医療
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52 巻, 12 号
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  • 杉並 洋
    1998 年 52 巻 12 号 p. 709-715
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    近年, 腹腔鏡下手術は低侵襲性手術として医学的にも社会的にも認知されており, 多くの良性婦人科疾患に対して実施されている. 術中に合併症がおこらない限り, 腹腔鏡下手術は術後疼痛の軽減, 術後合併症の減少, 入院期間の短縮など患者のQOLの向上に大きく貢献している. とくに, 機能温存手術における腹腔鏡下手術の役割は非常に大きい.
    国立京都病院産婦入科においても腹腔鏡下手術実施件数は経年的に増加しており1997年には229件(全婦人科手術の50.9%)に達している. 適応疾患は子宮良性腫瘍, 卵巣良性腫瘍, 子宮内膜症, 骨盤内癒着, 子宮外妊娠などである. その中でわれわれがとくに重要であると考えているのが, 機能温存手術としての腹腔鏡下子宮内膜症手術である. 腹腔鏡下に完全に子宮内膜症病巣が除去できた完全手術群での術後4年間の累積妊娠率は約80%である. 一方, 完全手術ができなかった不完全手術群におけるそれは約40%である(p=0.02408). 腹腔鏡下手術は子宮内膜症に由来する月経痛や性交痛に対しても有効である.
    今後, 手術手技の改善, 手術機器の開発・改良とともに, 腹腔鏡下手術の適応はさらに拡大されていくと考える.
  • ―非解剖学的再建の見地から―
    安斎 徹男, 岡野 孝雄, 棚橋 美文
    1998 年 52 巻 12 号 p. 716-719
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    腸骨腿動脈領域の閉塞疾患22名に23回のバイパス手術が行われた. 男性20人, 女性2人で, 41-89歳(68.9±11.4歳)であった. 解剖学的再建は大動脈大腿動脈が6例, 腸骨動脈-大腿動脈が3例の9例であり, 非解剖学的再建は大腿- 大腿が8例, 腋下-大腿が6例の14例であった. 非解剖経路の選択は高齢など全身的理由が8例, 再手術などの局所的理由が6例で, この両者の年齢間に有意差がみられた. 5年開存率は
    解剖経路で83%, 非解剖経路で59%であり, 両群間に差は認められなかった. 本領域の解剖学的再建の成績は良好であるが, 全身および局所的理由から非解剖経路が選択される例も多く, 慎重な対応が要請される. 解剖経路再建後早期に閉塞した例の検討から, 動脈硬化の危険因子は若年層で増加している部分もあり, 厳しい日常生活のコントロールは高年者より若年層に必要との意見に同意できる結果であった.
  • 中村 一彦, 橘 裕紀, 河原 田孝宣, 鹿島 克郎, 堀之内 尚志, 福岡 嘉弘, 加納 達雄
    1998 年 52 巻 12 号 p. 720-724
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    狭心症々状を有して外来受診した一連の患者について冠攣縮性狭心症の頻度を検討した. 連続した40歳以上の新患患者1,850例に問診を行い狭心症々状を有する者は464例(25.1%)であった. このうち, 322例に冠動脈造影を含む精査を行った. 胸痛発作をおこした場合は可能な限り心電図記録を行った. 心筋梗塞を除く有意冠動脈狭窄(AHA75%以上)を有しない221例中197例(89.1%), 有意冠動脈狭窄を有する60例中8例で冠動脈造影時エルゴノビン負荷を行った. この薬物負荷で90%以上の冠攣縮をおこし, かっ心電図で虚血性ST変化(0.1mV以上)を示した場合を陽性とした. その結果, 心筋梗塞41例, 狭心症は106例,このうち胸痛発作時ST上昇を認めた例およびエルゴノビン負荷陽性の冠攣縮性狭心症は55例であった. 狭心症症状を有し精査を行った322例中冠攣縮性狭心症は55例(17.1%)であった.
  • ―入院死亡患者の医療経済を中心に―
    山田 英雄
    1998 年 52 巻 12 号 p. 725-731
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    当院をめぐる高齢者のターミナルケアの最近の実態を明らかにすべく入院死亡と医療経済を中心に臨床疫学的解析を行った.
