医療
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60 巻, 6 号
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  • 横山 顕
    2006 年 60 巻 6 号 p. 357-364
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    アルコール依存症患者の食道ヨード染色を用いた内視鏡検診では, 口腔・咽喉(1.1%), 食道(4.1%)と胃(1.4%)に著しい高頻度(計6.6%)で癌が診断される. 著者らはこの集団の発癌背景の研究から, 飲酒関連発癌のリスク評価には, 従来の飲酒喫煙習慣の評価に加えて, 新たに以下の項目が役立つことを明らかにしてきた. 1) アルコール代謝酵素の遺伝子多型では, アルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)のヘテロ欠損型とアルコール脱水素酵素2(ADH2, 新名ADH1B)の非活性型の組み合わせが相乗的に口腔・咽喉・食道癌のリスクを高め, 前者は同部位の多発重複発癌にも強く関連していた. 2) 飲酒で赤くなる反応を質問する簡易フラッシング質問紙法は, ALDH2欠損を約9割の精度で判別し, 遺伝子解析に類似した食道癌リスク評価を可能にした. 3) 赤血球MCVはALDH2欠損者の飲酒, 喫煙, 栄養不良で増大し, 口腔・食道・胃の発癌リスクの評価に役立った. 4) 口腔・咽喉・食道のメラノーシスは, 同部位の異形成や癌が併存する可能性を示唆する内視鏡所見であった. 5) ペプシノゲン法により慢性萎縮性胃炎を評価すると, アルコール依存症患者では慢性萎縮性胃炎の進行例が多く, ALDH2欠損とともに相乗的に胃癌のリスクを高めた. 以上の新知見に基づく新しい発癌リスク評価を組み込んだ癌予防の取り組みが今後の課題である.
  • 高嶋 成光, 青儀 健二郎
    2006 年 60 巻 6 号 p. 365-369
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    乳がんは全身病であるとする概念が定着し, 乳がん治療は局所療法である外科, 放射線療法に全身療法である薬物を加えることが必須になっている. エビデンスに基づいた薬物療法を行うためには, 臨床試験によりそのエビデンスを創り出す必要がある. 残念ながら, わが国では新薬の承認申請のために企業が行う治験に比し, 研究者主導の臨床試験の重要性が理解されず, 乏しい物的支援のもとで研究者の個人的熱意にのみ支えられた小規模な試験に終始し, 国際的標準治療の開発には貢献できていない. 公的臨床試験グループである日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group; JCOG)の活動を振り返って研究者主導の臨床試験の問題点と今後の展望について述べた.
  • 喉頭摘出術-その問題点と対策-
    角田 晃一
    2006 年 60 巻 6 号 p. 370
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 沼田 勉, 渋谷 真理子, 佐藤 由美子, 村本 武久
    2006 年 60 巻 6 号 p. 371-375
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    進行喉頭癌や下咽頭癌の標準的治療として喉頭全摘出術が行われる. 癌の根治性の観点から優れた手術法であるが, 患者は発声不能となり言語生活を絶たれQOLは著しい低下をまねく. 本手術を行う際には, 音声機能喪失やその他の頭頸部機能障害などを考慮して, 医師, 看護師, 言語聴覚士, 患者団体などが早期に協力しあって患者の治療や支援に当たる必要がある. 本稿においては, はじめに喉頭の解剖と機能をもとに, 喉頭の摘出によって失われる機能を述べた. 次に, 喉頭全摘出術とはいかなる術式でその適応となるのはどのような疾患であるか, 喉頭機能温存を目指す最近の治療法の試み, 機能再建としての喉頭全摘出術後の音声再建術, 無喉頭者への音声再獲得リハビリテーションなどに関して紹介した.
  • 白坂 康俊
    2006 年 60 巻 6 号 p. 376-382
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    喉頭摘出者は, 発声不能となるため, 著しいコミュニケーションの制限を受ける. このため, リハビリテーションにおいては, コミュニケーションの制限によって生じる心理的な問題について配慮することが重要であるが, 必ずしも十分にはなされていない.
    発声の代償手段には, 音声以外の手段を用いる方法(筆談やコミュニケーションボード-50音表-など)と代用音声である食道発声や人工喉頭を用いる方法がある. 人工喉頭には, 笛式喉頭と電気式喉頭の2種が存在する.
