌穿孔率は0.56%であつた.
2) 年令は51才以上の癌年令層が68.8%を占め, 男女比は4.5: 1と男に多い.
3) 穿孔誘因は特にないものや不明のものが71.2%と大部分であるが, 誘因の明らかなものの中では衛前検査など医療行為に関連したものが18.9%もあつた.
4) 穿孔部位は胃体部で全体の59.1%, 前壁穿孔は全体の46.1%で, 胃体部前壁穿孔が最も多く29.9%であつた.
5) 穿孔状況は汎発性腹膜炎を呈したのが59.7%で最も多く, 被覆穿孔・膿瘍形成が28.5%, 他臓器への穿孔が11.8%であつた.
6) 穿孔胃癌の性状はBorrmann III型が59.7%を占め, 組織学的には腺管腺癌が77.4%で最も多く, 浸潤度からはINFγに, そして髄様型に穿孔が多かつた.
7) 手術々式は予後を左右し, 胃切除群では予後極めて良好であるが, 非胃切除群, 単開腹術においては予後不良である.
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