    全死亡中の入院死亡の割合は当院周辺地域でも80%を超え, 過去12年間(昭和60年から平成8年まで)の平均で, 市内域(名古屋市名東区)83.4%, 市外域(日進市)は79.0%であった.
    平成8年度当院の入院死亡者数のうち65歳以上の高齢者が占める割合は, 全死亡者の76%を占め, 167名(男105名, 女62名)に達した. 高齢者の占める割合は年々増加傾向にあり, 死因は悪性腫瘍(31.8%)と呼吸器感染症(22.2%)が最も多かった. 死亡者の死亡前平均入院日数は平均35.8日であり, 短期入院死亡の増加傾向がうかがわれた.
    医療経済に関する検討では, 死亡前60日以内の1日平均入院保険点数は3202点であり, 5000点以上のものは13.8%であった. 1週間以内に死亡した短期入院死亡例の1日平均点数は3週以上の入院死亡例と比べて有意に高かった. 基礎疾患別の1日平均入院点数は疾患による差異は少なく, 悪性腫瘍例も有意に高い点数を示さなかった. 超高齢社会を迎え, 医療と福祉の連携が進むなか, 人生終焉の場は病院から施設あるいは在宅へと広がりをみせつつあり, 今後の高齢者のターミナルケアは地域特性および医療経済を重視した新しい施策の実行が求められる.
  • 影山 洋, 中山 成一, 宮入 守
    1998 年 52 巻 12 号 p. 732-737
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    胸水貯留を契機に発見された高齢の男性全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus, SLE)患者で, 胸水の免疫学的検索と非定型的LE細胞がみられた症例を報告する. 症例は81歳男性, 両側胸水を指摘され, 精査のため入院. 血小板減少と蛋白尿を認あた. 胸水は滲出性で細胞診, 細菌培養, 抗酸菌染色は陰性であった. 抗核抗体, 抗DNA (deoxyribonucleic acid)抗体, 抗2本鎖DNA抗体, 血小板関連1gGなどの自己抗体が陽性, 血清補体価は低値, 免疫複合体は高値を示した. 胸水中に抗核抗体, 抗DNA抗体, 免疫複合体が検出された. 胸水のパパニコロー染色標本で淡青色に染まる均質無構造で不均等な染色性を示す物質を貧食し, 核が辺縁に押しやられた好中球の2-3倍の大きさを示すLE細胞様の細胞が散見された. SLEによる胸膜炎と診断, プレドニゾロン30mgの経口投与を開始, 胸水は約2週間で消失した.
  • 山崎 修司, 藤田 正樹, 柴田 理恵子, 丹治 裕
    1998 年 52 巻 12 号 p. 738-741
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    人工膝関節形成術施行後に膝関節結核であることが判明し, 治療を依頼された2例につき報告した. 1例は53歳の女性で, 術前診断は慢性関節リウマチであった. 術後に瘻孔を形成し, 膿から結核菌が検出された. 他の1例は84歳の男性で, 術前診断は変形性膝関節症であった. 手術時に採取した滑膜が病理組織学検査にて結核と診断された. 2例とも当院転院後, 化学療法や病巣掻爬により人工関節を抜去することなく炎症の沈静化を得た. いずれも, 家族歴や既往歴の聴取, 慎重なX線写真読影にて結核の術前診断は可能であったと推察された. 治療は化学療法および病巣掻爬が非常に有効であり, 人工関節を温存できる可能性が高く, 関節機能予後は決して不良ではないと考えられた.
  • 竹口 竹口, 西海 正彦, 秋谷 久美子, 橋本 尚明, 東條 毅, 新関 寛徳, 山崎 雄一郎, 竹内 広
    1998 年 52 巻 12 号 p. 742-745
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    近年特発性炎症性筋疾患の診断にMRIが有用であるとの報告が蓄積されつつある. 私たちは2度の筋生検でも炎症性細胞浸潤, 筋線維変性, 再生像などの筋炎の所見を認めなかったが, MRIでT1強調画像で正常像, T2強調画像で両側の大腿四頭筋に一致する高信号領域(いわゆる“浮腫様像”)を認め,広汎な筋炎の存在が示唆され診断に有用であった肺癌合併成人型皮膚筋炎の1症例を経験したので報告する.
