医療
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61 巻, 7 号
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  • ―それはより本質的な問題である―
    湯浅 龍彦, 鎌田 正紀, 石川 厚
    2007 年 61 巻 7 号 p. 449-457
    発行日: 2007/07/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病患者の急性病態に熱性ストレス症候群:thermic stress syndrome1), または高熱性症候群:hyperthermic syndrome2)がある(本稿では以下TSS/HTSと略す). これには熱性ストレス障害:heat stress disorders(熱中症:heat strokeが主要病型), 悪性症候群:malignant syndrome (MLS), 悪性高熱症:malignant hyperthermia (MHT)などがある. 高セロトニン症候群:hyper serotonin syndromeもこれらにきわめて近い関係にある. いずれも高熱と意識障害を呈し, 体温調節機構の破綻という共通の問題を有し, 発熱時の全身管理や緊急処置などにも共通点が多い. TSS/HTSはどのような疾患にもおこりうるが, とくにパーキンソン病は根底に中枢性体温調節障害を抱えていて, パーキンソン病におけるTSS/HTSは特異な, 疾患そのものに根ざす問題としてとらえるべきである.
  • 宮崎 浩行, 富澤 達
    2007 年 61 巻 7 号 p. 458-465
    発行日: 2007/07/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    アデノシン3リン酸(ATP)感受性カリウムイオン(KATP)チャネルは膵β細胞だけでなく心筋, 平滑筋にも存在する. 膵β細胞, 心筋および平滑筋のKATPチャネルは, それぞれ, インスリン分泌, 虚血時の心筋保護および血管のトーン調節に関与している. スルポニルウレア受容体(SUR)はKATPチャネルのサブユニットとして存在しており, スルホニルウレア(SU)剤によりKATPチャネルが閉鎖されると心筋保護機能および血管のトーン調節機能が低下することが予想される. そこで, 各種血糖降下剤を常用量服用した時の膵R細胞, 心筋ならびに平滑筋のSU受容体結合占有率を薬物動態値およびSU受容体との親和性から算出し比較検討したところ, グリベンクラミドおよびグリメピリドは膵β細胞選択性があまり高くなく, 心筋への影響を否定できないことが示唆された. また, 血糖降下剤による虚血性心疾患(IHD)発症に及ぼす影響を糖尿病患者110症例について調査したところ, IHD非発症群よりもIHD発症群に血糖降下剤の服用症例が多かったが有意差はなかった.
  • 曽根 美智子, 岩井 艶子, 夫 敬憲, 中島 公平, 平生 三郎, 横田 一郎, 伊藤 道徳, 中川 義信
    2007 年 61 巻 7 号 p. 466-471
    発行日: 2007/07/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    非定型奇形腫様・ラブドイド腫瘍atypical teratoid/rhabdoid tumor (AT/RT)は中枢神経系胎児性腫瘍の中でもきわめて悪性の腫瘍である. 分子発病学的にAT/RTの発生には22番染色体長腕11.2 (22q11.2)領域にあるSMARCB1癌抑制遺伝子が関与することが知られている. AT/RTの腫瘍分類においてSMARCB1遺伝子の分子遺伝学的解析は重要であるが, 臨床検査としてSMARCB1遺伝子の突然変異を同定するのは困難である. そこで市販プローブ(DiGeorge/VCFS region probe:CYTOCELL社, LSI BCR/ABL probe:VYSIS社)を用い, SMARCB1遺伝子を含む22q11.2領域の検索を行った. プローブは近位マーカーとしてBCRTUPLE1, 遠位マーカーとして22qtelomereを使用した. 検査したのはAT/RTが疑われた中枢神経系胎児性腫瘍の4症例(AT/RT3例, 脈絡叢癌1例)である. 凍結標本を用いたfluorescence in situ hybridization (FISH)により, 4例すべてにおける22q11.2領域の欠失を迅速に検出した. 染色体検査で4例中2例の22番染色体長腕部分欠失と, 1例の22番染色体モノソミーを確認し, 他の染色体異常を認めなかった. FISHの結果は, SMARCB1遺伝子領域の欠失を示唆するものであった. SMARCB1遺伝子領域欠失を迅速に検索するために, 凍結標本を用いたFISHは臨床検査として有用と考えられた.
