医療
Online ISSN : 1884-8729
Print ISSN : 0021-1699
ISSN-L : 0021-1699
49 巻, 9 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • 森塚 俊彦
    1995 年 49 巻 9 号 p. 719-726
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    分子生物学の急速な進歩によって, 癌に対する理解は深まり, 現在では「癌は体細胞の遺伝子異常によって, 細胞の制御が破綻するために生じる疾患」と認識されている. 遺伝子に関する知見の蓄積と目的遺伝子を細胞に導入する方法の開発によって, 遺伝子治療の可能が生まれた. そして, レトロウイルスをベクターとして用いる方法は, 高い導入効率と安定した組み込みを実現し, 今まさに本格的な遺伝子治療への道を開こうとしている.
    癌に対する遺伝子治療はまだ理論的段階であって, 実用化にいたってはいない. 乗り越えるべき倫理的, 技術的な問題がある. 現在はまさに癌に対する遺伝子治療の黎明期であり, これからのさまざまな努力によって, 近い将来に癌の治療法のひとつとしての立場を確立するに違いない.
  • 真鍋 和義, 前田 道彦, 田原 留之介, 仁井 昌彦
    1995 年 49 巻 9 号 p. 727-731
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    アセス・ピークフローメータとピークマン8を用いて気管支喘息患者5例のピークフローと1秒量の経時的変化を同時に測定し比較した. 両機器によるピークフロー値はよく一致しており, ばらつきの見られた症例でも気管支拡張剤吸入後はよく一致した. ピークマン8によるピークフロー値と1秒量は全例で高い相関を示したが, 測定値の比率は各症例ごとに固有の値を示した. 喘息コントロールの指標としてはピークフロー値で十分と考えられるが, 今後, 症例を重ねるとともにフローボリウム曲線を用いた検討も行いたい.
  • 由井 靖子, 田村 禎通, 岩野 健造, 石田 孝敏, 小田 修治, 岩本 正博, 添木 武, 久保 謙一郎, 長町 典夫, 木村 光宏
    1995 年 49 巻 9 号 p. 732-737
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    妊婦, 褥婦およびcontrolの合計108例について, 心機図法で求めた左室収縮時間により, 妊娠の循環動態を評価することを試みた.
    妊娠28週目位から変化を認めるようになり, 仰臥位では, 心不全の時のような左室収縮時間の変化を認めた. このような変化は, 左側臥位での記録では正常化し, controlとの間には差はなかった.
    これらの変化は, 仰臥位では肥大した子宮により下大静脈への環流が減少するためであり, 左側臥位では子宮による圧迫が減少するため, 左室収縮時間は正常化するのであると考えられた. そのため, 左側臥位で求めた左室収縮時間によって, 妊娠時の心機能の評価が可能であると考えられた.
    また, 一部の症例では, 心拍出量も色素稀釈法により, 両体位で測定し検討した.
  • 新生 修一, 貞元 健一, 島崎 恵子, 東 宣彦, 馬場 崇, 瀬尾 洋介, 若杉 英之
    1995 年 49 巻 9 号 p. 738-740
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    過去22年間(1972~1993)に当院における膵癌318症例を対象として重複癌の頻度, 合併時期, 膵癌の組織型, 他臓器癌の種類, 喫煙, 飲酒歴にっき検討した. 膵癌と診断された318症例中24症例に重複癌(うち三重複癌が2例)が認められ, 頻度は7.55%であった. 合併時期については異時性21例(膵癌が第一癌3例, 第二癌16例, 第三癌2例), 同時性3例であった. 膵癌の組織型は管状腺癌17例, 腺扁平上皮癌3例, Solid and cystic turnor 1例, 島細胞癌1例, 不明2例であった. 他臓器癌の内訳は26疾患中胃癌11例(42.3%), 大腸癌5例(19.2%), 甲状腺癌4例(15.4%), 肺癌, 乳癌各2例(7.7%), 子宮癌, 卵巣癌各1例(3.8%)であった. 重複癌症例の喫煙, 飲酒率は各々37.5%, 16.7%(膵癌のみで42.5%, 23.1%)であった. 今後, 診断技術の向上や治療法の進歩による生存期間延長に伴い重複癌の頻度は増加すると考えられ, 膵癌においても重複癌の存在を念頭に置く必要がある.
