臨床研究とは一般的に日々の診療に寄与するものと定義されるので, 国立病院における臨床研究部はしたがって常に臨床と密接にリンクしているべきである. 国立病院における臨床研究はその広範なネットワークを使用して臨床研究の専門家によって指導されるべきである.
本シンポジウムの目的は独立法人化を間近に控えて国立病院ではどのような研究がなされるべきかまた, その評価はいかになされるべきかである. 研究の内容に関してはネットワークを利用した新薬の開発のための治験, EBMを作成する臨床試験などは取り扱い易いテーマであり, 効果も期待できる. また, 基礎的なテクノロジーや基礎医学者などとの連携を要する研究も十分に施行が可能であり, 既に本シンポシストの発表のように成果を上げている施設もあるが, 全体として人材, 予算などのインフラストラクチャーは十分であるとはいえない.
一方, 評価に関しては無作為試験を手段にしたEBMが現在広く“goldstandard”とされる中, EBMが関与する評価手法が用いられるべきである. しかし, EBMには幾つかの制限もあり, 現行ではrandomized trial, nonrandomized prospective cohort study, retrospective cohort study, cahort with nonparallel comparisonなどのような評価のランク付けをした手法が使用されている. 国立病院における臨床研究の評価も基本的にEBMの関与による評価が望ましい. 英文に対するインパクトファクターは国際的に認知されたピアレビュー制度に基づく評価手法であるが, 邦文に対する評価手法は全くないといえる状況である. 現在司会者は厚生労働省の基盤研究において, 邦文論文の評価方法のルールを作成中である.
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