    代償手段の選択にあたっては, 価格, 操作性, 使用時に要する体力, 習得の容易さなどの要因に, さらに, 代用音声の選択については, 母音子音の明瞭度, 音量, 音質, プロソデイなどに配慮する. また, 他人が代償機器や使用状態を見た時の印象(見栄え)についても, 気にする喉頭摘出者が少なくないことを念頭に置く必要がある.
    いずれにしても, コミュニケーションの制限によっておこる問題と, 代償手段の特徴などについて, 十分な説明が, 術前になされることが望まれている.
  • 亀尾 慶子
    2006 年 60 巻 6 号 p. 383-386
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    喉頭全摘術後は音声の喪失または制限, 永久気管孔による日常生活上の制限, 外観の変化がおこる. それに対する患者・家族への精神的・身体的・社会的援助を早期から計画した上で看護にあたることが大切である.
    看護師の役割としては大きく4点があげられる.
    1. 手術が最良の状態で受けられるよう, 精神的・身体的・社会的なあらゆる面での準備を行う.
    とくに術後の機能喪失への不安が強いため, 適宜面接を行い, 患者が機能喪失を受容する過程を援助する.
    2. 化学療法, 放射線療法を行っている場合は手術に加え, その合併症や副作用への対処を行う.
    3. 術後合併症の予防と早期発見に努め早期回復をはかる.
    4. 退院に向けて, 家族も含めて社会復帰への取り組みができるよう援助する. 日常生活指導では
    自宅での生活に置き換えて, 具体的に疑問や問題点を見出せるように関わっていく.
    患者・家族の支援にあたり看護師は疾患や看護の専門知識や技術だけでなく, 経済的な問題や社会福祉などの社会資源の活用についての知識も必要である. 入院時より, 患者・家族との間に信頼関係を築き, 情報を得, 知り得た情報から問題を予測あるいは抽出し, 患者・家族自身が自らあらゆる問題を解決できるよう積極的に関わっていくこと求められる.
  • 井田 茂樹
    2006 年 60 巻 6 号 p. 387-390
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    喉頭摘出を受けた患者は発声によるコミュニケーション手段を喪失するため, 代償手段の獲得や社会参加のために心理社会的支援を必要とする. ここでは, 一般的に利用が検討できる支援体制として, 身体障害者福祉法, 障害年金, ピア・サポートと3つの代表的な社会制度を取り上げた. それぞれ, 社会参加, 経済的保障, 心理的支援を主たる目的としている. しかし, 個々の患者によって使える社会制度はさまざまであり, 患者の希望や必要を確かめながら, 社会制度の利用を検討していくことが重要である. また, 必要な社会制度の支援が受けられない場合においても, 支援を受けられるような働きかけや新たな制度の枠組みを求めていく姿勢を忘れないようにしたい.
  • 佐々木 喜八郎
    2006 年 60 巻 6 号 p. 391-393
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    この度, 国立医療学会誌「医療」への寄稿を患者の立場としてお願いしたいとの依頼がありましたこと, 私ども心からうれしく思っております. しかしながら, 現在ではインフォームド・コンセントが浸透しており, 安心して治療に励まれる方が多くなっております. 改めて医療サイドへ望む改善すべき点などを述べることはとくにありませんが, 手術後の「再発への不安」に対するカウンセリングを充実していただきたいことです. これからは, 私が体験した事柄について述べてみたいと思いますので, 喉頭摘出者についてご理解をいただければ幸いです.
