医療
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52 巻, 4 号
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  • ―精神保健福祉法の制定の背景を探る―
    吉川 武彦
    1998 年 52 巻 4 号 p. 219-225
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    1900年(明治33)から1997年(平成9年)までのほぼ100年間に, わが国の精神保健福祉がどのように変遷したかを述べる.
    1900年に制定された『精神病者監護法』では, 自宅に精神障害者を監置することを合法化し, 1919年(大正8)の『精神病院法』では, 精神障害者の入院治療を促進することとなった.
    第2次世界大戦終了後5年をへた1950年(昭和25)には, 『精神衛生法』が制定され, 精神病者監護法および精神病院法は, その役割を終えた.
    1952年(昭和27)には, 国は国立精神衛生研究所を設置し, 精神障害の発生予防と国民の精神衛生の向上にかかる研究体制を整備した. 1954年(昭和29)に, 第1回全国精神衛生実態調査を行い, 全国の精神障害者は130万人であると推計した. 1963年(昭和38)の第2回全国精神衛生実態調査では, 精神障害者は124万人と推計したが, その80%はリハビリテーションによって, 社会復帰することが可能であるとした.
    これを受けて, 1965年(昭和40)に精神衛生法の改正が行われ, 精神障害者の在宅治療が行われるようになった. この年, 国立精神衛生研究所に社会復帰部が設置され, それまで行ってきた精神障害者リハビリテーション研究が進展することになった.
    22年後の1987年(昭和62)に精神衛生法を改正し, 『精神保健法』が制定されたのであった. この法改正は, (1) 国民の精神健康の保持と増進, (2) 精神障害者の人権保護, (3) 精神障害者リハビリテーションの促進をテーマとしたものであった. これによって精神障害者社会復帰施設が法定化し, 「精神病院から社会復帰施設へ」という流れをつくることになった. それとともに国民は, 社会復帰しようとする精神障害者に協力する義務を負うことになった. 人権保護の面では, 精神障害者の自己判断を尊重してインフォームド・コンセントを重視する一方, 精神医療審査会が設置されて不適切な処遇を受けた精神障害者が, 自身で訴えることができるようになった.
    この間に, わが国の厚生省に設置されている公衆衛生審議会の, 「地域精神保健対策に関する中間意見」, 「処遇困難患者に関する中間意見」, 「今後における精神保健対策について」を踏まえて, 1993年(平成5)に精神保健法の改正が行なわれた. この改正では精神障害者を「社会復帰施設から地域社会へ」という流れをつくることになり, 精神障害者のリハビリテーションがいっそう推進されることになった. ただ問題なのは「国民の精神健康の保持や増進をはかる」という面が相対的に後退したことであろう.
    1993年には『障害者基本法』が成立し, 精神障害者を障害者と明定し, 保健・医療施策ばかりでなく福祉施策にも重点をおくことになった. これを受けて, 1995年(平成7)には精神保健法が大改正され, 『精神保健および精神障害者福祉に関する法律(通称, 精神保健福祉法)』となった. この間の1994年(平成6)には, 「地域保健法」が成立している.
    このように, 精神障害者を地域ケアするという公的処遇の方向がみえてきたが, これを支えるには精神保健・精神科医療・精神障害者福祉が互いに, いい関係を保たなければならない. その意味では, これからの精神保健福祉では, “救急”が問題となろう. 精神科救急の特性として, 「メディカルイマージェンシイ」と「ソーシャルイマージェンシイ」の2者があるように思うが, これらは, 今後取り組まれるべき問題である.
