医療
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33 巻, 8 号
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  • 駒沢 勝, 村山 直弘
    1979 年 33 巻 8 号 p. 721-728
    発行日: 1979/08/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    人の病気の胸水ライソザイム
    血清, 尿, 髄液, 胸水中のライソザイム(ムラミダーゼ)測定は, 種々の疾患を性格づけるのに用いられてきた. たとえば, 血清ライソザイム濃度上昇は, 肺結核, サルコイドーシス, クローン病などの肉芽腫性病変で報告されており, 疾患の活動性をも反映していると考えられる. しかし血清ライソザイムは, 好中球回転率, 腎機能により変動しやすく, そのため, 単球性白血病のみ診断的価値が認められていた. 最近, 胸水ライソザイム測定が結核性胸水の補助診断となることが示された.
    このReportは, 種々の原因による胸水合併例, 110例の血清及び胸水ライソザイム測定結果に基づくものである. 結核性胸水中のライソザイムは, 原発性肺癌, 転移性肺癌, 結合組織病, 非特異的胸水, うつ血性心不全のそれより有意に高値である. また, 結核患者では胸水―血清ライソザイム比が他の患者より有意に高値であつた.
    ライソザイムは, 免疫組織化学的に結核における類上皮性肉芽腫, 結核痛巣に隣接するリンパ節内の活動性マクロフアージ, 胸腔内膿汁中顆粒球内に認められ, 肺癌の腫瘍細胞には認められない.
    胸水ライソザイム測定は, 結核性胸水の鑑別診断上, 簡便かつ敏速な方法である. (図8, 表2, 文献25)
  • 岡田 弘, 猿田 栄助
    1979 年 33 巻 8 号 p. 729-732
    発行日: 1979/08/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    悪性単クローン性γグロブリン血症16例の血球細胞に見出された, monoclonal gammopathy chromosome (MG)と, acrocentric large chromosome (Acr)について記載するとともに, その由来と意義について考察を行つた.
    MGは1-5番染色体と, 他の染色体との転座により成立し, Acrは形態が同様でも, 種々の成立機転があると思われる. これらの異常染色体は, 断裂が基本となつているが, その原因としてウイルスを否定出来ない. しかし一方, 良性単クローン性γグロブリン血症にも, これらの異常染色体の見出されている事実は, 単クローン性γグロブリン血症とこれら異常染色体との密接な関連が示唆される.
    再生不良性貧血とSLEを伴つた症例における血清中造血阻止物質
    抗リンパ球グロブリンあるいは大量のCyclophosphamideと共に, 骨髄移植した免疫抑制状態にある, ある種の再生不良性貧血症例の自己軽快例が観察され, 再生不良性貧血が免疫学的仲介されることが示唆された. またKrantzはPure red cell aplasiaが赤血球先駆細胞に対する補体―依存性細胞毒性抗体によつて仲介されることを証明し, Clineらも最近episodic panleukopeniaが骨髄性先駆細胞(CFU-c)の免疫学的抑制によると報告した. 著者らも自験例で血清中に補体―依存性IgG抗体が存在したため, 正常ヒト骨髄細胞のコロニー形成が阻止された貧血症を経験し報告している. 症例は36才♀黒人で, 骨髄低形成性が免疫学的仲介によるものか否かを検索するため骨髄培養を施行し, in vitroで骨髄・赤血球系コロニー形成が血清阻止物で減退することが示されたという. すなわち患者血清と正常骨髄細胞ならびに補体で培養するとき, 骨髄系コロニー形成は95%低下し, また患者血清+補体と正常ヒト骨髄をmethylcelluloseで培養すると赤血球系コロニーは98%に低下する. この阻止物活性は血清免疫グロブリンをGel濾過法で分析するとIgG分画に存在した. そこで本例に血漿交換療法を施行したところ, 阻止物質値の低下, 血球数の正常値に復帰することが認められたという. 更に追加せる研究では, 同種異型骨髄の阻止物質はHLAあるいはB-cell抗原を指向せず, 患者回復期骨髄と貯蔵しておいた血漿と補体で培養しても骨髄系コロニー形成が減少しなかつた. 以上のことからこの阻止物質は正常ヒト造骨先駆細胞上に広範に分布している未知の抗原に対して指向している同種異型抗体ではないかと考えられると述べている. (表3, 図4, 文献21)
  • 日比野 進
    1979 年 33 巻 8 号 p. 733
    発行日: 1979/08/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
  • 下山 正徳
    1979 年 33 巻 8 号 p. 734-740
    発行日: 1979/08/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    新しく開発された免疫学的手法を用いて, 造血器腫瘍細胞の膜性状, 膜抗原を分析した結果, リンパ系腫瘍細胞はT細胞型, B細胞型, non T non B細胞型に大別されること, 骨髄性白血病では白血病細胞の分化の程度に従つて膜抗原, 膜性状が異なること, 特に慢性骨髄性白血病の急性転化時の芽球は, 幹細胞levelでの腫瘍化と考えなければ説明できない新しい事実が明らかにされている.
