医療
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57 巻, 6 号
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  • ―NCI Cancer Family Registryに学ぶ―
    宇都宮 譲二, 田村 和朗, 新井 正美
    2003 年 57 巻 6 号 p. 367-375
    発行日: 2003/06/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    家族性腫瘍は単一遺伝子性腫瘍(A)と多因子性腫瘍(B)に大別される. 前者の研究は癌研究の突破口となり21世紀型新医療パラダイムへの道を開いた. それは遺伝的体質(SNPs)と生活習慣相関バイオインフマティクスに基く個別化予知予防医療である. そこでは家系登録システムは家族性腫瘍Bを包含して, 大部分の生活習慣病の予防対策出るモデルとなる不可欠基本的な研究インフラである. 米国では1995年NCIが乳がんと大腸がんに関してCancer Family Registry (CFR)を研究インフラとして立上げ5年間でその有用性が証明された. それは協同運用, 多領域研究対応で, 生体資料保存と家族歴生活習慣情報収集を重視するシステムである. プロスペクティブ計画であるから透明性あるIC取得で倫理的にも安全である. そこで, わが国の問題解決の選択肢の一つとして一部の地域がCFRに参加して交流を通して学び, 30年来の癌家族登録の経験も生かし民族と文化の固有性にも適した新医療インフラを国家的施策として取り上げることが望まれる.
  • 牛尾 恭輔, 黒岩 俊郎, 井野 彰治, 岩下生 久子, 和田 進
    2003 年 57 巻 6 号 p. 376-384
    発行日: 2003/06/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    消化管腫瘍の中には, 家族性大腸ポリポーシス, Gardner症候群, Turcot症候群, 遺伝性非ポリポーシス大腸癌, Peutz-Jeghers症候群, 若年性ポリポーシス, Cowden病などの遺伝性腫瘍がある. これらの疾患は消化管のみならず種々の臓器・器官や組織にも, 多彩な病変が生じる全身性疾患であるとみなされる. ゆえに腫瘍の発生機構と発がん機構の観点から重要かっ興味深い疾患である. これらの遺伝性消化管腫瘍の医療の現場での活用, 教育, 研修, 研究の推進のために, 医用画像データベースをこれまで5力国語(日本語. 英語, 中国語, 韓国語, スペイン語)にて, インターネット上に発信している.
  • 野水 整, 権田 憲士, 山田 睦夫, 竹之下 誠一
    2003 年 57 巻 6 号 p. 385-389
    発行日: 2003/06/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)は家系内に大腸癌や子宮体癌などが集積する常染色体優性の遺伝性腫瘍疾患であり, 原因遺伝子としていくっかのミスマッチ修復遺伝子が同定された. 本疾患は臨床的にはAmsterdam criteriaで定義され, 若年発症, 近位側結腸に好発, 高頻度の大腸多発癌および他臓器重複癌というのが臨床的特徴である. 遺伝子学的にはミスマッチ修復遺伝子の胚細胞遺伝子変異が認められる. また, 腫瘍のマイクロサテライト不安定性が高頻度に認められるのも遺伝子学的な特徴である. 胚細胞遺伝子変異の有無を検査する遺伝子診断は研究的側面が強く, 倫理的配慮が十分になされるべきである.
  • 菅野 康吉, 吉田 輝彦, 和泉 秀子, 児玉 哲朗
    2003 年 57 巻 6 号 p. 390-394
    発行日: 2003/06/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    がんで認められる遺伝子異常の多くは体細胞変異であるが, 一部のがんでは遺伝的素因が認められることが知られ, 原因遺伝子が明らかな遺伝性腫瘍については, 保因者診断が可能となりつつある. 遺伝子診断はハイリスク者のがん予防への有用性が期待されるが, 一方では結婚出産,就職あるいは保険加入等の際に個人に差別と不利益をもたらす危険性があり, 遺伝子診断の実施に際しては, その前後に行われる遺伝カウンセリングの重要性が指摘されている. 遺伝カウンセリングはこれまで小児科や産科領域の疾患を対象に行われてきたが, 本稿では成人の遺伝性腫瘍を対象としてがん専門病院で行われる遺伝カウンセリングの実際について解説する.
  • 岡村 仁
    2003 年 57 巻 6 号 p. 395-399
    発行日: 2003/06/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    近年の分子遺伝学の発展は, 遺伝性腫瘍のリスクの評価にも重要な変化をもたらしており, まだ症状が顕在化していない者に対しても, 遺伝性疾患の可能性についての情報を提供できるようになってきた. しかしこうした技術の進歩の反面, 遺伝子診断がもたらす心理・社会的影響については, わが国においてはこれまであまり関心が向けられてこなかった. このため, 遺伝子診断が及ぼす心理・社会的影響は未知数であり, 遺伝に関する情報をどのように提供し, その後の支援をどのように行っていくかということについての指針も現在のところない.
    本論文ではまず, 遺伝カウンセリングが与える心理・社会的影響および遺伝子検査の結果を伝えられた後の心理・社会的側面について検討したこれまでの研究を概説した. 次いで, hereditary nonpolyposis colon cancer (HNPCC)とfamilial adenomatous polyposis (FAP)に関する遺伝子検査の結果開示が与える短期的および長期的な心理・社会的影響を評価するための, わが国における多施設共同研究について報告した.
