医療
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56 巻, 1 号
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  • 柳澤 正義
    2002 年 56 巻 1 号 p. 3-4
    発行日: 2002/01/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    小児救急医療が, 今ほど広く社会的に話題になったことはかつてなかったであろう. 少子化が急激に進行し, 疾病構造が大きく変化している現在, 小児医療はさまざまな課題を抱えているが, 小児救急医療は, 子どもの心の問題と並んで, 対応が迫られている最も重要な課題であろう. 現在の医療保険制度における小児医療の不採算, とくに病院小児科が不採算ということから, 各地の総合病院小児科の縮小, 混合病棟化, あるいは閉鎖が行われ, 小児科医師定員の削減も行われている. 一方, 一部の病院には患者が集中し, とくに休日・夜間救急診療はまさにパンクしそうな状態になっており, そのような病院の小児科医は大変な過重労働を強いられている. 救急外来を受診する小児患者の多くは比較的軽症であるが, なかには真に緊急性を有する患者や重症患者も含まれている. 子どもの具合が悪いと感じ, 心配になって時間外に病院に連れて来るお母さん, お父さんにとってみれば, 一次, 二次, 三次の区別はない. また, 最近の親達は,子どもの医療に専門性を強く求めている. 休日・夜間の受診の増加には, 生活パターンの変化, 両親ともに働いており, 昼間子どもを見る機会が乏しいことも関係している.
    このような状況に対して, 時代と地域の実状に応じた小児救急医療体制の整備が急がれることは勿論であるが, 一般の人々に対して, こどもの病気とその症候, 家庭での対処の仕方など啓発することも必要である. もうひとつ, 救急医療の重要性は事故に関連する医療という点である. 衆知のように, わが国では, 1歳以降, 小児年齢を通じて, 死亡原因の1位は不慮の事故であり, 乳児においても死亡原因の3位は乳幼児突然死症候群, 4位が事故である. 死に至らない受傷者の数は膨大である. 事故は予防が最重要であることはいうまでもないが, 起こってしまった事故について, 救命し, 後遺障害をできる限り少なくするのは, 救急医療の役割である. ともかく, 病気にしろ事故にしろ, 救急医療体制の整備は, わが国の子ども達の健康と安全にとって基本的な事柄である.
    最近, 小児救急のことがマスメディアにもしばしば報じられるなど, 社会的関心も高まっている. 行政も小児救急医療体制の整備に本腰を入れて取組む姿勢を示しつつあることは, 小児医療に携わるものとして大変に喜ばしいことである. さらに, 平成14年3月1日開院する国立成育医療センターは, 成育医療に関係する救急医療, すなわち, 小児や母性・周産期の救急医療に真正面から取り組むことを明らかにしている. ナショナルセンターに求められているモデル的医療として展開される訳であるが, 政策的医療先駆的医療としての意義もあると思われる.
    このようなときに, 「医療」の特集として「小児救急医療」が企画されたことはまことに時宜を得たものということができる. 内容として, 症候・診断・治療など医学的なことよりも, 今後のわが国の小児救急医療体制のあり方を考えるうえで参考になるものにしたいと思い, 論文のテーマと最適任の執筆者を提案させていただいた. ご承諾くださった執筆者の方々に心から感謝申し上げたい. 充実した内容の特集ができ上がったことを確信している.
  • 田中 哲郎
    2002 年 56 巻 1 号 p. 5-8
    発行日: 2002/01/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    小児救急医療は少子化対策, 子育て支援の立場より充実が急務とされる. 小児救急医療は通常の医療制度のなかで成り立たないため, 政策医療として位置づけて対応すべきである.
    これらの小児救急医療の問題は戦後50年の医療政策の歪みによるところが多く, その解決は容易でない. また地域により状況も大きく異なることより, その地域に最も良いと思われる充実策を探るべきである.
    充実に際しては, 原則を明らかにし, 住民や開業医にも協力を得る必要がある. 特に, 小児科医の多くが勤務する小児病院の積極的な対応が不可欠である. 今こそ, 医療関係者は英知を出し合い, 小児救急の充実を成し, 国民の信頼を勝ち取るよう努力をすべきである.
  • 宮坂 勝之
    2002 年 56 巻 1 号 p. 9-11
    発行日: 2002/01/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    わが国の小児の救急医療体制の不備は, 今や一診療科“小児科”の問題に留まらず, 社会問題である. 現在の問題の根源は, 専門医志向, 研究論文志向を助長する医科大学の教育体制にあり, 患者を総体とし取り扱う総合診療の教育体制が大きく欠如している. そして重症患者の総合診療ともいえる小児集中治療も十分に整備されていないことから, 安心して救急医療を行う体制も確立されていない. 成育医療センターの開設が, 医科大学の枠を超えた小児救急医療体制の契機となることが期待される.