    このような研究を通し, 造血器腫瘍細胞の発生母細胞, 腫瘍細胞の分化度が明らかにされると共に, 新しい疾患分類が提唱されている. このうち特記すべきはT細胞型腫瘍のうちの成人多形細胞型と分類される病型は, 九州南部出身者に多く, 皮膚浸潤, 白血化の外, 高カルシウム血症, 好酸球増多症, 間質性肺炎などの合併などが多く, わが国特有の疾患として注目されている. 以上の点を中心に, 最近注目されている造血器腫瘍を巡る新しい展開についてふれた.
  • 瀬崎 達雄
    1979 年 33 巻 8 号 p. 741-746
    発行日: 1979/08/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    血液疾患において, 免疫グロブリン(以下「Ig」と略す)産生機構と関係の深い白血病, 悪性リンパ腫を中心に, 低Ig血症, 単一クローン性Ig血症について検討した. 白血病, 悪性リンパ腫では治療前より既にIgが砥下し, Ig Class別にみると両疾患群の間および各群の病型によつても特徴的変化が認められ, 特に白血病ではIgA SystemにおけるIg産生の抑制, または障害機構の存在が推定された. 単一クローン性Ig血症は, 特にリンパ性白血病, 悪性リンパ腫で頻度が高く, Ig class別では微量のIgMが特異的に多く, 治療前のみでなく寛解時にも認められた. その出現機序としては, まずIg産生細胞の増殖調節機構に破綻を来し, 次いで, クローンの不均衡が増強されたためと考えられる. 骨髄腫の化学療法については, 単独療法に比べ多剤併用療法の効果を認めたが生存期間はいまだ延長せず, その病体像の多様性に適したB細胞系腫瘍としての治療法が必要であろう.
  • 速水 一雄
    1979 年 33 巻 8 号 p. 746-752
    発行日: 1979/08/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    血液凝固機転においてFletcher因子(プレカリクレイン), Fitzgerald因子(高分子キニノーゲン)が発見され, これらの因子は第XII因子とともに, 凝固系, 線溶系, キニン系, 補体系の活性化に互いに関連して生体の防衛反応に関与していることがわかつてきた. また, 凝血因子を免疫学的に測定できるようになつた結果, 今まで凝血因子の先天性欠乏症であると考えられていた先天性凝固異常症の中には, 凝血因子としての蛋白は作られており欠乏してはいないのあるが, 分子構造に異常があるために凝固活性を示さない一種の分子病であるとみなされるものがあり, その代表的なものが血友病である. 最後に臨床各科に関係の深い血管内凝固症候群の診断の要諦について述べる.
  • ―その成因と治療の現況―
    広田 豊
    1979 年 33 巻 8 号 p. 752-760
    発行日: 1979/08/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    諸外国に比し我が国に多発する再不貧は造血幹細胞の発育障害に起因する造血障害であることが近年確認された. 同時にこれをとりまく微細環境の変化も成因にある関与をもつことが推測されているが, 主役は幹細胞にある. クロラムフエニコールはじめ多くの化学物質や放射線が幹細胞に障害を与えるが, 近年Tリンパ球の異常が再不貧の発症に影響をもつ可能性が浮上してきた. 成因論的立場からみて, 再不貧の根本治療は骨髄移植にある. なお実施臨床の上から造血亢進を期待して蛋白同化ホルモンの長期投与が有効性の高いことが確認された.
    溶貧は赤血球寿命短縮を招来する病態の総称で, 我が国の病型として遺伝球状赤血球症と自己免疫性溶血性貧血の頻度が高く, 前者は先天性の膜異常に基因し, 摘脾にて貧血改善, 後者は自己抗体の産生に基因する後天性溶貧で, 副腎皮質ステロイドに奏功することが多い.
