医療
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44 巻, 12 号
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  • ―免疫学的研究の進歩―
    田中 正美, 矢加部 茂, 竹尾 貞徳, 前川 宗一郎, 吉田 康洋, 池尻 公二
    1990 年 44 巻 12 号 p. 1193-1198
    発行日: 1990/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    多発性硬化症は, 中枢神経を侵す脱髄疾患である. 近年, この分野における進歩はめざましく, 特にその動物モデルを利用した分子生物学的研究から, 本症に将来応用可能な疾患特異的ワクチン療法の可能性すら示唆されるようになってきた. 本稿では, 多発性硬化症の診断と治療に関する最近の進歩について概説する.
  • 柏木 秀雄, 高橋 好夫, 藤井 秀子, 大久保 伊都子, 勝井 義和, 馬岡 晋, 樋口 治之, 内田 文也, 吉永 信隆, 泰 忠彦
    1990 年 44 巻 12 号 p. 1199-1206
    発行日: 1990/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    最近の結核死亡者は30年間に1/10に激減したが, 感染症のうち最大の死亡者数を出している. 最近5年間に42例の死亡例があり, その詳細を検討した. 70歳以上が2/3を占め, 排菌例は結核菌(Mycobacterium tuberculosis, M. tb. )19.4%, 非定型抗酸菌(atypical mycobacterium, Aty. M. )11.9%で合わせて1/3を占めた. 死因順にみると呼吸不全, 肺炎, 癌が多く, 結核は10%以下であった. 呼吸不全死と喀血死のうち結核に起因する例があり, これも広義の結核死と考え, 本来の結核死と合わせると結核死は31%であった.
    死因に影響した因子には呼吸不全, 気道感染の他に長期間臥床, 低栄養があげられた.
  • 畑江 芳郎, 武田 武夫, 中舘 尚也, 畑山 由起子, 木住野 達也, 小川 泰弘
    1990 年 44 巻 12 号 p. 1207-1211
    発行日: 1990/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    1979年1月から1988年12月まで, 国立札幌病院小児科に入院した急性リンパ性白血病患者, 延べ461例中14名17件に血液培養陽性患者がみられた.
    敗血症起炎菌としては肺炎杆菌および表皮ブドウ球菌が多かった. 多くの例で寛解導入中あるいは再発時に敗血症が合併した. 好中球の絶対数が500/mm3以下のときに発生していた. 敗血症の合併は好中球数がふえるにしたがって少なくなる傾向にあった. 好中球数1, 000/mm3以上では敗血症に関連しての死亡はみられなかったが, 好中球数100/mm3以下で合併した敗血症は致死的であった. 複数菌による敗血症が2例, 菌交代症が5例にみられ, いずれも高い死亡率であった.
    好中球減少のみられる急性リンパ性白血病患者で, 熱発が続くときには, 広スペクトルム抗生物質の早期使用が考えられてよい.
  • 大神 吉光, 荒巻 淳, 牟田 耕一郎, 牧 俊夫, 戸田 武二, 酒井 好古
    1990 年 44 巻 12 号 p. 1212-1218
    発行日: 1990/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    膠原病自験例について標題の消化器病変の検討をおこなった. 消化性潰瘍は慢性関節リウマチ: RAで特に合併率が高かった. RAに伴う消化性潰瘍の特徴としては, 胃潰瘍の頻度が高いこと, 胃前庭部小弯が好発部位であること, 無症状例が少なくないこと, 難治性の傾向があること, が示された. 消化管穿孔による汎発性腹膜炎を2例(全身性エリテマトーデス: SLEおよび混合性結合織病: MCTD)で経験した. 両者とも突然の下血腹痛で発症したが, 腹膜刺激症状に比較的乏しかった. 緊急開腹手術で両者とも多発性小腸潰瘍穿孔で, 1例は小腸広汎切除により救命しえた. 血管病変の関与が疑われるが, 血清学的経過による予知は困難とおもわれた. 膠原病に伴うアミロイドーシスは9例経験した. すべてRAに伴うものであった. アミロイドーシスにおいて, 診断には上部下部消化管粘膜生検が有用であり, 予後に対しては消化管アミロイドーシスによる出血下痢が重要な因子の一つと考えられた.
  • 奥山 茂美, 矢加部 茂, 竹尾 貞徳, 前川 宗一郎, 吉田 康洋, 池尻 公二
    1990 年 44 巻 12 号 p. 1219-1223
    発行日: 1990/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    ハンセン病は, 最近では新たな発生も激減し, 患者の高齢化が著しい. 今回, 国立療養所東北新生園でのハンセン病患者の現況をまとめ, その問題点を考察した.
