Cockayne症候群は, 精神発達遅滞, 運動失調, 視聴力障害, 日光過敏症, 老人様顔貌などを呈する常染色体劣性遺伝疾患である. 本邦でも, 今日まで60例以上の報告があるが剖検例は少ない. 我々は, 13才の男児のほぼ典型的な剖検例を得たので報告する. 症例の兄, 姉共に健全である. 生下時は正常. 精神運動発達遅滞, 視聴力障害, 日光過敏症, 蛋白尿などを示し, 13才時に, 全身浮腫, 傾眠状態で入院し, 肺炎及びDIC症候群を合併し死亡した. 身長98cm. 老人様顔貌. 頭蓋骨は異常に厚く, 石様にかたい. 脳は著明な萎縮と大脳基底核に石灰化, 脱髄巣, 小脳プルキニエ細胞の脱落. 網膜は, 内外顆粒層の低形成など, 腎臓は, 糸球体の大小不同及び線維化, 汗腺は萎縮, 胸腺, 副腎は著明な萎縮を示す. 基庭核結石はX線回折でリン酸カルシウムと判明した. この疾患を, 染色体脆弱症候群の一つとし, DNA障害に伴う正常発達阻害及び二次障害の結果と考えた.
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