  • ―臨床における意味―
    岩間 毅夫
    2003 年 57 巻 6 号 p. 400-403
    発行日: 2003/06/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    私たちが家族性大腸腺腫症に遭遇した場合, 遺伝子検査と臨床との関連についてどう考えるべきか私の立場を述べた. 治療上の進歩が著しく, 遺伝子検査についても商業ベースに乗りつっある現在, そのような進歩がもたらす臨床への影響について一度は考えておく必要がある. この論文においては, 1) 検査の目的, 2) 検査結果と臨床の実際, 3) 遺伝カウンセリングとその問題点, 4) 長期的観点からみた意味, また, 5) 今後の方向性等の諸点について検討した. その結果今後は, 生涯, 世代を視野に入れた遺伝子検査, 診療システムの確立が必要なことが結論された.
  • 金子 聰, 森谷 宜皓, 武藤 徹一郎
    2003 年 57 巻 6 号 p. 404-408
    発行日: 2003/06/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    遺伝性非ポリポーシス大腸がん(HNPCC)は, 大腸癌以外にも, 子宮内膜癌, 小腸癌, 腎孟尿細管癌など, 他臓器に癌の発生する一つの症候群である. 2002年9月より, 大腸癌研究会のHNPCCの登録と遺伝子解析プロジェクトが開始された. そのプロジェクトの概略を今回紹介した. 今後, 遺伝・臨床疫学情報の十分な収集と倫理的にも妥当な研究により, 日本におけるHNPCCの実体や現状が把握され, HNPCC患者やその家族, さらには診療にあたる現場の医療関係者に十分な医療情報を提供することが期待される.
  • ―基礎研究の立場から―
    平家 勇司
    2003 年 57 巻 6 号 p. 409-413
    発行日: 2003/06/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    BRCA-1, -2は家族性乳がんの原因遺伝子として知られており, 米国を中心として発症前診断を含む遺伝子診断への臨床応用が積極的に進められている. 遺伝子診断の方法は複数あるが, 現段階でもっとも確実なのは全領域直接シークエンス法と考えられる. しかし, この方法は金銭的および人的負担が大きく, どの研究室でも簡単に行えるものではない. それゆえ, これに替わる遺伝子変異の有無を調べるスクリーニング法の確立が求められている. スクリーニング法としてSSCP, TGGE, DGGE, PTT, DHPLC等が知られている. 現時点は, DHPLC法が他の方法と比較して変異検出率が高く, スクリーニング法としての有用性が期待されている.
    乳がん患者の増加にともない, わが国においても家族性乳がんの遺伝子診断の機運が徐々に盛り上がりつつある. しかし, 現時点ではわが国における変異と浸透率との関係など明らかとなっておらず, 結果の解釈には慎重を要する. これらの基本的な情報をできるだけ早急に集める取り組みが是非とも必要である.
  • 塚田 俊彦
    2003 年 57 巻 6 号 p. 414-419
    発行日: 2003/06/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    多内分泌腺腫瘍症1型(MEN 1型)の遺伝子診断は, 本症候群や類縁疾患の患者の診療方針の決定に役立つ. ただし, 本症候群の原因となるMETV 1遺伝子の変異にはホットスポットがなく, 発端者の遺伝子診断には遺伝子全体の解析が必要である. また, 遺伝子変異の検出率は家族性MEN 1型で約90%, 散発性MEN 1型で約70%であり, 変異が認められない場合でも, 本症候群の素因を除外できない場合がある. MEIV 1遺伝子の解析結果は, 本症候群の遺伝的異質性, 表現模写の可能性, 遺伝子解析法の限界などを考慮して解釈する必要がある.
  • 川戸 正文, 三國 主税, 廣田 豊
    2003 年 57 巻 6 号 p. 420-425
    発行日: 2003/06/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    G-CSFが臨床で広く使用されるようになり, 白血病, 悪性リンパ腫をはじめとする悪性腫瘍に対してより強力な化学療法を行うことが可能となった. しかし, 一方でG-CSFが急性骨髄性白血病細胞の増殖に与える影響にっいて危惧されている. そこで, われわれは, 急性骨髄性白血病(AML)の寛解導入療法後の好中球減少症に対してG-CSFを投与し, 本剤の有効性, 安全性, 奏効率・生存期間に与える影響について検討した. 対象は, 1993年5月から1995年4月までに登録された15-69歳のAML初回寛解導入療法施行例51例(G-CSF投与例: 32例, 非投与例: 19例)である. 奏効率, 生存率, 無病生存率においてG-CSF投与例, 非投与例間に有意差はなかった. 好中球が1000/μ1に回復するまでに要した日数の比較では, G-CSF投与例: 7日(3-19日), 非投与例: 15日(3-31日)とG-CSF投与例の方が有意に短かった(p<0.01). 以上よりG-CSFはAMLの予後に悪影響をおよぼすことなく寛解導入療法後の好中球減少症に
    対して有用であることが示唆された.
  • 安森 弘太郎, 下村 雄生, 宮島 隆一, 有吉 明子
    2003 年 57 巻 6 号 p. 426-428
    発行日: 2003/06/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
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