医療
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53 巻, 4 号
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  • 湯尾 明
    1999 年 53 巻 4 号 p. 231-238
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    ヒトの好中球は外部からの刺激に反応して活性酸素を産生し放出するが, まず最初に産生される活性酸素はスーパー・オキシドである. この反応は, 好中球の細胞膜で行われ, 細胞内のNADPHから電子を受け取って細胞外の酸素に受け渡す電子伝達系であり, NADPHオキシダーゼとも呼ばれている. この反応にかかわる酵素は7種類の蛋白からなる複合体であり, その構成要素はそれぞれgp91Phox, p22Phox, Rap1A, p47Phox, p67Phox, p40Phox, Rac1/2と呼ばれている. これらの分子の間での結合様式などが詳細に研究されてきた. また, 細胞膜上の受容体からこれらの活性酸素産生系に至る細胞内刺激伝達においてはMAPキナーゼファミリーのp38が重要な役割を果たすと考えられている. 一方, 様々のサイトカインは好中球の活性酸素産生を直接惹起するよりもむしろ, 他の刺激物質による活性酸素産生を増強する作用(プライミング)を有し生理的にも重要であるが, その機序に関してはほとんど解明されておらず今後の重要な研究課題である.
  • ―気道粘膜の修復とリモデリング―
    庄司 俊輔
    1999 年 53 巻 4 号 p. 239-245
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    気管支喘息の疾患概念および治療方針はこの十年足らずの間に急激に変化した. これは喘息の病態の本質がそれまでの「気管支平滑筋収縮」から「気道粘膜の炎症」に移行したためであり, これに呼応して強力な抗炎症作用を有する吸入ステロイド剤による治療が成人における喘息治療の中心となり, これを広く啓蒙するために国際的および日本のガイドラインが次々と作成されている. しかし, この数年, ステロイド剤治療にも抵抗性の難治性喘息の気流閉塞の原因として, 気道粘膜組織の構造変化である「リモデリング」が非常に注目を浴びている. 本稿では, これまでの気道粘膜構成細胞に関する筆者の研究を紹介しながら, 気管支喘息における気道傷害後の治癒過程での正常修復と, 不全治癒と考えられる気道リモデリングについて概説する.
  • ―コンピューター画像による形態計測法の応用―
    矢倉 道泰, 村居 晴洋, 小島 博, 時田 元, 上司 裕史, 原田 英治
    1999 年 53 巻 4 号 p. 246-250
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    Interferon(IFN)-αが抗線維化作用を有するかどうか, 治療前の肝組織がstage F3であったC型慢性肝炎82例を対象として検討した. IFN投与群(A群)はIFN-αを6ヵ月間, 計480-880MU投与し, 投与終了時および終了6ヵ月後, HCV-RNAは陰性化せずALT値も持続正常化しなかった無効例46例(男/女, 25/21, 平均年齢57.0歳), コントロール群(B群)はIFN投与歴がなく肝臓用剤のみを投与した36例(男/女, 24/12, 平均年齢57.6歳)とした. 治療前後のALT値の変動パターンから, (a): 常に正常の2倍(60IU/L)未満, (b): 常に60IU/L以上, (c):(a), (b)以外の3サブグループに分け, 各サブグループごとにA, B両群間のstagingの改善率を比較した. また治療前後で同じstage F3の場合は, 鍍銀染色標本をAdobe Photoshopに取り込み画像上, 生検組織全体に占める線維化部分の面積をそれぞれpixel数で出し線維化率を求めて治療前後で比較し, 改善または悪化に区別した. 平均肝生検間隔期間はA群38.0±22.9ヵ月, B群32.3±18.6ヵ月で有意差はなかった. 結果: stagingの改善率は全例ではA群のほうが有意に改善した. ALTの各サブグループ別ではいずれもA群のほうが高率に改善したが有意差はみられなかった. 肝線維化のマーカーである血清aminoterminal peptide of typeIII procollagen (PIIIP)の年変化率の平均を比較したところ, 各サブグループ別, 全例ともにA群では負, すなわち改善傾向が, B群では正, すなわち悪化傾向がみられたが両群間に有意差はなかった. 以上より, IFN-αは肝臓用剤より抗線維化作用を有する可能性が示唆された.
  • 真鍋 麻美, 中村 幸夫, 高沢 鞆子, 木田 和幸, 臼谷 三郎, 斎藤 良治
    1999 年 53 巻 4 号 p. 251-255
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    妊産褥婦の栄養管理を行うにあたって, そのエネルギー消費量を推定することは重要である. 心拍数と酸素消費量の関係を算出し, その式よりエネルギー消費量を推定するために, 正常な妊娠経過をたどった15名の婦人を対象に妊娠初期・中期・後期において, 安静時歩行負荷時における心拍数: (heart rate: HR)と酸素消費量(VO2)を測定し, 両者の回帰直線を求めた. HR, VO2ともに妊娠週数につれて上昇していったが, HRとVO2/kgの関係に妊娠週数による変動は認められなかった. HR-VO2直線は安静時と運動負荷時の2種類の直線(相関係数0.79-1.00)であらわされ, その勾配は安静時で0.03-0.07, 運動負荷時で0.19-0.25であった. 安静時, 運動時の2直線を用いて単位時間における酸素消費量よりエネルギー消費量を算出できた.