  • 岡田 弘
    1979 年 33 巻 8 号 p. 761-763
    発行日: 1979/08/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    慢性骨髄性白血病(CML)に対する化学療法の進歩にもかかわらず, 患者の生存期間には著明な延長が認められていない. それはCMLの急性転化の治療が困難のためである. 最近CMLの急性転化時には, リンパ芽球, 単球様の形態を示す芽球の出現する例のあること, TdT活性やリンパ球特有の表面形質を保有する芽球のあること, 染色体所見にはPh1染色体のほか, 異数性が加わることが認められた. これらのことは急性転化が, 慢性期におけるよりも, 未熟な段階の細胞に, 新しく加わつた変化であることを意味する. 以上の所見をも考慮して, CML患者の生存期間の延長のためには, まず急性転化の防止として, busulfanの微量投与, および摘脾療法が行われている. また急性転化治療成績の向上のために, 急性転化の早期診断, 早期治療, V (EM) P併用療法が効果を示している. さらに骨髄移植や免疫療法も試みられており, 将来それらの成果が期待されている.
  • 今村 幸雄
    1979 年 33 巻 8 号 p. 764-770
    発行日: 1979/08/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    免疫グロブリン(以下「Ig」と略す)の構成polypeptideが遊離状態で血清や尿に出現してくる病態が知られてきたが, その代表的な疾患であるH鎖病についてその概要を述べた.
    H鎖病はIgのH鎖, それもそのFd部に種々の欠損がある異常なH鎖のみが単クローン性に多量に血清(あるいは尿)中に出現してくる病態である. 現在, γ鎖病, α鎖病, μ鎖病が知られているが, いずれも幼若リンパ球から形質細胞にいたるBリンパ球系細胞の増殖性疾患である. その臨床像はそれぞれに特徴があり, γ鎖病は悪性リンパ腫に類似し, α鎖病は若年者に多く, 病変が腸管に限局し, malabsorption Syndromeを主症状とし, μ鎖病は慢性リンパ性白血病の病像をもつものが多い. H鎖病はいずれも現在のところ希な疾患であるが, その臨床的, 生物学的意義は大きいものがある. また, 本症の特異な蛋白像から見逃されている症例が少なくないであろうという点を指摘した.
  • 酒井 秀章, 武田 久雄, 田中 久重, 八幡 順一郎, 森 和夫, 鈴木 宗三, 清野 保雄, 猿田 栄助
    1979 年 33 巻 8 号 p. 771-775
    発行日: 1979/08/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    先天性第X因子欠乏症は本邦では報告されているのが5例のみで極めて希な疾患である. その4番目の症例が1977年8月(当時17才)に左大腿骨頸部を骨折し, 約1ヵ月間保存的に治療したが不成功で, 観血的整復固定術(Jewett nailによる内固定)を行つた. その際の止血管理について検討した. この疾患で鼻出血か関節出血では第X因子活性10~20%で止血が期待出来るが, 大手術に関する報告はない. 手術症例の豊富な血友病の止血管理に関する報告も参考にし, 術中第X因子活性を100%, 術後3日間を50%以上, 更にその後2週間は30%以上に維持することを目標にした. その結果, 十分な止血効果が得られた. 第X因子の補充は漸減し5ヵ月間続けた. 術後16日目より訓練をはじめ, 1年後に患肢へ体重の3分の1までの荷重が許され, 両松葉杖による歩行訓練を行うまでになつた. 濃縮製剤の大量投与による副作用もみられず, 順調な経過をとつている.
  • 二村 敦朗, 堀部 廉, 松井 順五, 古田 富久, 田口 徹彦
    1979 年 33 巻 8 号 p. 776-778
    発行日: 1979/08/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    乳幼児の頭蓋内出血には, 血友病など血液凝固系疾患によることがある. 術前に十分なチエツクをした上, 補充療法のもとに積極的な手術的治療を行うべきである.
    今回我々は, 術前血友病Aと診断されていなかつた6ヵ月男児に発症した硬膜下血腫に対し, 新鮮血輸血のみで手術を行い, 幸いにも救命したので, 症例を報告するとともに若干の考察を行つた.
  • 井原 義行, 近藤 渓, 水口 豊, 山田 正一, 西村 進, 長岡 久雄, 朝山 均, 福井 一彦, 鍋島 尋文, 木船 雅一, 佐藤 清 ...
