臨床薬学の概念が日本に紹介されて, 10年の月日が経過した. この間, 数多くの知見や, 批判や, 憶測といつた情報が, 我々の目や耳に入つている. 本年に入り, 臨床薬学に関する単行本が出版きれるに及び, 最早, 好むと好まざるとにかかわらず, 臨床薬学の概念は, 我々の意識の中に, 何らかの形で, 根を下ろしたといつてよい. 概念としての導入はともかく, 実践への導入となると, なかなか至難なことである. 政治, 経済, 教育といつた社会的環境, 価値観, 民族意識など, 我が国のそれとは, かなり相違しているからである. しかし我々の職能のカテゴリーの中には, 幾多の近似点を見出すことが出来ることも事実である. 臨床薬学発展の歴史をたどり, 現状から将来への展望を予測することは, 意義あることである. そして, 日本では将来どのような形で, 定着され得るかについて考察することも, 興味深いと思い, 臨床薬学についての, 研究調査の一端を述べた.
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