  • 杉本 直俊, 竹崎 英一, 有吉 隆久, 村上 信三, 甲田 徹三, 石川 勝憲, 山根 哲実, 片山 正一
    1999 年 53 巻 4 号 p. 256-260
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌の胆管内発育によりhemobiliaを来たし, transcatheter arterial embolization(TAE)にて止血し得た62歳男性例を報告する. 肝細胞癌にて入退院を繰り返していたが下血, 右季肋部痛, 発熱を主訴に救急入院. 著明な貧血を認め, 上・下部内視鏡を施行したが出血源確認できず. 止血剤, 輸血にて小康状態となるも第21病日に再度下血を来たし上部内視鏡施行, 十二指腸乳頭部より新鮮血の出血を認め, 肝動脈造影で実質相から静脈相にかけて肝内胆管内に造影剤の漏出を認め, 肝細胞癌の胆管内発育が示唆されTAE施行, 腫瘍濃染は消失, 以降症状安定し退院となった. その後自宅にて静養するも全身衰弱が進行, 心肺停止にて救急来院, 救命処置施行するも死亡. 剖検にて肝内胆管内への肝細胞癌の発育が確認された. hemobiliaの治療はWalterらの報告以来外傷が原因のものにはTAEが第1選択であるが本例のように腫瘍が原因のhemobiliaに対してもTAEが有効であると考えられた.
  • 荒尾 徳三, 吉岡 敏文, 田中 盛富, 清藤 哲司, 川島 恵, 栗山 宗彰, 詫間 義隆, 間阪 拓郎, 坪井 壮, 永野 拓也, 澤山 ...
    1999 年 53 巻 4 号 p. 261-264
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    今回我々は内視鏡にて術前診断し得た回腸脂肪腫による成人腸重積症の1例を経験したので若干の考察を含め報告する. 症例は49歳女性. 腹痛, 下血にて来院し緊急下部内視鏡検査にて腸重積の所見を認め, 生検組織, 超音波内視鏡検査, 腹部CTなどより脂肪腫と診断し, 回盲部切除術施行. 病理組織診断も脂肪腫であった. 本症例より腸重積症に対して, (1)組織診断が得られる, (2)出血などの病変の状態が把握できる, (3)重積解除により質的診断を試みる時間を稼げるなどから大腸内視鏡検査は有用であった.
  • 佐伯 尚哉, 辻 雅之, 伊藤 俊雄, 辻 孝, 森脇 要, 木村 雅友
    1999 年 53 巻 4 号 p. 265-268
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    症例は76歳女性. 食欲不振と心窩部痛のため入院. 内視鏡検査ではBorrmann3型進行胃癌で組織分類では中分化型腺癌であった. CTでは肝左葉と膵頭部へ浸潤を認め, 血中AFPは840ng/mlであった. 放射線療法(合計52Gy)温熱療法(9回)を施行した. 内視鏡とCT上腫瘍の縮小を認め, 血中AFPは384ng/mlまで低下した. その後腫瘍は増大傾向にありAFPは41300ng/mlまで上昇した. 初診より1年7ヵ月後に死亡. 剖検試料でAFP免疫染色陽性の胃癌細胞を認めた. 本症例は放射線療法と温熱療法が有効であったと考えられ, 臨床経過上血中AFP値が効果判定の目安になった.
  • 劉 志瑾, 開原 成允
    1999 年 53 巻 4 号 p. 269-273
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    サブセンター大蔵は総合ネットワークとしてのHOSPnetの中にあって, 施設が独自のシステムを試行するための実験的な場を提供し, ネットワーク上でのシステム開発に対しては運用の支援や相互交流するなどの活動をしている.
    現状では, 複数の施設問でのシステムや試行的なシステムなどを具体化していくことを目的としている. そのために, 標榜医名簿など活用のしやすい情報を公開し, 臨床データ収集システムや健康危機管理システムなど試行的なシステムも積極的に開発し運用を支援している. 今後は診療連携システムの開発なども含め, ネットワーク上での臨床研究システム開発を積極的に展開し, 有効利用していただくことでサブセンター大蔵の活動を一層充実させていきたい.
  • ―集中治療室での経験―
    大内 将弘, 伊藤 良子
    1999 年 53 巻 4 号 p. 274-277
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    救急の現場やICUなどでは, 現在考えられているありとあらゆる治療手段を駆使して, 治療に当たるのが医師の使命である.
    しかし, 色々の治療によってもこれ以上よくならないと医療者側が認識しても最後まで, 濃厚治療を続けているのが現実ではないだろうか. 当院集中治療室勤務看護婦18名によるアンケート調査では, これ以上の濃厚治療は意味がないと感じたことがあるとの回答は100%であった. 主なものは, 長期の人工呼吸管理, 末期症例に対するアルブミンなど血漿製剤の過量投与, 長期の補助循環などであった. 医療資源の有効利用の観点からも, 集中治療室という危機的状況におかれた症例に対しても, 臨床医がより科学的根拠に基づいて治療法を選択, 決定すべきであるとのEBM手法を念頭にいれた治療と適応の限界について考える時期にあると考えている.
  • 川村 研
    1999 年 53 巻 4 号 p. 278-280
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
  • 1999 年 53 巻 4 号 p. 281-285
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
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