    1979 年 33 巻 8 号 p. 779-785
    発行日: 1979/08/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    76才, 婦人に見られた免疫溶血性貧血症例を報告した. 最祖近医により血清総ビリルビン2.3mg/dl, 直接ビリルビン0.3mg/dlが注目されて当院に紹介された. 入院当初寒冷凝集素価が256倍であつたが漸次正常となつた. 入院時,赤血球数227×104, 白血球数2200, 血小板数4.9×104であり, 骨髄像では正赤芽球の増殖が認められた. 赤血球滲透圧抵抗の軽度減弱を認め, 赤血球寿命T1/2は18日であつた. ルチンクームス試験では直接, 間接共に陰性であるが, 4℃では両者に弱陽性を認める. 抗グロブリン試験, 抗C3試験では抗人全血清, 抗IgG血清, 抗IgA血清, 抗IgM血清及び抗C3血清との反応を検討したが, 抗全血清, 抗IgM及び抗C3血清で直接試験陽性であり, 抗IgM血清で最も強い. 本例はAIHA, IgM+Cと考えられた. 諸種薬物療法により著効は得られていない. なお末梢血網状球は300‰であつた.
  • 今井 道代, 中山 仁, 日野 理彦, 福井谷 祐一, 川戸 正文, 伊藤 宗元
    1979 年 33 巻 8 号 p. 786-789
    発行日: 1979/08/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    原発性寒冷凝集素症は, 比較的頻度の少ない疾患であり, 本邦では, 我々が文献上調べ得た限りでは, 15例を数えるに過ぎない. 最近我々は, 77才の男性で, 腹壁の巨大血腫を主訴とする原発性寒冷凝集素症の1例を経験した.
    本症例の寒冷凝集素価は著しく高値であつたが, 溶血は軽微であつた. またその抗赤血球自己抗体は, IgMで補体結合性があり, 抗I特異性を示した. 主訴としてみられた腹壁の血腫は, 寒冷曝露時の赤血球凝集により生ずるものと考えられるが, 本邦報告例15例をみるに, このような血腫形成を来した症例は全くなかつた. 治療としては, 副腎皮質ホルモン, melphalanその他の有効例が報告されているが, 本症例においては, これらの治療効果は明らかでなかつた.
  • 木村 圭志, 三嶋 英一, 中路 丈夫, 本多 邦雄, 紫藤 忠博, 園田 憲章, 桑原 正三郎
    1979 年 33 巻 8 号 p. 790-794
    発行日: 1979/08/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    再生不良性貧血の妊娠合併例の報告は数10例報告されているが, 予後不良のものが多い傾向にあつた. 近年再生不良性貧血の治療に副腎皮質ホルモン, 蛋白同化ホルモン, 男性ホルモンが導入されて, その有効性が認められるとともに, 再生不良性貧血の妊娠合併例の母・児の予後も改善の傾向にある. しかし, 多くは妊娠した後, たまたま再生不良性貧血と診断された場合が多く, 再生不良性貧血の経過中に妊娠, 分娩を管理するには臨床的にいろいろの問題があるといえる.
    今回, 私共の経験した症例は, 20才で発病, 22才で結婚, 24才で妊娠するという経過をとり, 経膣満期分娩にて正常女児(2600g)を娩出しえたもので, 母・児共その後の経過は順調であり, 臨床上, 貴重な症例である.
  • 岡本 司, 片山 雅博, 国友 忠義, 猿田 栄助
    1979 年 33 巻 8 号 p. 795-798
    発行日: 1979/08/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    骨髄性白血病でリンパ節腫大を来す症例は希ではないが, 白血病と悪性リンパ腫との共存例は希である. 8才男児で急性骨髄性白血病とリンパ節の細網肉腫の共存した1生検例を報告する. 末梢血及び骨髄にみられた骨髄芽球にはペルオキシダーゼ陽性顆粒がみとめられ, また, 鼠径部リンパ節生検により細網肉腫と診断された. 肉腫細胞にはペルオキシダーゼ反応は陰性であつたが, 蛍光抗体法によつて免疫グロブリン(IgM)産生が証明されB-cell由来を示唆する所見であつた. 肉腫には組織学的並びに電顕的にPlasmacytoidな細胞の混在がみられた.
    骨髄性白血病と細網肉腫の共存について若干の文献的考察を加えたが, 本症例では骨髄芽球と肉腫細胞を同一視するのは困難で同一原因が一方では骨髄に作用し急性骨髄性白血病を発生させ, 他方でリンパ節に働き細網肉腫を誘発したとも考えられる.