    入園者327名の平均年齢は66.3歳である. 眼疾患は305名(93%)に認められ, 白内障, 兎眼, 眼瞼外反, 睫毛乱生, 角膜混濁, 虹彩後癒着, 角膜後面沈着物, 眼球癆, 角膜変性, 縮瞳の順である.
    白内障手術の視力予後は, 兎眼の有無に関係なく, 平均76%で, 術後3年でも術後3カ月と同程度またはそれ以上の視力を保持していた.
    眼合併症の中でも兎眼は, 角膜変性, 混濁をひきおこし, 視力低下をもたらす重大な原因と考えられる. 兎眼や眼瞼外反に対する有効な治療法の開発は, ハンセン病患者の視力保全のため, ぜひ必要である.
  • 平松 隆, 久芳 昭紘, 西村 行政, 前川 宗一郎, 吉田 康洋, 池尻 公二
    1990 年 44 巻 12 号 p. 1224-1228
    発行日: 1990/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    過去9年間に32例の橈骨遠位端骨折に対して早期徒手整復後, 経皮的ピニング法を行った. このうち予後調査が可能であった14例について, 直接検診とX線像により予後因子を検討した結果, 以下のことがわかった.
    術後長期にわたって問題となる疼痛はなく, また, ピニングによる合併症もなかった. 握力の低下, 手関節可動域制限(とくに回外制限)の存在は愁訴を後遺する因子となっていた. 握力は橈骨短縮とvolar angleの逸脱により悪化していた. 回外もvolar angleの不良整復により悪化する傾向がみられた. このことから, 本骨折のX線学的予後因子は橈骨短縮およびvolar angleの整復の良否にあることがわかった. 今回の調査症例の術後成績はおおむね満足すべきものであり, これは外固定期間が短いことも一因と考えられた.
  • 藤本 和久, 山田 博基, 玉城 廣保, 前川 宗一郎, 吉田 康洋, 池尻 公二
    1990 年 44 巻 12 号 p. 1229-1234
    発行日: 1990/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    過去約11年間に本院歯科口腔外科を受診し, 歯性上顎洞炎および術後性上顎嚢胞と診断され手術を実施した症例について, 臨床統計的ならびに病理組織学的検討を行い若干の知見を得たので報告する.
    症例は34例で術後性上顎嚢胞15例, 歯性上顎洞炎19例であり, 年齢別では両者共に40~49歳が最も多く, 術後性上顎嚢胞6例(40.0%), 歯性上顎洞炎5例(26.3%)であった. 術後性上顎嚢胞では副鼻腔炎の手術年齢が20~29歳の8例(53.3%)で最も多く, 手術後年数は10~19年を経過しているものが多かった. 主訴についてはいずれも疼痛, 腫脹を訴えるものが圧倒的に多く, 当院来科の動機としては紹介が26例(74.3%)と多く, その内訳は, 歯科からのものが19例と多くを占め, 次いで耳鼻科, 内科の順であった.
    また, 紹介された症例のうち25例(58.2%)については, 消炎, 抜歯, 穿刺など何らかの処置がなされていた. 病理組織学所見についてみると, 術後性上顎嚢胞では上皮組織は扁平上皮が多く, 基底膜の肥厚がみられ, 上皮下組織は線維化の傾向が強かった. 一方, 歯性上顎洞炎では上皮組織は線毛上皮が多く, 上皮組織は浮腫, 浸潤の傾向が認められ, 腺組織が術後性上顎嚢胞に比べ高率に存在した.
  • (第1報) 健常人の年齢分布による局所脳血流及びその血管反応
    米倉 正大, 寺本 成美, 森山 忠良, 前川 宗一郎, 吉田 康洋, 池尻 公二
    1990 年 44 巻 12 号 p. 1235-1243
    発行日: 1990/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    日常診療において133Xe静注法により1955症例において延べ3622回の局所脳血流測定を行った. 測定患者は, 50歳代及び60歳代が最も多く, また虚血性脳血管障害患者が半数以上を占めていたが, 脳神経疾患はほぼ全分野にわたっていた. 64名の健常人年齢別局所脳血流分布は若い年令層で急速に減少を示し, 老年層でゆるやかな減少を示す. 双曲線(X-13.0621)(Y-42.6038)=556.493と非常によく一致し, その相関係数は0.93であった. この所見は加令による血流減少に2つ以上の因子が存在していることを示唆した. また5%炭酸ガス吸入により動脈血PCO2は平均で11.4mmHg上昇し, 局所脳血流量平均では70.2ml/100g/分より90.5ml/100g/分と前値の28.9%の増加を認めた. そのCO2 Indexの平均は2.75±1.65であった. アセゾールアミド(Diamox 1g)静注による局所脳血流の変化は投与前, 59.6ml/100g/分より80ml/100g/分と前値の34.2%の増加を認めた.
