人の病気の胸水ライソザイム
血清, 尿, 髄液, 胸水中のライソザイム(ムラミダーゼ)測定は, 種々の疾患を性格づけるのに用いられてきた. たとえば, 血清ライソザイム濃度上昇は, 肺結核, サルコイドーシス, クローン病などの肉芽腫性病変で報告されており, 疾患の活動性をも反映していると考えられる. しかし血清ライソザイムは, 好中球回転率, 腎機能により変動しやすく, そのため, 単球性白血病のみ診断的価値が認められていた. 最近, 胸水ライソザイム測定が結核性胸水の補助診断となることが示された.
このReportは, 種々の原因による胸水合併例, 110例の血清及び胸水ライソザイム測定結果に基づくものである. 結核性胸水中のライソザイムは, 原発性肺癌, 転移性肺癌, 結合組織病, 非特異的胸水, うつ血性心不全のそれより有意に高値である. また, 結核患者では胸水―血清ライソザイム比が他の患者より有意に高値であつた.
ライソザイムは, 免疫組織化学的に結核における類上皮性肉芽腫, 結核痛巣に隣接するリンパ節内の活動性マクロフアージ, 胸腔内膿汁中顆粒球内に認められ, 肺癌の腫瘍細胞には認められない.
胸水ライソザイム測定は, 結核性胸水の鑑別診断上, 簡便かつ敏速な方法である. (図8, 表2, 文献25)
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