    ぶどう球菌性IgE抗体
    高IgE血症とぶどう球菌感染症
    1966年Davisらは慢性湿疹, 反覆性ぶどう球菌感染症(「ぶ菌」と略す)と寒冷ぶ菌膿瘍を合併した異常炎症反応の2少女例(Job's症候群)を報告した. Clarkらも同様の臨床症状の1少女例に多核白血球の化学走性(Chemotaxis)の低下症を認めた. その他細胞性免疫異常例も報告された. しかしJob's症候群の免疫病理に関してはいまだ不明である. 多核白血球化学走性の低下は本症候群の症例に必発ではなく, 高IgE血症が恒常的にあるため, 著者らはIgE抗体についてRadioimmunoassayを使用し特殊性を検討したところ, 本症候群症例の血清中のIgEクラスはStaphy1ococcus aureusに対する抗体があつた.
    従つて本症候群の病囚はHistaminが「ぶ菌」抗原による肥満細胞―結合―抗ぶ菌IgEと交叉結合するため, 多核白血球の生理的機能が障害されて, 「ぶ菌」の効果的排除が出来ず, その上局所の抗原の持続は一層の白血球の貯積を促し, 膿瘍の増大を来すという. またこの膿瘍が主として皮膚と肺に発症するのは肥満細胞が豊富な臓器なためであるとし, さらにIgE―依存性―肥満細胞仲介性の白血球機能の異常は, リゾチーム酵素を遊離させるため炎症反応を変化させるのであろうと推論し, 本症候群の本態は白血球の化学走性の異常ではなくて, Staph. aureusによるIgE抗ぶ菌抗体の形成が異常免疫反応を惹起すると結論している. (表2, 図1, 文献31)
  • 依田 哲, 大久保 佐助, 小宮山 淳, 猿田 栄助
    1979 年 33 巻 8 号 p. 799-802
    発行日: 1979/08/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    Down症候群に合併する先天性白血病に関して, 最近長尾らのいうtransient abnormal myelopoiesis (TAM)という概念が注目され, 白血病様血液像を呈する疾患群の一部は, 白血病とは区別して取扱われている. 我々は, Down症候群で, その新生児期に白血病様血液像と黄疸を認め, TAMと考えた症例を経験し, 電顕的観察を行つたので報告した.
    症例は, 21 trisomyのDown症候群男児で, 入院時末梢血で白血球数は59,800, 約50%に骨髄芽球ならびに前骨髄球を認めた. 末梢血幼若細胞の電顕的観察では, 白血病細胞に見られるような異型性は認められなかつた. その後約1ヵ月後に末梢血の異常所見は無治療で正常化した. なお, 黄疸と肝機能障害は約3ヵ月後に正常化したが, HBs抗原は陰性で, 黄疸の原因は不明であつた.
    脾腫を伴わないFelty症候群
    Felty症候群はロイマチ性関節炎, 顆粒球減少症と脾腫を伴う症候群である. 近年これらの症例には抗顆粒球抗体が存在することが示唆する臨床・検査室所見が多い. 著者らも既に顆粒球―結合IgGの量的のimmunoassayが本症を規定するために有効であることを報告した. 今回血清反応陽性―変型性関節ロイマチ症, 重症顆粒球減少症があるが, 脾腫を伴わない症例(73才♂)を観察, 顆粒球―結合IgGと血清抗顆粒球抗体について検索した. 脾摘前はこの患者の顆粒球上では, 細胞ごとIgGは73から110×10-14gであつた. 典型的Falty症候群(16例)では22から220×10-14gであり, 単なるロィマチ性関節炎では20×10-14g以下であつた(21例).
    正常供血者および脾摘後のparaformaldehyde-fixed granulocytesと脾摘前の患者血清とで培養すると, ロイマチ症例から得たコントロール血清より以上の一層のIgGの結合がみられた. 同様の成績は典型的Felty症候群の血清とparaformaldehyde-fixed granulocytesで培養した時にもみられた. 以上の成績は脾腫を伴わない本例のごときロイマチ性関節炎の症例のあること, およびかかるin vitroの検索は本症の経過を限定するのに有効であると述べている. (表2, 文献9)
  • 8. 免疫学的診断法
    大倉 久直, 向島 達
    1979 年 33 巻 8 号 p. 804-805
    発行日: 1979/08/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
  • 1979 年 33 巻 8 号 p. 806-808
    発行日: 1979/08/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
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