症例は52歳, 女性. 橋本病の診断の下に1988年よりL-チロキシン(L-T
4)150μg内服. 抗TSH受容体抗体(TBII)30%以上(正常値<15%)持続. 1994年3月手指振戦, 発汗, 顔面紅潮認め入院. 甲状腺機能正常, 抗甲状腺抗体著明高値, TBII 21.8%. 第18病日, 高熱, 甲状腺部疼痛を認めた. 甲状腺腫はびまん性で硬く圧痛はなかった. 赤沈促進, 末血白血球増多, CRP高値, 甲状腺機能正常で
99mTc甲状腺シンチグラフィーでは両葉びまん性に腫大し,
99mTc集積やや低下. アセチルサルチル酸内服で症状軽快. TBII陰性化. 亜急性甲状腺炎との鑑別困難であったが, 経過中, 甲状腺機能正常で
99mTc集積著明な低値ではなく, 橋本病の急性増悪と判断した. なお, 経過中, 尿中・血中カテコールアミン, 血中セロトニン, 尿中5-HIAA正常. TBIIが急性増悪を契機に陰性化したが, 橋本病の急性増悪の機序は不明である. 橋本病の急性増悪時のTBIIの推移について検討を重ねる必要があろう.
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