本研究は, 栄養状態が血清ミネラルにおよぼす影響を明らかにする目的で実施した.
入院中の慢性期リハビリテーション患者65例(男性37例, 女性28例, 平均年齢72.2±13.5歳)を対象として血清ミネラル(鉄, 銅, 亜鉛, カルシウム, マグネシウム, リン)と栄養指標(アルブミン, ヘモグロビン, C反応性蛋白)の関連を調査した. さらには, 対象患者を栄養状態によって, 低栄養群30例(男性17例, 女性13例, 平均年齢74.4±12.8歳)と非低栄養群35例(男性20例, 女性15例, 平均年齢70.4±13.8歳)の2群に分類して, 血清ミネラル, 栄養指標, 栄養素等摂取量を比較した.
血清アルブミンは, 血清鉄, 亜鉛, カルシウム, マグネシウムおよびリンに対して有意な正の相関を認めた. ヘモグロビンは, 血清鉄および亜鉛に対して有意な正の相関を認めた. C反応性蛋白は, 血清銅に対して有意な正の相関, 血清鉄および亜鉛に対して有意な負の相関を認めた. ミネラルにおいては, 血清値と摂取量の間に有意な相関は認められなかった. 血清アルブミンおよびヘモグロビンは, 低栄養群は非低栄養群よりも有意に低値を示した. C反応性蛋白は, 非低栄養群は低栄養群よりも有意に低値を示した. 血清鉄, 亜鉛およびカルシウムは, 低栄養群は非低栄養群よりも有意に低値を示した. エネルギー, たんぱく質およびリン摂取量, 低栄養群は非低栄養群よりも有意に低値を示した.
以上の結果から, 慢性期リハビリテーション患者の血清鉄, 亜鉛, カルシウムは, 低アルブミン血症や貧血の影響を受けることが認められた. また, 低栄養患者のミネラル欠乏に対しては, ミネラル摂取の増加と共に, 低栄養の改善も行う必要があることが示唆された.
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