21世紀を迎え, 国立病院・療養所の役割が様々な観点から問い直されている. 昨年度から神経ネットワーク関連の35施設(本年度37施設)からなる神経臨床研究班がスタートし, 政策医療ネットワークの中に共通の論議の場が設営されたことは, 画期的なことであり喜ばしいことであった. これらの施設での神経難病入院患者数に関し, 班員に調査を行った. その結果, 各神経難病の一日当たりの入院患者数は, 筋萎縮性側索硬化症300名, パーキンソン病400名, 脊髄小脳変性症300例, 多発性硬化症100例, 慢性期脳血管障害400例であり, 当初の見込みを遥かに越えた数であった. このように国立病院・療養所が神経難病医療に果たすべき役割の重要性が改めて明らかになった. そのような中で神経難病医療に携わる医療スタッフとしては, 従前とは異なった新たな視点で, 神経難病の人々や家族が抱える問題に立ち向かって行かなければならない.
神経難病医療の質の向上を目指す時のキーポイントは, 診断や治療の技術的革新のみならず, 慢性進行性の疾病を抱えて生きている人々に対して医療スタッフがどのような人間的な繋がりを確立して行けるのかということにある. そのためには, 医療者のスタンドポイントを患者と同じ面に置くところから始めなければならない. その上で情報開示, 病名告知, 終末医療, 緩和医療, 尊厳医療など各々のテーマに対して知識を深め, 技術の向上をはかって行かなければならない.
本シンポジウムは, 神経難病医療に携わるいろいろな職域の代表者が集まり, 互いの壁を取り払って, 病める人々と共に語り共に生きる医療を確立することを目指して設定された.
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