  • 梶川 隆, 竹本 俊二, 井上 雅文, 高橋 正彦, 淵本 康子, 堀 圭介, 藤田 勲生, 黒木 慶一郎, 廣田 滋
    2006 年 60 巻 6 号 p. 394-398
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    冠動脈狭窄の危険因子を冠動脈造影症例において, 脂質, 高感度CRP (hs-CRP) について検討した. 2002年1月より2003年4月までの診断的冠動脈造影検査, 連続190例のうち急性心筋梗塞, 肝不全, 腎不全, 感染症, 悪性新生物を除外した115例を対象とした. 冠動脈狭窄度がQCA解析で51%以上の枝の症例をS群, 有意狭窄のない症例をN群とした. 2群間について既往症として高血圧, 糖尿病, 喫煙歴, 入院時のBody mass index (BMI), 血液生化学データとして総コレステロール(TC), LDL-C, HDL-C, 中性脂肪(TG), レムナント様リポ蛋白コステロール(RLP-C), リポ蛋白(a)〔LP(a)〕, 空腹時血糖(FBS), HbA1c, 尿酸, 高感度CRP (hs-CRP) につき検討した. 115症例の平均年齢68.3歳, 男性80人, 女性35人で, N群71人S群44人の両群間において平均年齢, 男女比, 肥満, 高血圧, 糖尿病, 喫煙歴に有意差はなかった. S群において有意に, LDL-C, LDL-C/HDL-C, TC/HDL-C, 尿酸が高値であった.
    また冠動脈病変を狭窄度, 病変長, 病変枝数よりスコア化し脂質, hs-CRPとの関係を重回帰解析にて分析するとLDLが病変の重症度に正の相関が得られた. 従来の冠動脈イベントの予測因子として有用とされているhs-CRPは2群間で有意差を示さなかった. CRPは冠動脈病変の重症度とは相関しない可能性が示唆された.
  • ―国立病院機構における脳神経外科領域のEBM―
    米倉 正大
    2006 年 60 巻 6 号 p. 399-406
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    未破裂脳動脈瘤の治療指針の確立のため国立病院機構の脳神経外科で初めてのEBM作成のための研究が12施設の国立病院を中心に始められている. 5mm以下の未破裂脳動脈瘤が発見された場合手術などの処置を行わず自然経過を観察するという前方視的研究である. 2000年9月から540個(446例)が登録され, うち92個(89例)が除外されたため448個(373例)が経過観察され, その合計824.5 Aneurysm・Years (718 Person・Years) で平均22.8ヵ月の観察がなされている. これまで5個の破裂が認められ, また動脈瘤サイズ増大のため6個が処理された. Kaplan-Meier法で年間破裂率は0.5%であり単発性と多発性に分けるとそれぞれ0%と1.1%であった. 女性, 多発性, 70歳以上の高齢, 前交通動脈瘤などの因子が破裂因子の傾向は認めたが, 統計学的有意差は認めなかった. これまでの結果から5mm以下の単発性の未破裂脳動脈瘤は手術の適応は非常に慎重でなければならない.
  • 臨床産科情報ネットワーク
    明城 光三
    2006 年 60 巻 6 号 p. 407-410
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    周産期における大規模臨床研究のデータベースを構築するため, 1996年に臨床産科情報ネットワーク(Clinical Obstetric Information Network: COIN)が発足した.
    2004年の参加施設は, 21ヵ所(相模原病院, 九州医療センター, 岩国医療センター, 善通寺病院, 国立国際医療センター, 高崎病院, 九州循環器病センター, 大分医療センター, 福山医療センター, 金沢医療センター, 岡山医療センター, 別府医療センター, 甲府病院, 横浜医療センター, 広島西医療センター, 大阪医療センター, 福島病院, 災害医療センター, 埼玉病院, 呉医療センター, 仙台医療センターであった.
    2. 分娩母体総数は7,627例であり, 早産818例(10.7%), 母体搬入591例(7.7%), 分娩時異常出血2,429例(31.8%), 輸血実施53例(0.69%), そして妊産婦死亡率は13.1(出生10万対)であった.
    3. 新生児総数は7,795例であり, 早産児のうち28~36週は857例(11.0%)で22~27週は42例(0.54%)であった. 早期新生児死亡は15例で出生1,000対死亡率1.9, 妊娠22週以降の胎児死亡は52例で出産1,000対死産率は6.7, 周産期死亡率は8.6(出産1,000対)であった.
  • ―骨盤内臓器のチェックポイント―
    山口 秀樹, 岩下 浮明, 上條 敏夫, 武山 茂, 高須賀 康宣, 中島 哲, 水島 美津子
    2006 年 60 巻 6 号 p. 411-414
    発行日: 2006/06/20
    公開日: 2011/10/07
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