  • (第2報) 虚血性脳血管障害における局所脳血流の意義
    米倉 正大, 寺本 成美, 森山 忠良, 前川 宗一郎, 吉田 康洋, 池尻 公二
    1990 年 44 巻 12 号 p. 1244-1252
    発行日: 1990/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    虚血性脳血管障害患者947例において133Xe静注法により局所脳血流を測定した. 脳梗塞またはTIAの患者のうち内頸動脈閉塞または高度狭窄を有する患者116名における局所脳血流は1側閉塞群で平均48. gml/100g/分, 1側閉塞及び反対側狭窄群では平均46.7ml/100g/分, 両側閉塞群では平均47.0ml/100g/分と同年代健常人に比較し, それぞれ約12%, 16%, 15%の減少を認めた.
    もやもや病28例における局所脳血流は, 健常人年齢別血流曲線を約20~25ml/100g/分下まわったところで加齢によってその曲線と同様の減少傾向を示した. さらにdiamox投与による脳血流の反応は前値の15%増にとどまった. 脳動脈硬化症の診断がなされた143例中, 局所脳血流の低下を認めた症例は69例(48.3%)であった.
    椎骨・脳底動脈循環不全の診断がなされた140例中, 58例(41.4%)が大脳半球での局所脳血流の低下を認め, さらにこのうち43例における小脳半球の平均血流量は40.5ml/100g/分と低下していた. 失神発作の患者52例中23例(44.2%)で局所脳血流の低下を認めた.
  • ―臍帯血を用いて―
    宮本 直紀, 辻 正子, 今滝 知子, 近藤 肇, 橋本 公, 長町 典夫, 広瀬 修一, 香川 正博, 浜田 嘉徳
    1990 年 44 巻 12 号 p. 1253-1258
    発行日: 1990/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    母体に甲状腺疾患のない新生児922例の臍帯血甲状腺刺激ホルモン(TSH)値, および甲状腺ホルモン(T4, T3)値を測定した. T4, T3値は, 在胎27~40の間は, 胎齢とともに漸増したが, TSH値は在胎週数との間に相関は認められなかった. また, TSHとT3(r=0.16, p< 0.01), およびT4とT3(r=0.52, p<0.01)の間には有意な正の相関があったが, TSHとT4の間には有意な相関はなかった(r=0.07).
    臍帯血TSH値は, 分娩様式によって異なり, 吸引分娩群の値16.3±10.0μU/ml(n=30)は, 経腟正常分娩群の値9.5±6.0μU/ml(n=622)より有意に高値であった(p< 0.005). また, 帝王切開分娩群の値は6.5±3.1μU/ml(n=79)であり, 経腟正常分娩群の値より有意に低かった(p<0.005). さらに, high risk児のTSH値は, no risk児の値よりも有意に高かった. 以上より, 臍帯血TSH値は, 新生児が受けた分娩時のストレスを反映していると考えられた.
  • 伊藤 哲也, 山口 賢, 竹内 光治, 天野 泰生, 五十川 豊治, 升田 隆雄, 新実 光朗
    1990 年 44 巻 12 号 p. 1259-1264
    発行日: 1990/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    細菌検査のシステム化については, 完全自動化になじまない用手的検査が多く, そのシステム化を行う場合, 検査科全体にわたるミニコンクラスのメインコンピュータで対応していくことは困難なことが多いため, 小回りのきくパソコンと簡易言語データベースソフトを用いて開発した. 依頼情報はメインコンピュータに入力され, パソコン通信で細菌検査室のパソコンに送られる. 以降の種々の処理やデータの蓄積はパソコンで行われる. このシステム化により, 結果報告の自動印刷, 月報の自動化, ワークシート, 結果問い合わせなどの事務的業務の簡素化, 省力化を可能とし, 蓄積されたデータを解析して, 院内感染に関する情報や菌の耐性傾向など, 個々の検査報告でとどまらず, 院内全体としての診断支援となる情報を迅速に臨床に提供できるようになった.
  • 平賀 一陽, 西野 卓, 横川 陽子, 保江 千春, 荒木 英爾, 和田 佳子, 尾熊 隆嘉, 小西 雅治
    1990 年 44 巻 12 号 p. 1265-1272
    発行日: 1990/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    1. モルヒネ点滴投与を10日以上施行した患者136名について疾患, PS, 疼痛の原因, 適応, 投与量, 日常生活などを調査した.