  • 長尾 雅悦, 木林 正弘, 長尾 道子, 軽部 幸治
    1995 年 49 巻 9 号 p. 741-745
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    当院で入院あるいは経過観察している重症心身障害児を対象に, 中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症の最も高頻度にみられる遺伝子変異(985A→G)をPCR法を用いてスクリーニングを行った. Reye症候群, 乳幼児突然死症候群など脂肪酸代謝障害が疑われる症例も検索した. その結果, 985A→G変異を持つhomozygoteあるいはheterozygoteの症例はまったく検出されなかった. これは, 欧米で行われている正常集団を対象とした遺伝子スクリーニングの結果と大きく異なっていた. この変異はアングロ・サクソンに発生しfounder effectによって広がったと考えられ, 日本人にはきわめてまれである. しかし, 重症心身障害児では臨床症状が有機酸代謝異常症と類似し見逃されているケースがあるので, 今後も様々な疾患のスクリーニングが必要と考えられる.
  • 小島 靖彦, 松本 尚, 竹川 茂, 桐山 正人, 津田 宏信
    1995 年 49 巻 9 号 p. 746-750
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    膵頭部, 膨大部領域にみられた疾患に対し施行された膵頭十二指腸切除術(PD)例は60例である. これら60例を対象として, 術後合併症, 生存期間を検討した. 60例のうち, 20例は70歳以上の高齢者群40例は70歳未満群であった. 術後合併症では膵空腸縫合不全を多くみたが, majorなものは高齢者群で1例, 70歳未満群で3例であった. 術後合併症の頻度は全体で36.7%(高齢者群45.0%;70歳未満群32.5%)であったが, 全例保存的治療で治癒した. 術後1ヵ月以内の術死例は高齢者群で1例(5%), 70歳未満群で1例(2.5%)であった. 全症例を高齢者群70歳未満群に分けて累積生存率を検討すると, 膵癌, 膨大部領域癌の患者間で有意差を認めなかった. 以上より, 高齢者のPDでも術後合併症の頻度は高くなく, また70歳未満群と同程度の術後生存を得ることが可能であった.
  • 水野 治, 唐沢 忠夫
    1995 年 49 巻 9 号 p. 751-755
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    症例は52歳, 女性. 橋本病の診断の下に1988年よりL-チロキシン(L-T4)150μg内服. 抗TSH受容体抗体(TBII)30%以上(正常値<15%)持続. 1994年3月手指振戦, 発汗, 顔面紅潮認め入院. 甲状腺機能正常, 抗甲状腺抗体著明高値, TBII 21.8%. 第18病日, 高熱, 甲状腺部疼痛を認めた. 甲状腺腫はびまん性で硬く圧痛はなかった. 赤沈促進, 末血白血球増多, CRP高値, 甲状腺機能正常で99mTc甲状腺シンチグラフィーでは両葉びまん性に腫大し, 99mTc集積やや低下. アセチルサルチル酸内服で症状軽快. TBII陰性化. 亜急性甲状腺炎との鑑別困難であったが, 経過中, 甲状腺機能正常で99mTc集積著明な低値ではなく, 橋本病の急性増悪と判断した. なお, 経過中, 尿中・血中カテコールアミン, 血中セロトニン, 尿中5-HIAA正常. TBIIが急性増悪を契機に陰性化したが, 橋本病の急性増悪の機序は不明である. 橋本病の急性増悪時のTBIIの推移について検討を重ねる必要があろう.
  • 影山 洋, 木村 光宏, 谷田貝 茂雄
    1995 年 49 巻 9 号 p. 756-760
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    うっ血性心不全が原因と考えられた播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation, DIC)の1例を報告する. 症例は68歳女性, 主訴は呼吸困難と黒色便. 入院約2週間前頃より呼吸困難が出現し, 黒色便がみられたため入院. 出血傾向, 頻脈, チアノーゼ, 意識障害, 肺野のラ音がみられた. 検査所見では心拡大, 血小板減少, 腎機能障害, プロトロンビン時間の延長, フィブリン体分解産物の増加, フィブリノーゲンの低下, アンチトロンビンIIIの低下がみられた. 骨髄穿刺検査では巨核球数は正常で, 形態学的な異常は認めなかった. うっ血性心不全によるDICと診断し, 心不全の治療とメシル酸ナファモスタットの投与により, 心不全症状, 意識障害は軽快, 出血傾向は消失, 腎機能障害, 血小板減少, 血液凝固学的異常所見は正常化した. 心不全が原因となるDICはまれであり, 現在まで本邦で7例の報告しかない.
