医療
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62 巻, 9 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 住吉 義光, 高嶋 成光
    2008 年 62 巻 9 号 p. 469-476
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補完代替医療: Complementary and Alternative Medicine (CAM)は, 現代西洋医療とは一線を画する分野である. 最近では, 自己の健康に対する関心が増し, さらには自己で予防・治療までも行おうとする人が増加している. 西洋医療のみでは不満と感じる人も少なくなく, CAMを利用する人が増えている. がん患者においても同様である. 一方, 医療者は, CAMの教育を受けておらず, その認識や関心は希薄である. 残念ながら, CAMに関しては, 医療者・患者間のコミュニケーション不足は否めない. 本稿においては, がんのCAMに関する現状・問題点・エビデンスなどを解説する.
  • 大串 文隆, 篠原 勉
    2008 年 62 巻 9 号 p. 477-481
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患: chronic obstructive pulmonary disease (COPD)は世界における慢性罹病率と死亡率の主要原因の一つとなっている. COPDは予防可能, 治療可能な疾患であり肺症状は完全には可逆性でない気流制限を特徴とする. この気流制限は通常進行性で有害な粒子や喫煙のようなガスに対する肺の異常な炎症反応と関連している. それゆえ, この疾患を早期に診断することは重要である. COPD患者の発見には肺機能検査を実施することが必要である. この研究においてわれわれは国立病院機構高知病院の職員の健康診断に肺機能が必要か否かについて検討した. 臨床症状, 肺機能, 喫煙の有無を208名(男性75, 女性133, 平均年齢38歳)の当院職員について分析した. 喫煙歴は48名が現喫煙者, 31名が既喫煙者, 129名が非喫煙者であった. 閉塞性障害はFEV1.0%が70%未満とした. 末梢気道障害はV50/V25値3.0以上とした. これらの平均値は現喫煙者, 既喫煙者, 非喫煙者すべてにおいて正常範囲にあった. しかし喫煙者から得たFEV1.0%値は非喫煙者にくらべ有意に低値であった. 一方, 喫煙者のV50/V25値は非喫煙者にくらべ高値であった. さらにFEV1.0%とV50/V25値は現喫煙者, 既喫煙者において加齢により悪化した. 喫煙者では末梢気道障害は40歳未満の7.7%, 40歳以上の59.1%に, 閉塞性障害は40歳以上の13.6%にみられた. 一方, 既喫煙者では40歳未満では末梢気道障害, 閉塞性障害はみられなかったが, 40歳以上では末梢気道障害は38.1%, 閉塞性障害4.8%にみられた. これらの結果より院内の職員とくに喫煙者, 40歳以上の既喫煙者の健康診断に肺機能が必要であることが示された.
  • 山下 正文, 〓松 由美子, 東 幸代
    2008 年 62 巻 9 号 p. 482-486
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    病院内で医療従事者が患者や家族から暴言や暴力を受けるいわゆる「院内暴力」が近年取り上げられるようになってきたが, その実態は明らかではない. われわれは国立病院機構鹿児島医療センターの全職員を対象に院内暴力体験の有無についてアンケート調査を行った. 職員の約25%, 看護師の約35%が被害を受けていた. 被害者の約半数近くは誰にも相談せず一人で抱え込んでいた. 労働意欲の低下や退職したいと感じたものも多かった.
    不当な暴力に対しては組織として毅然とした態度で臨み, 職員を守り被害者の精神的サポートもしていくことが重要と考えられた.
  • 野村 一俊, 佐治 文隆
    2008 年 62 巻 9 号 p. 488-489
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    平成18年4月の診療報酬改定での地域連携クリティカルパスによる医療機関の連携体制に対する評価を受けて, 地域連携クリティカルパスへの関心が一気に高まった. 限られた医療資源の中で, 医療の高度専門化と患者の要求度の変化に対応していくためには, 医療機関の機能分化と切れ目のない医療連携構築が必要である. その有用なツールと考えられているのが地域連携クリティカルパスである. 地域連携クリティカルパスの基盤は, 対象疾患の地域ネットワークであり, 今後の地域医療連携における疾患別連携体制構築の鍵として発展が期待されている.
  • 前田 智
    2008 年 62 巻 9 号 p. 490-494
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    医療連携を要する代表疾患ともいえる大腿骨近位部(頚部・転子部)骨折における地域連携パス稼働状況, IT化されたパスのデータベースの解析によりわかってきたこと, それを踏まえた上での今後の課題等について述べる.
    術後在院日数に関するバリアンスの分析から, 本骨折罹患患者の術後予定在院日数を見直し, パスの改訂に至った. また, 退院基準達成度に関する調査から, 受傷前の歩行能力よりレベルを落としたゴール設定の必要性が示唆された.