  • ―日常診療における血中カルシウム測定の重要性―
    池田 恭治
    1998 年 52 巻 4 号 p. 226-232
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    カルシウム(Ca)代謝異常症は, 概してまれな疾患と認識されているが, 高Ca血症や低Ca血症は, 一般の外来や病棟においても実はかなりの頻度で存在し, また一見関連のないさまざまな病態に合併して認められることもある. しかしながら, Ca異常に特有の症状がなく, また自覚症状を欠く症例も多いことから, 血清カルシウムを測定する習慣が診断への足がかりとなる. 本稿では, Ca・骨代謝の分野における最近のめざましい研究成果を紹介しながら, Caホメオスタシス・骨代謝の基本的な仕組みについて概説した後, 日常診療における血清Ca測定の意義とその正確な評価に関する実際的ポイントを整理する.
  • 村上 功, 横崎 恭之, 重藤 紀和
    1998 年 52 巻 4 号 p. 233-236
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    遺伝子診断が癌にも広く行われるようになってきている. これにより予後の推定が可能か否か注目されているが, 手技的な問題から, 分析には手術あるいは剖検材料が主として用いられてきた. そこで肺癌症例の診断時に得られる細胞診材料を用いたp 53遺伝子変異の検出手技の確立を試みた. すなわち気管支鏡検査における擦過細胞診材料, ならびに胸水細胞診材料のうち, 悪性細胞の存在が細胞診検査にて確認できた材料を, PCR変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(Polymerase Chain Reaction. Denaturing Gradient Gel Electrophoresis: 以下PCR-DGGEと略す)を用いて, Exon 3から9の領域におけるp 53遺伝子変異の検索を行った. 肺癌症例42例中19例(45%)に変異が検出され, 細胞診材料におけるp 53遺伝子変異の検出が高い精度で可能であることが確認できた.
  • ―汎用性のある酵素法を用いて―
    藤田 幸久, 陣内 研二, 扇谷 茂樹, 森鼻 文朗, 小林 浩子, 石原 正光
    1998 年 52 巻 4 号 p. 237-241
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    分岐鎖アミノ酸(BCAA)/チロシン(Tyr)モル比(BTR)が有用な肝代謝機能検査として実施されているが, 他の臓器でもこれらBCAAやTyrは代謝に関与しておりその関係は不明なところが多い. 今回, 筋萎縮性疾患のBCAA, TyrおよびBTRを測定し, 統計学的に健常者との比較検討を行ったところ, Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)患者群が他の筋萎縮性疾患や健常者に較べてBCAAとTyrが低値傾向を示した. またDMD患者についてstage分類と体重, Body mass index (BMI)に対するBCAA, TyrおよびBTRの関係を検討したところ, DMD患者の血清中Tyrが体重とBMIに有意な相関を認め, DMDの筋萎縮度とTyrの関係があると考えられた. 肝代謝機能検査目的でBTRを行う場合, BCAAとTyrの代謝に関与する疾患や薬物投与に注意を要する.
  • ―発生頻度およびその原因―
    濱中 紀子, 竹田 清, 大住 壽俊, 田村 栄稔, 大川 恵, 渋谷 博美
    1998 年 52 巻 4 号 p. 242-245
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    全身麻酔症例7174例を対象に, 気管内チューブに起因するトラブルについて, Retrospectiveに検討した. チューブトラブルは, 59例(0.8%)にみられた. 内訳は, (1) 挿管時の歯牙接触などによるカフ漏れが22例(37%)で最も多く, (2) 頭位変換による気管壁へのチューブ先端の接触および (3) 分離肺換気中の気管支内チューブのスリップアウトによる換気不全が各9例(15%), (4) 乳癌患側上肢によるチューブの圧迫・折れ曲がりが5例(8%), (5) チューブカフの変形・気管内腔への脱出による気道閉鎖が3例(5%), その他11例(19%)であった. いずれの場合も注意深い挿管操作に加え, 術中の頭位・体位に配慮することにより防止できるものと考えられた. また特殊気管内チューブの場合, それぞれの特徴を理解することにより, チューブトラブルは回避可能と考えられた.
  • (国立療養所循環器病研究会第2報)
    上田 英之助, 石川 秀雄, 原田 尚門, 井上 智勝, 佐藤 龍也, 伊藤 一輔, 五十嵐 丈記, 岸 不尽弥, 伊藤 朋文, 甲斐 一成 ...