  • 松本 純夫
    2007 年 61 巻 7 号 p. 472
    発行日: 2007/07/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 冷牟田 浩司
    2007 年 61 巻 7 号 p. 473-476
    発行日: 2007/07/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    国民皆保険制度によって維持されてきたわが国の医療供給体制は, その公益性や平等性の点で国際的に高い評価を受けているが, 一方で医師主導のお任せ医療やパターナリズムに基づいて医療が実施されてきた. しかし昨今の医療情勢の変貌によって, このような医師の立場からの尺度(医療技術や医学的判断などの物差し)だけでなく, 患者の価値観, 納得や満足度こそが本来の医療の質評価として重要視される時代になった.
    そのために医療側(とくに医師)が取り組むべき課題は何であろうか. 国立病院機構ではその提供サービスの質向上のために質の高い医療の提供はもとより, 患者の目線に立った医療, 患者が安心できる医療の提供を謳っている. 質の高い医療技術の維持はもとより, 患者が診療内容を十分に理解し, 自らが享受する医療を自らの意思で決定するための客観的医療情報を平易に過不足なく提供する方法は何か, そのためにいかなる努力が必要か, 医師は模索せねばならない. 情報開示, インフォームドコンセント, セカンドオピニオンのあり方, 患者相談窓口の姿勢など具体的課題は多く, またその実現に向けての政策的課題も多い.
    医療が情報共有に基づく医療側と患者の協働作業の産物とする視点からは, その実践のために医師と患者の双方に権利と責務が存在する. 医師側の責務は質の高い医学医療の実践と共に, 患者との合意に向けた十分な説明と同意への努力であり, 一方で患者側はその作業に協力し, その内容を理解する努力とどういう医療を求めるか, 自らの明確な意思表示が必要になってくる. そのために両者間のコミュニケーション向上に向けたお互いの努力も必要であろう.
  • 小野池 千秋
    2007 年 61 巻 7 号 p. 477-480
    発行日: 2007/07/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    急性期医療中心の病院にとって地域の病院や診療所との連携は不可欠である. 国からも医療を病院でなく, 地域で完結する方向が示されている. このような現状を踏まえ, 患者が安心感と満足感を持ち入院生活を送られるよう, 平成17年4月より地域医療連携室の業務内容を充実させた. とくに, 前方連携は病床調整管理者(看護師長)が担当医師からの情報をもとに患者の状態で判断し, 病棟決定には専門性は参考にするが必ずしも限定せず, 空床状況から各病棟と病床調整を行うようにした. 後方連携は退院調整専任看護師が医療ソーシャルワーカー(MSW)と共に入院時リスクアセスメントスクリーニング票の活用, 病棟ラウンド, 多職種とのケースカンファレンスの実施により患者や家族が安心して転院・退院のできる支援システムを作ることができた. 看護の視点で患者を全人的にとらえ, 看ていくことの重要性を浸透させることが「連携」の要である. 患者が必要な時, 自分の望む病院で適切・的確な医療が受けられるよう, 患者目線に立った連携を目指し, 急性期病院として独自性の発揮の努力を続けたい.
  • 木村 彰
    2007 年 61 巻 7 号 p. 481-483
    発行日: 2007/07/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    「患者の目線に立った医療の提供」を揚げた国立病院の改革を国民は注視している. その成果が着実に上がっていることは, クリティカルパスの実施件数やセカンドオピニオン窓口の設置数などが大幅に伸びていることからもみてとれる. 「患者の目線」はこの10年の医療界のキーワードの1つだった.
    その背景には, 医療の量的充足が達成され患者の選択肢が増えたことや, 相次ぐ医療制度改革で医療費の自己負担が引き上げられたなどの事情がある. 患者の目が医療の質を厳しく見極めるようになったのである. 医療機関側もこうした「目」を意識し, 「横並び」体質から抜け出して治療成績で切磋琢磨する必要に迫られている.
    患者の目が向けられる対象に, 病院の文化もある. 患者ではなく医療者優先になっていないか, 患者の声に耳を傾け, 議論を重ねて改善を重ねるべきだ. 感染症など急性期の疾患に対応するようつくられてきた医療の思想と施設は, 慢性疾患が主体となる, いわゆる疾病構造の変化に対応していかなければならない. 「患者の目」や「患者を大切にする文化」は, こうした難題を解く鍵でもある. 他職種の職員が連携して患者・家族を支える「心のサポートチーム」や, 患者と家族のストレスを癒す「ほっとできるスペース」, 患者・家族の学習を支援する施設や企画などを提唱したい.