  • ―国立奈良病院の場合―
    大石 輝樹, 八尾 郁子, 今西 孝至, 新中 尚子, 山崎 哲, 田中 利夫, 岩重 一雄, 森下 秀樹
    1998 年 52 巻 12 号 p. 746-753
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    当院では, 薬剤師法の改定により, 平成9年4月より薬剤科において, 外来薬剤情報を提供している.
    我々は, まず薬袋印字システムと連動して薬剤情報を一枚の用紙に打ち出すシステムの構築を試みた. しかしながら, 当初このシステムは文字数に容量制限があり, 薬剤の情報が不十分となるため, システムの改築を行い, 新システムが完成するまでの期間は, 副作用, 相互作用, 生活上の注意点を個々の薬剤に添付し情報提供を行った.
    この間, 薬剤情報内容の見直しも行い, 平成9年10月から新システムにより, すべての情報を一枚の用紙で提供することが可能になった.
    また同時に, 薬剤情報に関する患者の有用評価度, 理解度, 満足度などを把握するたあにアンケート調査をシステム改築前後で実施した. アンケートの結果, 改築前の診療科別分析では, 小児科, 外科, 脳神経外科で, 有用評価度, 理解度, 満足度の平均をかなり下回っていた.
    システム改築前後の比較において, 改築後では有用評価度で7%の減少がみられたが, 満足度で逆に2%の増加がみられた. システム的にも, 78%の患者が改築後のシステムがよいと回答していた.
    また自分勝手に服用をやめたりしたことのある患者のほとんどが, 医師や薬剤師に, 薬のことで相談したと回答していた.
  • ―疫学的現状と独自の多剤併用療法について―
    並里 まさ子, 小川 秀興
    1998 年 52 巻 12 号 p. 754-758
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    モロッコ王国におけるハンセン病対策は, 国立中央病院と14の地域機関が担当し, これらは各保健所とも協力して, 本病に対する偏見の除去に努めてきた. 国内のNGO (AMAAF)は, 患者と患者家族の生活全般を援助し, 彼らの社会的地位の向上に貢献した. 当国の治療方針は, 独自の多剤併用療法とその後のDDS単剤治療を組み合わせたもので, 導入以来16年経過した現在まで, 同治療での再発者はみられていない. 1980年に推定された高い有病率に比して, 近年0.4/10,000と著明に低下した理由として, 本病患者に対する偏見の消失と上記治療方針の有効性に基づく自主的な受診の促進が, 早期治療による感染源の減少をもたらしたことによると考えられた. しかし山岳地帯には多発地帯が残存し, 今後も強力な対策維持が必要である. 当国ハンセン病対策活動は, いまだ多数の患者を抱える近隣西アフリカ諸国に対して, 1つの規範となる可能性が考えられた.
  • 大田 守雄, 石川 清司, 国吉 真行, 川畑 勉, 源河 圭一郎
    1998 年 52 巻 12 号 p. 759-763
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    縦隔上皮小体嚢腫はきわめてまれな縦隔腫瘍である. 今回我々は右上縦隔に発生した非機能性上皮小体嚢腫に対し胸腔鏡下に切除し得た1例を経験したので文献的考察を加え報告する. 症例は37歳の男性で職場検診で胸部X線写真上, 右上縦隔の異常陰影を指摘された. 胸部CTおよび胸部MRI検査で縦隔嚢腫と診断された. 術前の血液検査では甲状腺, 副甲状腺ホルモン, 腫瘍マーカー値のいずれの上昇も認めなかった. 縦隔嚢腫の診断のもとに胸腔鏡下手術を施行した. 嚢腫は上大静脈と椎体の間に存在し大きさは10.0×5.0×4.5cmであった. 壁側胸膜を切開し嚢腫を確認した後, 嚢腫の全周を剥離し, 無色透明の内容液を約100ml吸引し嚢腫を完全に摘出した. 摘出した嚢腫は病理組織学的に縦隔発生の上皮小体嚢腫と診断された.
  • 吉山 崇
    1998 年 52 巻 12 号 p. 764-766
    発行日: 1998/12/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
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