    新しい退院基準に沿って維持期への移行が進めば, 手術から回復期リハ施設退院までの入院期間は今後短縮していくものと考える. また維持期リハビリテーションの需要とともに, 介護まで含めた患者中心の医療福祉供給体制のあり方が明確になってくるものと思われる.
    医療機関の機能分化とともに, 従来の施設完結型から地域完結型医療へと変わりつつある現在の地域医療においては, 施設問の垣根を越えた地域連携クリティカルパスは必要不可欠なツールとなりつつある. 今後さらに解析を進めていくことにより, 本疾患患者の入院経過の全体像を明らかにしていくとともに, パスの改良を通して, 連携医療の標準化による良質で効率的な地域医療を目指していこうと考える.
  • 宇治原 誠
    2008 年 62 巻 9 号 p. 495-499
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    地域医療計画では, 増加し続ける糖尿病患者を連携して継続的に診療する体制の構築が示されている. 「専門治療」, 「急性増悪時治療」と一部の「慢性合併症治療」を基幹病院が担当し, 「安定期治療」はかかりつけ医が担当することが求められている. この地域連携体制は, 医療機関相互の信頼関係を基盤として構築される. 基幹病院は, 診療の質の向上と救急対応に努めることで, かかりつけ医からの信頼を得ることができる. 糖尿病の診療の質を上げるには, チーム医療とその媒体であるクリティカルパスが必要不可欠である. 非専門医であるかかりつけ医にも一定以上の糖尿病の診療技術が求められる. 地域連携クリティカルパス(連携パス)は血糖の継続維持にも効果があるが, 地域での糖尿病診療の標準化, 患者の治療に対する積極性の増加, 病院から診療所への逆紹介に対して患者に理解が得られやすくなるなどの効果も期待できる. 今後は, 連携パスの標準化やIT化が糖尿病の地域連携の課題となる.
  • 岡田 靖
    2008 年 62 巻 9 号 p. 500-504
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    高齢化社会の進展の中で, 地域における脳卒中医療の連携強化が重大な課題となっている. 4疾病および5事業の医療提供体制の構築の中で, 脳卒中分野では急性期医療施設とかかりつけ医, 回復期および療養型施設との連携が必要である. 1) 急性期医療施設では高度診療に対応できる構造(専門医, 画像機器, 脳卒中治療ユニット)と診療プロセス(診断評価・アルテプラーゼ(rt-PA)静注治療および手術・看護・急性期リハ・教育など)を有すること, 2) かかりつけ医は1次予防, 2次予防に加えて発作時のトリアージが可能なこと, 3) 回復期医療施設ではリハビリテーションを主体に日常生活機能復帰と再発予防へ向けての調整ができること, 4) 療養施設と在宅サービスでは継続的な医療・介護のニーズに応えていくことであり, これらの施設が切れ目なく医療連携して情報を共有することが必要である.
    福岡地区の公的急性期医療機関7施設の急性期入院患者数および発症3時間以内のrt-PA静注療法の実施率はこの2年間で有意に増加していた. 一方, 発症3時間以内の患者搬入率は明確には増加しておらず, 地域の救急搬送体制, 市民への一層の啓発が課題である. 福岡地区の急性期病院9施設をワーキンググループとして福岡市医師会版脳血管障害地域連携クリティカルパスを作成した. その特徴は発作前のハイリスク患者の専門医療施設とかかりつけ医の連携も視野に入れた, 急性期―回復期―維持期の連携体制であり, 脳血管障害をキーワードとして強調している.
    限られた医療資源の有効利用という観点からは脳卒中の予防, 転帰と患者・家族満足度を考慮した上で, 各地域における最適な医療提供体制のルール作りを行い, 医療連携を推進していくことが求められている.
  • 太田 宏平
    2008 年 62 巻 9 号 p. 505-510
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    多発性硬化症: multiple sclerosis (MS)の治療は, 再発時の急性期治療と再発予防を目的とした慢性期の治療に分けられる. 前者には, ステロイドパルス療法が用いられ, 後者にはインターフェロンベータ(IFNβ)などの免疫調節療法が広く行われている. とくに免疫調節薬による発症早期からの治療が重要である. 対症療法として神経痛や排尿障害などの神経症状に対する治療を行う. さらに再発回数が多い, 既存治療無効, 進行性など難治性のMSに対してはミトキサントロンなどの免疫抑制薬が選択されることもある. しかし, これらの治療でも効果不十分の場合も多く, 現在, 多くの薬剤の臨床試験が進行中である. 数年先にはこれらのいくつかが治療薬として使用可能となり, MS治療の進展が期待されている.
  • 岩田 岳
    2008 年 62 巻 9 号 p. 512-515
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 高木 剛
    2008 年 62 巻 9 号 p. 516-517
    発行日: 2008/09/20
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
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