    国立病院機構の施設には, すでに様々な先進例が見受けられる. 146施設が知恵を集めて病院の文化を耕し, 温かくて懐の深い「患者の心に届く医療」として実を結ぶことを期待している.
  • 野崎 園子, 安東 範明, 小牟 禮修, 齋藤 由扶子, 舟川 格, 松村 剛, 湯浅 龍彦
    2007 年 61 巻 7 号 p. 484-489
    発行日: 2007/07/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    緒言:本研究は, 国立病院機構の神経内科病棟における経皮内視鏡的胃痩(PEG)造設の安全性と管理体制の現状と問題点を明らかにすることを目的とした横断研究である.
    方法:33国立病院機構の神経内科病棟担当医師に2005年12月現在の神経内科病棟のPEG造設と管理の現状について以下の項目について調査を行った.
    1) PEG造設の施行医 2) PEGクリニカルパス 3) 主治医と施行医の術前検討会 4) 合併症を相談できる他科医 5) 術前の患者への説明者 6) PEGの管理上困っていること
    結果:他施設への依頼が8施設あった. 術前検討は13施設, クリニカルパスは21施設で使われていた. 多くの神経内科主治医は他科医に相談することもなく各合併症に対処していた(20-24施設). 合併症の解決割合や対応への迅速度に不満がある施設が少なくなかった.
    結語:他院での造設も含め, 他科医との連携の難しさがうかがわれた. PEG造設と管理について, 医療派遣など病院連携を視野に入れて, 専門医に依頼しやすい体制づくりが必要と思われた.
  • ―国立病院機構への期待―
    溝口 功一, 千田 圭二, 園田 至人, 森 朋子, 舟川 格, 寄本 恵輔, 植川 和利, 湯浅 龍彦
    2007 年 61 巻 7 号 p. 490-500
    発行日: 2007/07/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    筋萎縮性側索硬化症(ALS)には, 未解決の多面的な問題が存在する. 本座談会では, 国立病院機構(NHO)の神経難病病棟に長年勤務されて, ALS医療に様々な立場からかかわって来られた先生方に, 今後のALS医療におけるNHOの役割をテーマに語っていただいた. 高齢発症のALS患者が増加しているという指摘, ALSの初期診断は慎重になされるべきであるとの意見, ALSの病名告知の問題点, 胃痩や人工呼吸器の選択が実際にはどうなされているのか, ALSの長期経過にともなう合併症, ALS患者の療養環境整備の問題, とくに離島での経験, 都市部での悩み, あるいは, 呼吸器を選択しない患者の支援などが語られた. さらに, 完全閉じ込め症候群:totally locked-in syndrome (TLS)についてはNHOの神経難病に携わるスタッフが一致協力して臨床研究を進めなければならないことが確認された.
  • 明城 光三
    2007 年 61 巻 7 号 p. 501-505
    発行日: 2007/07/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    周産期における大規模臨床研究のデータベースを構築するため, 1996年に臨床産科情報ネットワーク:Clinical Obstetric Information Network (COIN)が発足した.
    2005年の参加施設は, 11カ所(甲府病院, 岩国医療センター, 国立国際医療センター, 九州医療センター, 金沢医療センター, 福山医療センター, 大阪医療センター, 岡山医療センター, 高崎病院, 埼玉病院, 仙台医療センター)であった.
    分娩母体総数は4,480例であり, 早産509例(11.4%), 母体搬入427例(9.5%), 分娩時異常出血1535例(34.3%), 輸血実施41例(0.92%), そして妊産婦死亡率は0(出生10万対)であった.
    新生児総数は4612例であり, 早産児のうち28-36週は535例(11.6%)で22-27週は44例(0.98%)であった. 早期新生児死亡は16例で出生1,000対死亡率3.5, 妊娠22週以降の胎児死亡は37例で出産1,000対死産率は8.0, 周産期死亡率は11.5(出産1,000対)であった.
  • 藤塚 史子, 野中 道子, 中島 美雪, 佐藤 徳子, 佐藤 智恵子, 大塚 麻理子, 池田 美穂, 竹田 恵利子, 内田 裕子, 新藤 直 ...
    2007 年 61 巻 7 号 p. 506-513
    発行日: 2007/07/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • ―ドリペネム注射薬―
    西谷 康宏
    2007 年 61 巻 7 号 p. 514-515
    発行日: 2007/07/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
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