  • 谷口 清英, 正木 勉, 畑中 良夫
    1995 年 49 巻 9 号 p. 761-764
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    発症前の既往歴から食道静脈瘤破裂が疑われたが, 早朝咳嗽が誘因となってMallory-Weiss症候群を発症したと考えられる陳旧性肺結核患者の1例を経験した.
    48歳, 男性. 肺結核後遺症, C型慢性肝炎にて外来通院中, 早朝咳噺時より吐血を認めた. 緊急内視鏡の実施が困難なため, Sengstaken-Blakemore tubeを用いて止血した. 再検査で2条の裂創を伴うMallory-Weiss症候群と判明した.
    本例は大量飲酒後の嘔吐に起因する典型例でなく, 呼吸器疾患患者, とくに肺結核患者に多くみられる咳噺時の強い怒責習慣が誘因となって発症したものと考えられた.
  • 黨 康夫, 豊田 恵美子, 新原 礼子, 上村 光弘, 川島 隆二, 杉山 温人, 工藤 宏一郎, 可部 順三郎, 斉間 恵樹
    1995 年 49 巻 9 号 p. 765-768
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    RFPによると思われる急性間質性腎炎の1症例を報告する. 症例は結核治療歴のない54歳の男性. 肺結核の診断で, INH, RFP, EB, PZAを投与開始後約2ヵ月目に, 誘因なく腎障害を来たした. 薬剤中止後, 腎機能は改善したが, 腎生検にて急性間質性腎炎と診断した. 原因薬剤としてRFPが最も疑われた. RFPによる間質性腎炎は, 一般に間欠投与時に生ずるとされているが, 連続投与時にも注意を要すると考えられた.
  • 渡辺 浩毅, 宮川 正男, 塩出 昌弘, 松浦 文三, 西村 一孝, 中野 昇, 阿久津 弘
    1995 年 49 巻 9 号 p. 769-772
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    67Ga-citrateが病変部に対して集積の認められなかった肺癌症例で, 201Tl-chlorideが高度に集積し, 診断に有効であった症例を経験した. 症例は60歳男性. 不整脈にて近医受診していた. 検診目的で撮った胸部X線写真で左肺上葉に腫瘤陰影を指摘され, 気管支鏡下肺生検を施行したが確定診断にいたらず, 開胸肺生検にて未分化型大細胞癌と診断した. この症例ではCTおよびGaシンチを用いた術前診断では鑑別診断が困難であったが, 201Tl-SPELTが病変部に高度な集積を認め, リンパ節転移の有無を指摘できたことから腫瘤型の肺疾患における良・悪性の鑑別診断および肺癌のstagingに対する有用性を示唆した.
  • 吉尾 博之, 中村 信, 山内 芳忠, 山田 雅夫, 新居 志郎
    1995 年 49 巻 9 号 p. 773-776
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    Reverse transcriptase-polymerase chain reaction (RT-PCR)を用いて新生児のRespiratory syncytial virus (RSV)感染症の迅速診断をしえた1例を経験した. 症例は日齢16の男児で無呼吸発作を主訴に当院NICUに入院となった. 入院時炎症反応はなくまた咳嗽があったことよりウイルス感染を疑い鼻腔吸引液を用いてRSVに対してRT-PCR法, enzyme immunoassay (EIA)法(RSVテストパック, ダイナボット社)およびウイルス培養を行った. EIA法は入院初日より3日間連続で行ったがすべて陰性であったのに対してRT-PCR法では入院5日目まで陽性であった. RT-PARはPatonらが指摘したプライマーを用い, 2ndプライマーを用いたnested RT-PCRにより増幅産物を確認した. ウイルス培養は陽性であった. 以上よりRSV感染症に対して, EIA法陰性例についてもRT-PCR法で診断可能でありRT-PCR法はきわあて有用と考えられた.