  • 大矢 幸弘, 赤澤 晃
    2002 年 56 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 2002/01/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    今, 我が国で問題となっている小児救急医療体制と小児科医の過労問題について外国(英米独)との比較を行った. 英米では救急外来は大人も子どもも救急専門医が担当し, ドイツでは病棟当直をしている小児科研修医が担当しているが, 40歳以上は免除となる. いずれの国も日本と違ってベテランの小児科医は病院当直や時間外救急外来を担当しておらず, 救急患者は専門看護婦によるトリアージを経て医師の診察を受ける. 英米にならって本邦の小児救急医療改革を進めるなら, 小児も診る救急専門医の創設と養育をいそぐ必要があろう. また, 我が国の実質小児科医数は英米独の半分以下しかなく, 根本的には小児科医の大幅な増加策を講じる必要がある.
  • 田原 卓浩
    2002 年 56 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 2002/01/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    わが国の医学教育において, 近年数々の改革がおこなわれつつある. 卒前教育ではすでにOSCE (Objective Structured Clinical Examination; 客観的臨床能力試験)やテュートリアルなどの具体的な改革が一般化しつつあるが, 卒後教育(臨床研修)においてはすべての教育施設においての共通のカリキュラムが策定されるにはいたっていない. このような状況のなかで, 「小児科」さらには「小児救急医療」の研修制度だけを策定することは難しいものの, 社会(地域)からの注目を集めている小児救急の分野に確固たる教育基盤を整備することは急務と思われる.
    各地で展開されている小児救急医療体制, またそこでおこなわれている救急医療の実態・問題点を踏まえた研修医教育には, 適切な「場」や診察技法・手技・評価システムの確立が不可欠であるが, 指導医の育成プログラムはより速やかに整備される必要がある.
  • 吉田 幸子
    2002 年 56 巻 1 号 p. 25-27
    発行日: 2002/01/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    小児の初期救急に対して多くの保護者は, 育児支援を求めており, それらは現代の社会問題と密接に関係している. 二次救急治療については, 小児の入院の体制に問題がある. 三次救急では小児看護に精通した高度な看護技術が要求されている. 小児医療は総合病院においては臨床での症例数も少なく, 教育も充分にできない現状である. 小児医療者の確保が急務である.
  • 金子 勉
    2002 年 56 巻 1 号 p. 28-31
    発行日: 2002/01/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    小児の救急搬送の状況
    平成12年中の東京消防庁救急隊による搬送人員は540, 660人で, そのうち急病事故の搬送人員は307, 560人, ケガなどの一般負傷の搬送人員は75,542人, 交通事故は96,411人となっている. 小児の救急搬送の状況は, 搬送人員が44,360人(当庁全体の8.2%), 急病事故による搬送人員は20,817人(全急病搬送人員の6.8%), 一般負傷の搬送人員は11.785人(全一般負傷搬送人員の15.6%)となっている. 東京都における小児人口が減少しているにもかかわらず, 小児の救急搬送は増加している. 小児の救急搬送人員中, 医療機関での初診時程度の内訳をみると, 死亡24人(0.1%), 重篤224人(0.5%), 重症757人(1.7%), 中等症6,540人(14.7%), 軽症36,815人(83.0%)となっている. 年齢別の搬送人員では, 2歳以下の搬送人員が18,690人で, 小児全体の44.8%を占めている.
    また, 曜日別では, 土・日曜の搬送が多く, 土・日をあわせた搬送人員は14,094人(31.8%)となっている. 時間帯別の搬送人員を見ると, 急病事故では17時前後の時間帯に多くなっている. 救急現場における活動時間(救急隊が出場してから病院に到着するまで)の平均は, 当庁平均で27分48秒, 小児救急については25分55秒と短くなっている.
  • 阪井 裕一
    2002 年 56 巻 1 号 p. 32-35
    発行日: 2002/01/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    現在小児の救急医療体制が整備されていない大きな原因の一つは, 重症患者を受け入れる能力のある小児ICU (Pediatric ICU)を備えた施設がきわめて少ないという点にあると思われる. 医療施設が集中している東京においてさえ, 小児の重症患者に対して呼吸循環管理をいつでも施行できる, という病院はほとんどないのが実情である, 小児の重症患者を絶対断らずに24時間体制で受け入れる, という北米の小児病院のような施設があると, 各施設の救急担当医は重症患者を安心して送ることができる. 卒後教育の面においても, 心肺蘇生などの技術を教える場となるべき小児ICUがないことが, 大きな痛手となっている.