    1998 年 52 巻 4 号 p. 246-252
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    血圧のコントロールの良否と心血管事故の発生率の関係を検討するために, 国立療養所循環器研究会に所属する13施設に登録された526人の高血圧患者を, 5年間の前向き試験によって検討した. 心血管合併症の既往のある患者を除いた283例を最終的に統計解析の対象とし, 5年間で17人(6%)の心血管事故が観察された. 収縮期血圧・拡張期血圧の高い群で心血管事故の発生率が高く, また血清クレアチニン値は5年間で有意に低下していた.
    この5年間で11人の癌発生がみられたが, Ca拮抗薬を使用していた群の方が, 使用していない群に比して有意に癌発生率が低く, 相対危険度は14%であった. これについては, 現在再調査を終え, 解析中である.
  • 合川 公康, 田口 眞一, 下山 嘉章
    1998 年 52 巻 4 号 p. 253-256
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    Percutaneous transvenous mitral commissurotomy:経皮経静脈的僧帽弁交連切開術(以下PTMC)は僧帽弁狭窄症の治療法として, 比較的侵襲が少なく, 高い治療効果が得られる反面, 術後の弁閉鎖不全のため新たな治療が必要になる場合がある. 今回我々は, 僧帽弁狭窄(以下MS)に対しPTMC施行後症状の改善を得られたが, 僧帽弁閉鎖不全(以下MR)が発症し, 長期経過観察中, 心不全となった症例に対し僧帽弁置換術(以下MVR)を行い良好な治療結果を得られた. PTMC施行に際しては, 心エコーなどでの充分な精査が必要であり, PTMCの侵襲の少なさや簡便さを重視するだけでなく, 特に弁下病変の強いものなどは, 僧帽弁置換術の可能性も充分考慮しなければならない.
  • 今村 純一, 池山 幸英, 自見 康孝, 金 茂成, 鈴木 道成, 山口 美隆, 加田 健一
    1998 年 52 巻 4 号 p. 257-260
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    通常Wernicke脳症に急性小脳腫脹を伴うことはない. 急激なチアミン欠乏が小脳腫脹をもたらしたと思われるWernicke脳症を経験した. 症例は52歳男性, 軽度の意識障害と歩行障害を主訴に入院. 糖質輸液を受けたが, 食餌処方がなされていたためビタミンB1の意識的投与がなされず症状増悪し昏睡, 四肢麻痺, 全外眼筋麻痺となった. ビタミンB1の大量療法を行い治癒した. CT, MRIで急性小脳腫脹が認められ, HMPAO-SPECTでは視床や小脳にhyperemiaを示すと思われる高集積像がみられた. チアミン欠乏に対して視床と同様に小脳もきわめて脆弱であるものと思われた.
  • 青木 栄, 角田 毅, 山口 真史, 見供 修, 桑原 英眞
    1998 年 52 巻 4 号 p. 261-264
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    予約などを簡素化したダイレクト予約システムにより, 高度医療機器の共同利用の推進と患者サービスの向上を目指し, 医師会などとの医療ネットワーク構築を試みた. また, 講演会や検討会などのオープン化などにより, 種々の教育研修活動を行った. 沼田利根医師会の「かかりつけ医推進モデル事業」の実施を受け, 地域医療連携推進事業にも協力し, 病診連携を推進した.
    入院・外来患者数, 紹介患者数, 高度医療機器の検査件数が増加し, 平均在院日数は短縮した. 内科の患者数に対する必要医師数と現状の内科常勤医数の格差が拡大し, 業務改善のみならず, 内科医師の増員が望まれる.
    患者サービスの向上と医療費抑制にも効果があることが推測された.
  • 井関 基弘, 木俣 勲
    1998 年 52 巻 4 号 p. 265-267
    発行日: 1998/04/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
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