    2. モルヒネ点滴投与の理由は, 投与期間が短い症例では呼吸困難が多く, 投与期間の長い症例では疼痛増強が多くみられた.
    3. 投与量と生存期間とは関連性がなかった.
    4. 死亡前の数日にモルヒネ増量を必要とした患者は1/4にみられ, その増量の理由は呼吸困難, 腹部膨満, 疼痛の順に多かった.
    5. 胸水, 腹水, 浮腫などが存在しない患者の血漿中モルヒネ濃度はモルヒネ投与量に比例して高濃度を示した. しかし, 胸水, 腹水, 浮腫などを合併した患者の血漿中モルヒネ濃度は分布面積が正常な患者に比して投与量の約半分であった.
    6. 急激な浮腫, 胸水や腹水の発症は血漿中モルヒネ濃度を相対的に低下させ, 患者に痛みを出現させる.
  • 田中 昭吉, 古川 哲也, 竹尾 貞徳, 前川 宗一郎, 吉田 康洋, 池尻 公二
    1990 年 44 巻 12 号 p. 1273-1277
    発行日: 1990/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    本研究においてラットに水浸拘束ストレスを負荷した後テオフィリン吸収は著しく促進することを示し, その促進効果の機序について薬理学的に検討し, 以下の結果を得た. テオフィリン吸収促進効果は水浸拘束ストレス負荷後のみで認められ, アスピリンによる胃損傷後には認められなかった. 重曹処置により胃粘膜損傷を防御すると吸収促進効果は減弱した. メトクロプラミドやピコスルフェイトなどの前処置により腸の運動性を高めると同様に, テオフィリン吸収は促進した. ストレス負荷後一過的に血清LDH活性は著明に上昇し, GOT, GPT, ALP各活性も上昇傾向を示した. これらの活性上昇は還元型グルタチン処置により抑制された.
    以上, 水浸拘束ストレス負荷時にテオフィリン吸収が促進することを示し, この効果の機序の中に胃腸運動の亢進による吸収促進及び肝におけるテオフィリン代謝抑制が一部含まれる可能性を示唆した.
  • 国立療養所中央共同糖尿病研究班 , 矢加部 茂, 竹尾 貞徳, 前川 宗一郎, 吉田 康洋, 池尻 公二
    1990 年 44 巻 12 号 p. 1278-1283
    発行日: 1990/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    国立療養所中央共同研究糖尿病研究班員10施設に対し, 国立療養所における糖尿病診療・患者の実態の概念把握の目的でアンケート調査を行い, 1636名(男870, 女766名)につき回答を得た.
    86%の施設が糖尿病専門外来を実施しており, 血糖については空腹時血糖を中心に, 随時血糖, 負荷後血糖なども測定されている.
    血糖コントロールの良否判定の指標としてHbA1CまたはHbA1及びHbA1C+フルクトサミンが用いられていた.
    治療は食事・運動療法のみ約53%, 経口血糖降下剤使用約33%, インスリン使用約14%.
    患者の年齢分布は50歳以上が男78%, 女85%, 60歳以上でも男53%, 女63%と患者の高齢化が著しく患者教育上新たな問題が提起された. これに対し糖尿病性3合併症頻度は加齢によっても著しい増加をみないことや, 肺結核症の合併頻度は男子では各年齢層にほぼ10%前後みられるものの, 女子は男子の1/2~1/3と著しく低いのが特徴的所見とおもわれた.
  • 中本 一海, 波多野 淑弘, 椋 旨正, 石黒 俊彦, 古見 健一, 宮川 明, 渡辺 泉, 佐藤 蓉子, 塚原 忠
    1990 年 44 巻 12 号 p. 1284-1287
    発行日: 1990/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    原発性骨髄線維症(PMF)は骨髄の広汎な線維化により進行性の貧血をきたす疾患である. 根本的な治療法はなく, 輸血を繰り返さざるを得ない. われわれはpancytopeniaを主症状とする38歳男性のPMFを経験した. 手術によらない脾機能の抑制のためにpartial splenic embolization(PSE)を施行し, 血液状態の改善がみられた. 白血球, 血小板が著明に増加し, 貧血の進行をおさえることで輸血の回数が減少した. PMFに対して摘脾などによる脾機能の抑制を行うことは, 髄外造血能や合併症を考える否定的な意見がつよかった. しかしわれわれの症例のように血液所見の改善が得られる場合も多い. PSEは従来肝硬変などの脾機能亢進に対して用いられる治療法である. PSEは比較的安全に行い得る治療法であり, 薬剤無効のpancytopeniaに対しても適応が考えられるべきである.