    日本においても各地の小児病院が患者のニーズに目を向けて救急医療を行い, 重症患者を24時間体制で受け入れる小児ICUを整備することが, 小児救急システムの問題解決につながると考える.
  • 1) 都会における小児救急医療体制
    市川 光太郎
    2002 年 56 巻 1 号 p. 36-39
    発行日: 2002/01/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    少子化・女性の社会進出・情報過多などの育児環境の変化に起因して, 増大した育児不安を抱える保護者の小児救急医療への多様化したニードと要望の高まりは顕著となっている. このようななかで, これからの都会における小児救急医療体制の再構築においては(1)初期~二次三次救急医療の区別が困難という小児救急疾患の特徴から一箇所集中型小児総合救急センター体制が望ましい, (2)開業医・勤務医合同での救急医療体制の構築が望ましい, (3)コメディカルの機能分担・専門性の確立による人的資材の有効利用と機能的活用が必須である, (4)内科的救急疾患のみならず外傷・外科的疾患まで含めた小児総合救急医療を行うこと, などが望まれる. このような条件を整え, かっ小児集中治療施設を有する基幹病院小児科, もしくは小児専門施設が人口100万人に1箇所の割合で整備され, 地域の小児救急医療の向上を目的とした研修体制をも兼ね備えての活動が望まれる.
  • 2) 山間へき地における小児救急医療体制
    荒川 洋一
    2002 年 56 巻 1 号 p. 40-43
    発行日: 2002/01/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    山間へき地の小児救急医療は, 小児科以外の医師によって診療が行われていることが多い. 小児の血管確保に髄内針を用いて良いことや薬剤の使用量などマニュアル化するとともに, 他のスタッフも含めて継続的な教育・研修制度の保障が必要である. また3次医療機関での救急外来診療に, 少ない小児科医を有効に生かし, 地域の小児科医も参画できるような弾力的人材活用を加えた小児救急医療体制のシステム作りも必要と思われる.
  • 中川 聡
    2002 年 56 巻 1 号 p. 44-50
    発行日: 2002/01/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    2000年に発表された小児に対する心肺蘇生法の新しいガイドラインは, 原則としては1992年のものと大きな変更はない. 変更の主な点は以下のとおりである. 一次救命処置では, 蘇生用のマスクとバッグが使用可能な状況では, それらを積極的に使用することが薦められている. また, 心マッサージを行う前の循環の評価としては, 一般市民に対しては, 脈を触れずに他の兆候から判断するように教育するようになった. 二次救命処置においては, 気管内挿管の際のチューブ位置の確認のためカプノメータの重要性が強調された. また, ラリンゲアル・マスク・エアウェイが気道確保の手段として選択肢の一つとなった.
    さらに, 我が国での小児の二次救命処置のレベルの向上のためには, Pediatric Advanced Life Supportのコースの導入は不可欠であり, これが今後の課題となる.
  • 玉腰 暁子, 大野 良之, 川村 孝, 橋本 修二, 永井 正規
    2002 年 56 巻 1 号 p. 51-58
    発行日: 2002/01/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    厚生労働省が特定疾患として認定しているいわゆる難病は, 病因論あるいは症候論的な概念ではなく, 多分に社会政策的な概念で括ることができる. そのような難病に対して対策を立てる際には, 患者数やその動向, 基本的属性や病態の分布を知ることが不可欠であるので, 治療研究事業対象となっていない難病(受給未対象疾患)を対象とした全国疫学調査を実施し, その実態を明らかにすることを試みた. 厚生省特定疾患調査研究事業により研究を行っている調査研究班が対象としている特定疾患調査研究対象118疾患から, すでに治療研究事業の対象となっている43疾患(受給対象疾患名としては41疾患), 治療研究事業対象疾患以外であっても1993年度以降特定疾患の疫学に関する研究班によって全国疫学調査が行われた29疾患, 診断基準が確立していない6疾患, 患者数が少ない5疾患, 他の調査研究対象疾患に含まれる1疾患を除き, 34疾患59病態に対して疫学調査を実施した. 調査は, 患者数調査と疫学・臨床像調査に分けた. 患者数調査では回収調査票は14, 267通(回収率61.0%), 疫学・臨床像調査では調査票は8,451人分が報告された. 本論文では, 各疾患の推計患者数ならびに共通の疫学像を報告する. 今回の資料が, 今後の行政および臨床における難病対策に資することを期待したい.
  • 加藤 融, 根本 英明, 大塚 次男, 湯浅 龍彦
    2002 年 56 巻 1 号 p. 59-60
    発行日: 2002/01/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 2002 年 56 巻 1 号 p. 61-62
    発行日: 2002/01/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
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