  • 中園 雅彦, 田村 禎通, 由井 靖子, 岩野 健造, 石田 孝敏, 小田 修治, 手束 一博, 津田 道子, 松岡 雅子, 岩本 正博, ...
    1995 年 49 巻 9 号 p. 777-781
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    単純ヘルペス脳炎は, 依然重篤な後遺症を残す疾患である. その予後規定因子としては, 意識状態, 年齢, 罹病期間が重要視されている. 今回我々は, 23歳の女性で感冒様症状にて発症し, 三日目に呼吸停止を伴う昏睡状態にまで陥ったが, ビダラビン, アシクロビルなどの投与により, ほぼ正常の状態にまで回復した症例を経験した. 本例は早期に抗ウイルス剤の投与を行ったため, 重篤な後遺症を残さずに回復したと考えられた. ヘルペス脳炎は初期診断が困難な場合があるが, 疑いを持てば, 早期より抗ウイルス剤の投与が重要であると思われた.
  • 小山 和弘, 菊野 隆明, 市来 嵜潔, 村越 功治, 植木 弘文
    1995 年 49 巻 9 号 p. 782-787
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    急性薬物中毒の患者3例につき高速液体クロマトグラフィー(HPLC)をもちいてメジャートランキライザーと抗うつ薬の血清中濃度を測定した.
    症例1ではクロルプロマジンを2200mg, プロメタジン1100mg, フェノバルビタール3520mg服用し, 服用約8時間後の血清中濃度はクロルプロマジン10ng/ml, フェノバルビタール47.35μg/mlであった. 症例2ではマプロチリン400mgを服用, 服用約7時間後の血清中濃度は295ng/mlであった. 症例3はハロペリドール30mg, レボメプロマジン250mg, クロルプロマジン250mg, プロメタジン375mg, フェノバルビタール400mg, フルニトラゼパム20mg服用し, 服用約9時間後の血清中濃度はハロペリドール34ng/ml, レボメプロマジン56ng/ml, クロルブロマジン74ng/ml, フェノバルビタール15.4μg/ml, フルニトラゼパム61ng/mlであった.
  • 宇野 隆, 伊丹 純, 土器屋 卓志, 天本 祐平
    1995 年 49 巻 9 号 p. 788-791
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    国立病院・療養所における放射線科専門医の育成の実態について調査を行った. 各施設から日本医学放射線学会に提出される年次報告書をもとに, その業務量, 設備, 人員について調査し, 専門医育成における問題点について検討した. 平成4年度の時点で, 診断, 治療, 核医学の3部門が放射線科専門医修練機関に認定されている施設は18施設であり, 国立病院・療養所および全修練機関中に占める割合はともに低かった. また, 診断治療核医学診療それぞれの業務量設備, 人員には施設間格差が認められた. 今日の診療放射線部門に求められる医療サービスの高度化, 多様化を考えると, 予算, 人員の制約の厳しい国立医療機関で,教育面でこれまで以上の充実を求めることは容易ではないが, 今後とも専門医育成のための教育機関としての努力を放棄するべきではないと考える.
  • 小坂 昇, 原 敏彦
    1995 年 49 巻 9 号 p. 792-795
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    国立国際医療センターは, ポジトロンCT(PET)による日常診療を開始する予定である. 我々の目標とする処理件数は1日15人である. これは全自動型の放射性医薬品合成装置と画像構成用の高速度コンピューターにより今や可能となった. 米国FDA(食品医薬品管理局)は最近, 18F-フルオロデオキシグルコース(18F-FDG)を, 一定の病院職員により構成されたチームにより院内製剤するのであればよいとの限定づきで医薬品として承認した. 我々の計画は, 以前は熱心な医師のみの仕事と考えられてきたこの目標を, 薬剤師, 診療放射線技師, 医師の協力により実現することにある.
  • 8. 頚椎症性脊髄症の床反力分析
    鈴木 三夫, 今泉 佳宣, 稲見 州治
    1995 年 49 巻 9 号 p. 796-802
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
  • 1995 年 49 巻 9 号 p. 803-805
    発行日: 1995/09/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
feedback
Top