  • 福原 信義, 米持 洋介, 馬場 広子, 長島 勝, 鈴木 正博, 池尻 公二
    1990 年 44 巻 12 号 p. 1288-1293
    発行日: 1990/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    MERRF(ミトコンドリア異常を伴うミオクローヌスてんかん)の3症例(42歳男, 67歳女, 26歳男)を報告し, 本邦における進行性ミオクローヌスてんかんの原因としては歯状核赤核被殻ルイ体萎縮症と並んで多い疾患であることを示した. 症例2と3は母子であり, 症例2は62歳で, 症例3は6歳の発症で, 同一家系内での臨床経過の違いに注目された. 症例1では白内障, 症例1と3には神経因性膀胱という今まで注目されなかつた症状がみられたが, これらの症状もミトコンドリア脳筋症によるものと考えられた. 血液乳酸, ピルビン酸値は症例1では正常であり, 必ずしも診断には役立たなかった. 他の大脳皮質由来のミオクローヌスと同様に体性感覚誘発電位でP25, N33の巨大電位がみられ, MELASなど他のミトコンドリア脳筋症との鑑別に体性感覚誘発電位が有用と考えられた.
  • 向原 茂明, 森 正孝, 木下 研一郎, 伊藤 瑞子, 吉田 康洋, 池尻 公二
    1990 年 44 巻 12 号 p. 1294-1297
    発行日: 1990/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    人口約5万人の対馬地方で6名のHAM患者を診断した. 発症年齢は32歳から57歳で男女比は, 2: 1で一般に報告されている比率とは逆である. 2例にステロイド治療を, 2例にインターフェロン療法を行った. また, 抗HTLV-I抗体を全人口の約20%にあたる9, 215名について年齢別に調べた. 抗体陽性率は全体で20.8%であった. 20歳までは5%以内で男女差もないが30歳代で急激な増加を示し, 特に女性の増加率が高く, 80歳では50.5%にも達した. 30歳以上の抗体陽性率は26.2%であった. HAM患者の有病率は1, 200人に1名と推定された.
  • 岡本 英四郎, 豊田 友恵, 中野 為夫, 堺 幹太, 吉田 康洋, 池尻 公二
    1990 年 44 巻 12 号 p. 1298-1302
    発行日: 1990/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    初診時に拡張型心筋症(DCM)と診断された症例の中には, 冠動脈造影をして初めて, 虚血性心筋症(ICM)と診断される例がある. そこで我々は, 初診時の所見によりICMとDCMを鑑別できるかを検討した.
    方法: 心臓カテーテル検査で確定診断したICMの臨床所見とDCMの臨床所見を比較した. 我々が用いた臨床所見は, 年齢, 心胸郭比, 不整脈, 血清コレステロール, 空腹時血糖, 血圧, Mモード心エコーで計測した心駆出率である. 年齢は両者を鑑別するのに有用であったが, その他の所見は役立たなかった.
  • 後藤 嘉樹, 新井 勲, 一瀬 允, 筬島 正之, 坂本 美一, 池尻 公二
    1990 年 44 巻 12 号 p. 1303-1306
    発行日: 1990/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    本症候群3症例における耐糖能異常について検討を行った. 3症例とも20~30歳代に特徴的臨床像を示し, 家族内発生も認められた. 75g糖負荷試験では血糖曲線はIGTないしDM型を呈し, インスリン反応は3症例とも高反応を示し, 2症例では前値より高値であった. また尿中CPRも高値を示した. これら3症例において耐糖能異常の程度は軽度であったがインスリンの過剰分泌, 高インスリン血症, インスリンの過剰分泌反応が認められた. 1症例において検討した, 赤血球のインスリン受容体結合能は低下しておらず, 一方リンパ球でのインスリンによるpyruvate dehydrogenase(PDH)活性化率は著しい低値を示した. 本症例に見られる耐糖能異常の成因には, 一部にはインスリンのpost-receptor障害が関与している可能性が考えられる.
  • 12. 肝腫瘍―チェックポイント―
    安部 明郎, 矢加部 茂, 竹尾 貞徳, 前川 宗一郎, 吉田 康洋, 池尻 公二
    1990 年 44 巻 12 号 p. 1307-1311
    発行日: 1990/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
  • 第56~58回愛知県下国立病院療養所神経内科症例検討会, 第134回関信地区国立病院療養所薬学集談会
    朔 元則, 矢加部 茂, 竹尾 貞徳, 前川 宗一郎, 吉田 康洋, 池尻 公二
    1990 年 44 巻 12 号 p. 1312-1313
    発行日: 1990/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
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