慢性閉塞性肺疾患: chronic obstructive pulmonary disease (COPD)は世界における慢性罹病率と死亡率の主要原因の一つとなっている. COPDは予防可能, 治療可能な疾患であり肺症状は完全には可逆性でない気流制限を特徴とする. この気流制限は通常進行性で有害な粒子や喫煙のようなガスに対する肺の異常な炎症反応と関連している. それゆえ, この疾患を早期に診断することは重要である. COPD患者の発見には肺機能検査を実施することが必要である. この研究においてわれわれは国立病院機構高知病院の職員の健康診断に肺機能が必要か否かについて検討した. 臨床症状, 肺機能, 喫煙の有無を208名(男性75, 女性133, 平均年齢38歳)の当院職員について分析した. 喫煙歴は48名が現喫煙者, 31名が既喫煙者, 129名が非喫煙者であった. 閉塞性障害はFEV
1.0%が70%未満とした. 末梢気道障害はV50/V25値3.0以上とした. これらの平均値は現喫煙者, 既喫煙者, 非喫煙者すべてにおいて正常範囲にあった. しかし喫煙者から得たFEV
1.0%値は非喫煙者にくらべ有意に低値であった. 一方, 喫煙者のV50/V25値は非喫煙者にくらべ高値であった. さらにFEV
1.0%とV50/V25値は現喫煙者, 既喫煙者において加齢により悪化した. 喫煙者では末梢気道障害は40歳未満の7.7%, 40歳以上の59.1%に, 閉塞性障害は40歳以上の13.6%にみられた. 一方, 既喫煙者では40歳未満では末梢気道障害, 閉塞性障害はみられなかったが, 40歳以上では末梢気道障害は38.1%, 閉塞性障害4.8%にみられた. これらの結果より院内の職員とくに喫煙者, 40歳以上の既喫煙者の健康診断に肺機能が必要であることが示された.
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