障害者自立支援法の療養介護事業・療養介護サービス費(I)で, 2006年10月より福岡病院全重症心身障害者病棟が新制度に移行した. その背景, 過程, 結果と今後の課題について述べた. 要点は,
1. 各種の新たな規程を中心とした書類作りと, その申請や了解に多大の時間を要した. 2. 個別支援プログラムの作成は指導室を中心として精力的に行われたが, 関係部門の綿密な協力が必要であった. 3. 患者の自己負担発生にともなう施設による年金管理の変更作業はきわめてハードなものであったが, 施設が健全に長期的に運営管理していくうえで必須のものであり, また, これにより保護者の意識も大きく変わってきた. 4. 介護スタッフ, とくに非常勤の生活支援員の確保に苦労した. 5. 障害程度区分4以下の入所者への対応は後方施設が少ないこともあり, 今後の大きな課題である. 6. 市町村での障害程度区分の判定作業の遅れや不一致がみられた. 7. 看護師, 介護福祉士, ヘルパー, 無資格者のそれぞれの業務分担と, 継続的教育が重要である. 8. 神経難病, 進行性筋萎縮症, 重症心身障害という異なる疾患群を同一病棟で管理するのは種々の側面から無理が多いと考えられた. 9. 今後は多職種, 多病種が入ってくる可能性が高いため, 医療事故防止のための対策を立てる必要がある. 10. 人件費の大幅なアップのため, 収支上はマイナス面が多いが, 入所者の処遇は格段に向上した.
以上のように種々の問題はあるものの, 実際に施行していく過程で生じてくる課題を前向きに解決していくことにより, 障害者自立支援法が重症心身障害児(者)の将来にわたる医療・福祉に寄与する法律となるべく積極的に作業していくことは, 国立病院機構重心施設の絶対的な責務と考えられる.
抄録全体を表示