実時間画像処理は, これからのロボットビジョン, マルチメディア技術の重要な課題である.近年のコンピュータの驚くべき発展とCCDカメラなどのセンサ技術の確立が相まって, デジタル画像処理は大きな進歩を遂げた.一方でこの技術は, CCDカメラの出力を情報圧縮することなく逐次的にA/D変換し, 直列コンピュータを"力まかせ"に活用することを前提としているために, 処理時間, システム規模爆発, 消費電力拡大等の問題を抱えている.全く新しいアーキテクチャを持った画像処理システムの開発が切望されている.生物の視覚系は, コンパクトかつ超低消費電力なハードウエアによって画像処理を実時間で実行する.本研究室では, 生物の脳のアーキテクチャと計算原理に学んだ集積視覚デバイスを開発している.この脳模倣型視覚システムは, ロボットビジョン, 失明者の視覚代行手段などの工学的な応用のみならず, 神経科学や心理物理実験による知見を構成的な方法で解析する手段としても有効な段階に近付いていると考えている.
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